B級グルメ・B級食品: 2006年7月アーカイブ

 中一の頃であるから昭和で言うと44年のこと、初めて自分で買った食料品がこれである(それまではお使い)。しかも購入した動機がお茶漬けが食べたかったわけではなく安藤広重の「東海道五十三次」のカードが欲しかったためである。確か初めてカードを見たのは小学生の頃、そのときには気にもとめていなかったのが、中学に入ると友人が数枚持っていて欲しくなったのだ。
 ところがせっかく買ったものの近所の文房具屋に入るともっと魅力的なものを発見。これが切手、趣味週間の安藤広重の「東海道五十三次 蒲原夜ノ雪」である。ときは切手を集めるのがブームとなっていて、さっそく祖母に買ってもらった記憶がある。上村梢園(間違っていないかな漢字)の「序の舞」、「月に雁」なんて憧れたものだ。
 結局、買ったはずの「お茶漬け海苔」のことはすっかり忘れ去り、実際に初めて食べたのは上京して一人暮らしを初めてからだ。薄暗い南小岩の六畳間、残りご飯とお湯さえあれば食べられるのだから便利であった。
 この大学生活では「お茶漬け海苔」はなくてはならないものであった。だいたい仕送りの前など毎食、ご飯とお湯、そして「お茶漬け海苔」となる。安いのに病みつきになる旨さがあって、まさにお世話になった食品ナンバーワンである。
 この「お茶漬け海苔」の発売が1952年。昨年逝去した永谷園創業者、永谷嘉男が開発したもので、今でもパッケージにほとんど変更がなく、店頭で見てもつい手に取ってしまう。また永谷園など東京からくる商品が発売されても四国の片田舎に来るのにはなかなか時間がかかる。それで私的に永谷園を初めて知ったのが中学生の1969年となるのだ。翌年が大阪万博でこの頃から食料品店にならぶ商品に東京もの(桃屋など)が増えたように感じる。

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永谷園
http://www.nagatanien.co.jp/

 さて最初に取り上げるのは粉末の調味料というのだろうか、「炒飯(やきめし)の素」。東京都北区の『あみ印食品工業』製。パッケージの投網を投げたようなマークが面白いし、「即席」という文字にも今時情緒を感じる。最近、下町(本来の意味合いではない)に無性に引かれているので「北区」というのもいい。
 これを買った八百屋さんに聞くと「もうずいぶん前からあるわね。なかなか人気があって、すぐなくなるのよ」という。
 それで今度は市場の食品問屋で「炒飯の素」を探してみる。あったあった。当然、こちらは箱入り。
「ねえ、これって古くからあるものかな」
 問屋の最古参のタヌキオヤジに聞いてみる。
「そうだな。オレが仕事始めてから35年だけどそのときからあったな。でもね最近はいろんなところが『炒飯の素』出してるだろ。今、持っていくのは八百屋さんとか肉屋さんが多いね」
 また、それを聞いていたやや若い娘、26歳が
「ウチの母親はね。朝からこれで焼きめし。ウチって貧乏だったのかな」
「まあ、そうだろうな」
 そんなことはどうでもいいのだけど、聞いてみるとみんなが知っていて、それなりに思い出深いものらしい。これは四国になかったのかな。ちょっと疑問。

 使い方は、ご飯を油で炒めて、「炒飯の素」を振り掛けるとあっという間においしい炒飯(やきめし)が出来るという便利なもの。さっそく試してみたら、いい味なんである。当然、ハムや玉ねぎを入れるんだけど、肉っけはなくてもいい。また中華の炒飯のように卵を使ってもうまいのである。

 さて、市場のもっとも年期の入ったご婦人に聞くと、
「あんたね。さっきから『チャーハンの素』って言ってるけど、これは『炒飯』と書いて『チャーハン』じゃなく、てー、『やきめし」と読むのよ」
 と未確認情報をくれた。それでパッケージを改めて見ると確かに「ヤキメシ」の文字。でも「焼き飯」とはなんであるのか? チャーハンとは別物なのか? ここに新たな疑問が生まれたのだ。
 この『あみ印食品』の「炒飯の素」のことで詳しい方、いたら歴史など知りたいものだ。『あみ印食品』のホームページはそっけなくて発売年などがわからない。

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炒飯の素 6食分 128円
あみ印食品工業
http://www.amibrand.co.jp/

B級食品事始め

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 昔、占いが趣味という人に「四柱推命」で運勢を見てもらったことがある。いろいろ言ってくれたがほとんど記憶に残っていない。ただひとつだけ覚えているのが人には運命を決める神さんが何人かいるのだが、私についているのは総て食の神さんなんだそうだ。どうもこれで食べる事自体にも興味があるのだけれど、加えて食にまつわることならなんでも目に飛び込んできてしまうらしい。
 さて、食に感心があるといっても「自然食」とか「スローフード」とか「伝統食」とか「食育」とかいった言葉は大嫌いなのは前にも書いて置いた(これは私の生活に置いての話、好きな人は好きでいいので変に間違った方向性でとらえないで欲しい。すなわち勝手気ままがいいということだ)。私的には食べ物は自分の本能で食えばいいのであって、変な言葉をかぶせたくはない。

 しかしそれでも敢えて書くが「食育」なんて法律になったんだな。これなど嘆かわしいことだ。だいたい親が子供に料理を作らないんだから「食育」なんて意味がない。できれば「子供の朝夕食には最低でも1時間ずつは料理しないと逮捕するぞ」という法律を作るべきなのに「食育」なんてつまらない言葉遊びをする、だからダメなんだ。面白いのは子供の教育や課外活動、また防犯のための集まりや連絡を多くの父兄が夕食を作るべきときにやっている。また学校に集まっている。こんなことやっていて料理作れるわけないだろう。大バカ野郎。

 例えば朝食にペットボトルに入った炭酸飲料とパンという家庭もあるらしい。まあこれはこれでいいのだ。だいたい「食育」なんてこんな家庭の親が気にかけるわけがない。まあこれはイカンと思っていて食の向上を目差すなら街に出て魚屋で魚を、いろいろ利用法を聞きながら買うとか、当然野菜もそうだ。黙ったままスーパーの買い物カゴにどさりでは無理だな。
 まあ、もう一度書くが、ぼうずコンニャクは「自然食」とか「スローフード」とか「伝統食」とか「食育」という言葉は大きなワンワンよりも高い所よりも何十倍も嫌いだ。

 だいたい私の作る料理自体が「食材が作ってくれ」と言っているとおりに、自分の本能とせめぎ合わせて作っている。後は懐具合もあるけれど、どうも貧乏な方が食に奥行きが出るようだ。

 さて前置きが長くなったが、食神に憑かれている、ぼうずコンニャクが気になっているものに決して青山の「紀伊國屋」には売っていない「B級食品」がある。化学調味料や砂糖、スパイスや香辛料などが、どばっと入っているので「スローフード」とか「自然食」とかに凝り固まっている向きには受け入れられないだろうな。でもここには秘密めいた花園がありそうに思えないだろうか?
 それは昭和30年代、まだ子供の頃のことだ。八百屋や小さな食料品店の棚に、ひっそりと置かれた定番的な食品があった。その多くのパッケージが個性的で、また古めかしく、当然懐かしい雰囲気を残している。これら愛らしいものたちを仮に「B級食品」と呼びたい。またプロがこっそり使っている「B級食品」もある。これも取り上げるが、基本的には私の原体験的に懐かしい、愛おしいと思うものである。この懐かしいものには「チキンライスの素」とか「渡辺のジュースの素」とかもある。コヤツら今でも売っているのだろうか?
 そして、これら懐かしくも怪しい食品が個人商店の減少とともに絶滅の危機にあるのではないかと思い始めている。それで機会を見つけてはこれらB級食品を買いあさることにする。
 お断りするが洒落のわからない人は読まないで欲しい。

●これは「お魚三昧日記」があまりにもカテゴリーが増えすぎて自分でついていけなくなって、転載したものです。コメントをいただいた方、ごめんごめん

 中野の製麺所で、うどん玉を買っていて見つけたもの。1袋・数十円ではなかったかと思うのだが慌ただしくてレシートをなくしてしまった。
 さて「うどんスープ」というとヒガシマルが思い浮かぶのが西日本出身者、まさか関東、しかも群馬にもあったなんて驚き。しかも袋のデザインが面白すぎる。このデザインなど昭和30年代によく見かけた、なんだか懐かしい雰囲気のものだ。五角形に正、「正田醤油の」が太ゴシック、点点々が丸くたぶん丸ゴシックのもの。「うどん」も特太丸ゴシックかな。「スープ」の書体もいい。また真下にあるどんぶりを重ねたような変な物体が気が抜けていてこれまたいいのである。これなど宮川泰の「ウナ・セラ・ディ東京」が今時のオリジナリティのないバカ作曲家にかけないのと同じように出来ないデザインだ。
 さて話が変な方向から始まってしまったが、この粉末スープがなかなか味がいい。正田醤油が粉末スープを作り始めたのが昭和38年とのことだから、味わいは群馬の地のものだろうか? 味わいとしては関西とは大きく違ってかつお節でも昆布でもない一般的な「出汁」の味わい。ここに醤油のコクがあり、色合いはやや濃い目。フリーズドライのネギが入っているので、何もない午後に、「うどん玉だけ買ってきて、即席に」というあんばいが便利極まりない。
 これだけの味わいを作るんだから「正田醤油」の醤油も買ってみたいと思うのだ。

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正田醤油
http://www.shoda.co.jp/info/index.htm

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