立ち食いそば・うどん: 2008年12月アーカイブ

 北九州では小さな小さな市場を探す旅をした。
 北九州市役所「にぎわいづくり推進本部」の情報によって目差すのが折尾駅。
 小倉から西に行くのに、とにかく来た電車にのった。
 各駅停車で、折尾駅についたらやけに寂しい。
 わからないまま電車を降り、歩くともなく歩くと、そこにまた木造の美しい駅がある。
 後々わかったのが、ここには鹿児島本線と福北ゆたか線の二つの駅があり、本来の折尾駅というのは鹿児島本線の駅のことだということ。
 でも福北ゆたか線折尾駅に降りるなんて、なかなかできないことかも知れない。

 人の流れに続いて、駅を出ると、目の前にビルがあって、その目隠しされた場所を抜けると木造の折尾駅が正面に見える。
 線路を超え市場などを見て、めぼしい収穫がなく、こんどは鹿児島本線折尾駅のホームに立つ。
 まだ小倉方面門司港行きの電車には間がある。
 なにげなくホームから反対側を見ていると立ち食いうどん、そばの店がある。
 暖簾がさがっているのだけど、どうにも言い表しようのない色合いだ。
 関東でも関西でも見かけない「青い」暖簾に「かしわうどん」とある。
 電車までは間があるはずで、大急ぎでホームの階段を下り、煉瓦作りのアーチを走り、博多方面のホームに登る。

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 煉瓦の見事なアーチにくだらない絵が描かれている。
 どうして古さびた美しさを汚すのだろうなんて思っていると、突然昭和30年代にタイムスリップしたかのような幻想にとらわれる。
 九州の豊かさは昭和40年代まで続いたのではないだろうか?
 折尾は筑豊炭坑に南下する駅にあたる。
 五木寛之の『青春の門』とか土門拳の『筑豊の子供たち』を思わせる。
 北九州市にもの申したいのは、このような絵で時間が作った美しさを汚すなよ、ということ。

 時間がない。
 暖簾をくぐるとオバチャン二人が世間話の真っ最中。
 品書きにあったいちばん気になる「かしわうどん」300円をお願いしても、まだゆるゆると動かない。
 駅の立ち食いうどん屋だろう、いい加減にしてくれと思うものの、これはこちらの言い分で、北九州ではのんびりとゆるやかな時間が流れているようだ。

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 やっとできたうどんは透明感のあるつゆ、赤い蒲鉾に青いねぎ、煮たかしわ(鶏肉)が浮かんでいる。
 大急ぎで汁をすするととても甘い。
 いきなりくる甘さで面食らっていると、そこにはだし(カツオ節)などの旨味が浮き上がってくる。
 そしてうどんがいやになるくらい柔らかくぬるぬるしている。
 まさかと思うけど冷凍なのだろうか。
 まさかね。
 このぬるぬる柔らかいうどんはともかく、甘いだしのうまさ、かしわの甘い味わいがなかなかいいのである。
 つゆは大阪よりもはるかに甘いが、意外にあっさりしている。
 時間がないのでいっきに食べたのだが、なかなか後を引くうまさで、なんと無常にもあと3分の一を残して小倉行きの電車が到着してしまったのだ。

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