ラーメン・つけめん図鑑: 2006年10月アーカイブ

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 ときどき八王子まで昼ご飯を食べにいくのは運動不足を解消するため。まったく予備知識なく出かけるのでいつも「勝負」するつもりで入店する。
 さて、今回は八王子駅からさほど遠からず、北口の繁華街に近くで「大勝軒」という店を見つけた。でも入るか否かは考え悩んだ。なにしろ店の左手には公明党(好き嫌いではない)のポスター。政党自体が嫌いというのではなく、こんなラーメンとなんら関わりのないものを貼っているというのが嫌いなのだ。喫茶店に劇団などの公演ポスター、コンサートにポスターなどはわかるにしても政党のポスターは嫌いだ。でも屋号もしっかり正面に出しているし、「大勝軒」なんていいなと思いながら店に入る。
 店に入って驚いた。お客のほぼ全員がつけ麺を食べている。でも、つけ麺でうまいものにはめったに出合えない。考えた末に初めてなのでラーメンにする。中華そばで630円。そして小がある。これが600円。周りのつけ麺の盛りの凄いこと、これを見て小にした。
 店に入るとすぐ左に券売機、その左にカウンターがあり厨房がある。右手にはテーブル席。非常に狭い。
 ほどなく出てきたのが、小ではなく、いたって普通の量の中華そば。つけ麺がかなりの太い麺を使っていて、それが中華そばにも使われている。味は煮干しの風味があり、鶏ガラや数種の動物質の旨味。煮干しを使うのは非常に難しく、なかなかまともなものには出合えないが、ここのは煮干しの使い方は合格。また少々濁っているが、全体からするとかなり高いレベルにある。そんななかに太すぎる麺が入っているのだが、スープのうまさからかあまり気にならない。また麺そのものも味がいい。チャーシューもメンマもうまくて、個人的には嫌いな味のついていないゆで卵もゆるせるかな。
 ただ気になったのは中華そばというのをなにも考えないで選ぶと太麺で大盛りが出てくるわけだ。この味わいで大盛りというが最後まで飽きないで食べられるだろうか? 無理ではないか? まあそれは人体実験するしかない。
 さて、偶然に見つけた「大勝軒」。なかなか結構な中華そばであった。こんどはぜひつけ麺を食べてみたいと思い店を後にした。
●これを書いたのは先月だ。それで改めてネットで調べるとこの店が池袋の「大勝軒」で修業した方がやっているのを知った。だいたいよく画像を見ると「東池袋」の文字がある。世にラーメンマニアとも言えそうな人たちがいるが、ぼうずコンニャクはその対極にある。日常の生活の範囲でしかラーメンは食べない。ましてや行列してまでラーメンを食べたいかと聞かれると「否」である。池袋の「大勝軒」というのは知人からも一度食べて見ろと言われている店だが、行列に並ばなくてはならないのだから、まあ絶対に行くことはないと思う。でものれん分けした八王子の店の実力を鑑みると間違いなくうまいのだろうな。

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詳しいことは「さやぴぃのラーメンデータベース」へ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm

 築地場外、晴海通りと新大橋通りの交差点からカウンターだけの飲食店が並ぶ。中でも有名なのが築地のラーメン屋2店舗。「静の屋(間違っているかも)」と「井上」であった。どちらかというと「静」の方が好きであり、行列の出来る「井上」で食べることはほとんどなかったものだ。その「静」がなくなって同じ場所に出来たのは「大一」という店。これが驚くことに昔と同様に人気のない店である。
 たまたま築地あたりに用があり場外を歩くとこの店だけが営業していた。それでいい機会だと、ラーメンをお願いする。
 出てきたのが醤油で黒っぽい汁に白っぽい麺、大きいチャーシュー、メンマ、煮卵という東京風?ラーメン。なかなかうまそうだと一口すすってあまりに平凡な味わい(まあ合格点ということ)なのにちょっとがっかり。
 スープは鶏ガラだろうか、あまり旨味がなく、煮干しなどのアミノ酸系に旨味にも乏しい。チャーシューも煮卵もお座なりなもので、これでは隣に有名店があると客が来ないかも知れない。
 せっかく食のメッカに店を構えたのだから、もう少し試行錯誤すべしである。隠し味に魚醤など使うといいかも。

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 東武線鐘淵から南に下って、路地から路地へ、そこは家内工業、はたまた中小企業というよりは小企業の街。歩いて歩いて歩き疲れて東向島駅へ向かう。東向島駅は1987年までは玉ノ井、すなわち「鳩の街」と呼ばれていた。永井荷風の「墨東奇譚」、滝田ゆう「寺島町奇譚」の街である。
 その東向島へ向かう「いろは通商店街」、ここは昔の大正道路。関東大震災のときに浅草にあった飲食店などが移ってきたところ。そしてこの道がかの玉ノ井商店街であると思われる。すなわちこの南側にあったのが鳩の街ではないか? 夕闇迫り、下町を歩くにいちばんいい時間帯なのである。

 この「いろは通商店街」で見つけたのが「興華楼」。何の変哲もない中華の店なのだが、店のサンプルの中にオムライスを発見する。ここは明らかに中華を中心とする「食堂」であろう。
 入り口にアーチ型に丸く暖簾がかかっている。この手の暖簾がつとに目にしなくなってきている。入ると思ったよりも広い店内。店内では地元の方たちが明らかに夕食をとり、くつろいでいる。壁にものすごい量の品書き。中華の酢豚からレバニラ炒め、チャーハンに餃子、各種麺類。また居酒屋風にモツ煮込み、そして洋食系のカツライス、カレーライス、チキンライスにオムライス、ハンバーグもある。軽い空きっ腹であるのでここでラーメンにする。
 これが絵に描いたような東京ラーメンなのである。鶏ガラスープは醤油味、麺は鹹水を感じるやや細い縮れ麺、そこにチャーシュー、メンマになると。まったく戦前もかくやと思えるラーメンなのである。今時の旨味の強いラーメンではなく中華料理店の一品としてのもの。ややもの足りないがまずくはない。
 ここはあくまで食堂であって「ラーメン店ではない」というのを感じただけで店を後にする。

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興華楼 東京都墨田区東向島5丁目28-2

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 市場飯はうまいのか? と聞かれると「うまかねーだろ」と答えるのが生粋の市場人だろう。未だかつて市場で働く人の口から市場内の飲食店をほめる言葉を聞かない。たぶん川崎北部市場水産棟にある『珍来軒』なんてものも「うまかねー」店のひとつだろう。でも市場にあっては空腹を満たすための「うまかねー店」っていうのがちょうどいいのだ。

 でもあまりの風情のよさに朝からラーメンを食べてしまったのはオヤジ的な野次馬根性からなのである。どうにもこうにもこの場末にあるようなざっかけない雰囲気に惹かれてしまうのだ。
 そこで悩んで悩んでラーメンにしたのである。なぜかって、それは店名の「珍来軒」から当然ラーメンと決めて券売機の前に立ったのだが、脇目に見る「そばうどん」の方がうまそうだったからだ。食券を買っている脇でコロッケ、かき揚げをのせてそばをたぐっている若者がいる。そのコロッケがうまそうだ。でも「珍来軒」なのだからラーメンだよな、と改めて思い決して400円を放り込む。
 このラーメンが平凡な味わいのものであった。なによりもスープがうまくもなんともない。なんといったらいいのだろう旨味に欠ける。そこにほどほどの具。残念ながら鳴門がないので「典型的ラーメン」ではない。
 丼を返すためにカウンターに行くと、「今日はとん汁にしようかな、とん汁ライス」と注文している。よくよく品書きを見ると「とん汁」「とん汁ライス」というのが輝いて見える。次回の朝飯はコレだな。

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 福島郡山市に本拠を置くラーメンチェーン店。国道などを走っていると「創業昭和29年」とか「390円」とかが、やたらに目に付くのだ。それで一度はいってみたいと思っていた。
 店舗はそれぞれあまり大きくない。我が家からだと相模原や厚木が立ち寄りやすく、今回は行ったのは厚木の店。深夜2時ということで客は後ひとりだけ。さびしいなかでカンバンの「中華そば」を注文する。店内はなんだかユニークな造りだが、店員の態度ともにチェーン店としては悪くない。食券を買うシステムではなく後で精算するのはちょっとファミリーレストランのようだ。
 出てきたのはやや濁ったしょうゆ味のスープ。これは鶏ガラかな。そこにメンマ、チャーシュー、ノリと言うのもいたってスタンダード。麺は多加水熟成麺とたいそうなこと(わけのわからんということ)をうたっているがいたって平凡だ。むしろスープの方がユニーク。鶏ガラの香り味に、何かを焦がしたときのようなツンとくる鋭角的なものがあるのだ。これはなんだろう? 個人的には不愉快なもの。と言うことでスープの味わいもいたって低級なもの。値段通りの味わいかな、この店の中華そばは。

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中華そば390円(税抜きの値段、支払は400円を超える)

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 有楽町駅を下りる。そのまま東京駅方面にガード下を歩くとどうなるか? そこは昭和30年代を通り越して戦前戦後の姿そのままの暗がりが広がっているのだ。ここにも今や「明るく清潔な死の世界」が広がりつつあるが、まだまだ踏ん張って「人らしい」姿を、そのままに生きている暗闇がある。その路地の先に「谷」はあった。
 まるでネズミの穴のようではないか? そこにはやきとり屋、小料理屋があり、チャーハンとラーメンの「谷」がある。この路地にある自動券売機で600円なりのラーメンの食券を買い求め狭苦しい路地から、またまた狭苦しい店内に入る。左手の厨房は客席から見て無闇に高く感じる。そしてカウンターを挟んで右手に小さなテーブルが3つ。奥に幾重にも筋の入ったテレビ画面が時に縦に揺れている。これなど四国の片田舎でむりやり毎日放送に合わせた時のようである。

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 そこにラーメンの食券を置くと無言で大男が先に入った客のチャーハンの中華鍋を振っているのだ。ズンドコズン、ズッッッッドドンズン、ズンドコズン、ズッッッッドドンズン。ズンが「トン」と聞こえている。すなわち重い確かな地響きのようである。周りを見渡すとみなチャーハンを注文しているのだ。
 そのチャーハンの合間を縫ってラーメンは作られている。そして来たのが澄んだスープのとてもスタンダードなものである。

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 とてもスープが多い、麺は太く沈んでいる。メンマ、海苔にチャーシューが浮かんでいる。そのたっぷりのスープをすすってみる。これがなんとも素晴らしい味わいなのだ。でももの足りない。でもうまい。どうしてこんなにうまいんだろう。そしてもの足りないんだろう。しかしうまいのだ、とスープだけ飲み干してしまいたい。「でもでも麺もチャーシューも海苔もメンマも残しちゃダメよ」とボクの耳元で呟いているのは食の女神だろうか? 一気に総てを食べ尽くしてしまった。ここにいたってもうまいのか普通なのか判然としない。でも「また食べたいのだ」。
 ぼんやり店を出たらそこは終戦後そのままの有楽町ガード下なのである。フランク永井の「有楽町で逢いましょう」という歌が出たのが1957年、すなわち昭和32年なのだがそれ以前の闇市の匂いを残しているのがこのあたりなのだ。

 おい今時の能足りんの都市開発者よまさかこの生きている、有機的な人の温かみを狙っていないだろうな。君たちは明らかに人の血の通った暖かみを忘れている。もっと人としてまっとうな心を取り戻してから都市開発をして欲しいんだけどね。コノヤロ!

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 甲州街道は千人町にいたってイチョウ並木になる。そして最寄り駅は西八王子。その甲州街道高尾方面に向かって右側にひっそりあるのが「五衛門」なのだ。
 この店、なぜか昼間は行列の出来る店なので、待つのが大嫌いなために一度も食べたことがなかった。それが3時過ぎに来てみると行列はなく、店の中にもお客は3人しかいない。そして店も中年のご夫婦で切り盛りする、いたって庶民的な雰囲気だ。
 あまり、待たないで出てきたのがいたって典型的な八王子ラーメンである。スープの表面には細かいが透明な油、チャーシュー、メンマにお決まりの刻み玉ねぎ。
 八王子ラーメンのなかでは醤油の色合いが薄い、そのせいか味わいは比較的さっぱりしている。スープの基本は鶏ガラだろうか? このあたりラーメンの専門家ではないので読みとれない。そこに微かにイノシンの旨味でこれはさば節なんだろうか? ボクの好みにぴたっとはまるもので思わずうなりたくなる。ストレートな麺も味が良くラーメン(中華そば)として最高である。
 これで450円というのだから今のところ八王子では一か二、ピカイチの店と言えそうだ。あまりのうまさに感動して涙が出て止まらない。こんな変なオヤジを見て近くにいたストレートパーマがとれかかった不細工な娘が目を丸くしている。「ばかな娘よな、オヤジはうまいものに出合うと涙腺がゆるむのじゃ」とにらみ返す。まあ、そんなことはともかく今度は大盛りにするぞ!

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五衛門 東京都八王子市千人町3-3-3
●詳しくは「さやぴっのラーメンデータベース」へ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm

 飯能にある農協は品揃えがいいので、必ず立ち寄る。その隣にラーメン屋があり、暖簾に「煮干ラーメン」とあるのでかねがね入ってみたいと思っていた。煮干しを使ったラーメンというのは魅力的だ。ただし、この期待が仇をなすのか実際にうまいものは皆無に近い。それでも暖簾に「煮干」の文字とは意気込みを感じるではないか。
「らんしゅう」があるのは東飯能駅からほど近く。なかなか立地条件がいい。その味のある暖簾をくぐって少々がっかりした。店の造りがダメなのだ。手前にテーブル席、そしてカウンターというのは本来は喫茶店でもやっていたのだろう。また店に漂う匂いがよくない。だいたいうまいラーメン屋は漂う匂いが違っている。これはダメかな、と思ったがせっかくだから「特製煮干ラーメン」680円を注文する。
 出てきたのはデカイ板海苔4枚、真ん中にゆで卵、メンマになるとといったうるさい代物。外見からなんだか、煮干し出汁を味わう気が失せてしまう。そして一口すすってやはりがっかりした。まずくはないのかも知れない。塩分濃度、旨味のバランスも悪くない。具もやりすぎだが、人によってはうれしいだろう。でも肝心の煮干し出汁の取り方がダメだとしか言いようがない。じっくり見るとスープが濁っている。これはやや大きめの背黒イワシをしっかりワタやゴミを取り除かないでとったのだろうか? 煮干しはあまり大きすぎないのを2つ割にし、ワタや汚れを取り、できれば軽く煎ってから使うのがいい。もしくは火力が強すぎる(煮干し出汁を取るときには絶対に煮立ててはダメだ。また火が弱くても苦みが出る。当然材料を混合したときに煮干しを加えたときにも同じ)ために、苦みというか煮干しの臭みが出たのだろうか? 煮干しで出汁を取るのは非常に難しい。
 この店、味わいのバランスは決して悪くない。ひょっとしてメニューの味噌ラーメンにバターなどを落とした物はうまいのではないか? なんとか食べ終わったものの後悔しきり。

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らんしゅう六道店 埼玉県飯能市栄町10-20

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 山梨中央市場でこまった。広い敷地に食堂などが見つからないのだ。それで水産棟からもう一度市場を周り、またまた探して探して青果市場の西に何軒かの食堂があつまった建物を見つけることができた。
 その建物には3軒の食堂がある。そして建物の前で思案する。どれに入ればいいのか、店の中が見えないのだ。市場の食堂というのはほとんどが常連さん相手で、外部からお客がくるなんて思ってもいないのだろう。食堂に入ったとたんに、よそ者はボクだけで「白ら〜っ」とするのがちょっと恐い。
 意を決して角にあるその名も「山中食堂」に入る。でもやはり中で食事をとっているのは明らかに市場関係者ばかりなのである。こんなところ観光地沼津とは大違い。メニューを見ると中華ともそば屋ともつかないメニューが並んでいる。定食にしようかな? と思ったが、決め手がない。考えあぐねて無難にラーメンにしてしまった。これが450円。

 出てきたのは真っ黒なしょうゆラーメンである。そのしょうゆの濃度は濃くて鼈甲色を思わせる。チャーシュー、メンマ、なると、板海苔がのっていて麺は普通の細くて微かに縮れたもの、所謂、戦前からある典型的「支那そば(支那はラーメンの歴史を語る上で避けて通れない言葉である。ここではまったく侮蔑的な意味合いを持たない)」だ。
 この色合いは「どこかで見たもの」、そう八王子ラーメンの色なのだ。違うのは「表面に透明な油の層がない」、「刻み玉ねぎがのっていない」というところ。そしてそのスープなのだがコクがあるのだが、旨味が少ない。大量の醤油のアミノ酸が鶏ガラなどからでる旨味を殺しているのだろう。これは冬の寒い時期なら好ましいものかも知れない。ラーメン全体の味わいからすると決して悪くない。ラーメン通ではないボクなんてときどき食べたくなるものだ。
 この醤油色スープのラーメンはひょっとすると山梨ラーメンの特徴なのかも知れない。それならそれで面白いのではないだろうか?

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山中食堂  山梨県甲府市国母6丁目4-1

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