前を通るたびに入ってみたかったのがこの店。3階建ての古めかしい外観。各層に緑色のタイル、そしてコンクリートの仕切、このビルの一番上部には青い丸瓦状のものが見える。このような形式の建物は他ではなかなか見ることが出来ない。
日本橋本町は昔は古いビルが多くて歩いていても楽しいところであった。それが近年、どんどん取り壊されて高層ビルが目立ってきている。そんなとき『大勝軒』を見るとほっとする。ちなみにこの真ん前の鶏肉専門店とともに、なんとか後世に残せないものだろうか?
さて、昼と夜の営業でなかなか入るに入れないでいた『大勝軒』。先週やっと夕ご飯をここで食べることが出来た。ラーメンも食べたいし、ご飯も食べたいと思ってメニューを見ると、驚いたことにカツ丼まである。中華にカツ丼あり、というのは意外に古い店に多いのだと思われる。それではカツ丼といきたいところを我慢してラーメンと小ライス、餃子の定食Bにする。これが850円。
タンメンや餃子などの値段をみると、近年の神田、日本橋の相場からするとやや高め。これは老舗としては良識の線なんだろう。昔は明らかに安い店であったのが新興のチェーン店などがしきりにこのあたりで価格戦争をおっぱじめているのだ。そんなことどこ吹く風でいるのも良いのだろう。
出てきた定食でまず目に飛び込んできたのがラーメンに入っているハム。ハムはチャーシューの代用なのかと思ったら、それもちゃーんと入っている。上品な醤油味のスープで程良い旨味がある、そして微かに香ばしいのは鶏ガラが主体であるようだ。そしてハムはともかくチャーシューがうまい。豚肉の味わいが残る淡い味つけで、これがいい。麺はかなり細く、これはもう少し太い方がいいと思うのだが全体に好きなタイプのラーメンである。
ちょっと横道にそれるが最近、小津安二郎の『お茶漬けの味』で鶴田浩二演じる岡田がお代わりまでして食べていたラーメンがうまそうで、うまそうで仕方ない。『お茶漬けの味』はなんども見ているのだが、この場面がいちばん好きだというのもおかしな話だな。でも1952年以前のラーメンの味ってどんなものなのだろう。初めてラーメンを食べた記憶と共に昔のラーメンの味を想像するのだ。
そして『大勝軒』なのだが、その古きラーメンの味わいに「やや近いものである」と思われる。でも本当に麺が細すぎるのが残念だ。
餃子の味わいは在り来たりだが、うまい。ご飯がついて満足度もあり、ときどき『大勝軒』には立ち寄りたい。
大勝軒 東京都中央区日本橋本町1丁目3-3
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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大月「いなだや」豚カツ定食850円
>でも1952年以前のラーメンの味ってどんなものなのだろう。
ラーメンが出てくる最も古い映画は小津安二郎の「一人息子」ではないでしょうか?
上京した老母が息子夫婦のボロ長屋に泊まったおりに、屋台の支那そばをとります。
「おかあさん、始めて食べるでしょ? どうです? なかなかのもんでしょ?」
http://www.shochiku.co.jp/video/dvd/2003/da0269_5.html
岐阜市にある「丸デブ」は大正時代創業で、初代店主は浅草にあった日本で最初の支那そば屋「来々軒」で修行したそうです。
店名の由来は初代店主がデブだったから。現在の店主は三代目です。
麺もスープも、日本蕎麦・うどんとラーメンの中間のようなもので、ラーメンの原初的形態ではないかと思いますよ。
麺の堅さ、スープの濃さ、ネギの量を注文できます。
自分はいつも「コワ・カラ・ネギ多め」(麺堅め・スープ濃いめ)です。
http://www.walkerplus.com/tokai/gourmet/contents/tkm139.html
http://ramen.ism.excite.co.jp/page/%E4%B8%B8%E3%83%87%E3%83%96%E6%9C%AC%E5%BA%97.html
http://vanmania.blog.ocn.ne.jp/takehiko/2006/05/post_f093.html
atさん、ありがとうございます。これを見ると創成期のラーメンというか中華そばには蒲鉾が入っていたんですね。ものすごく面白いですね。でも「丸デブ」に行ってみたい。