2008年9月アーカイブ

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湯気で曇ってしまったが、この日は8種類のキノコが使われている

 世の中には困った夫婦がいて、その最たるものが八王子総合卸売センター『さくら』にいる。
 普通、夫婦ふたりいたら、どちらかが軌条を外しがちで、どちらかが修正するのが当たり前。

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 でもこの夫婦だけは違っている。
 外したら、より大きくそれようと努力する。
 普通、中華そばなどを出す、中華料理屋といったら保守的なものだ。
 数十年相も変わらぬ、まことにガンコで一徹なもの。
 そこになにも発展はなく、当然、新しい魅力を生み出す可能性は皆無だろう。

 さて、この『さくら』には、その夫婦の努力の甲斐あって、まことに美味な物が目白押しだ。
 “ざる中華”、“とろみそば”、“味噌たんめん”、“さくらそば”、そしてレバニラ炒めなどもほんまに独特でうまい。

 そんな夫婦がこっそり賄いとして食べていたのが、「きのこそば」なのである。
 だいたいお客よりもうまいものを賄いで食べるというのが、料理人のやりがちなことなのだが、やはりやはり、今回もそれなのだ。
 その賄いを食べてビックリ、ちょっと怒りを感じて、
「これは夫婦だけで食べてはイカン、イカン(笠智衆風に読んでくれ)」
 それで店のメニューとあいなった。

 この“きのこそば”がうますぎる。
 先週の土日のこと。
 仲のいい夫婦が方や“ざる中華”、方や“きのこそば”を注文した。
 夫の“きのこそば”が先に来て、
「おい、ちょっと食べていいよ」
 それで妻の方が少し食べてみて、丼を手放せなくなった。
「あんたザルを食べてよ」
 なんて結局、夫婦分かれしそうなケンカを始める始末。
 そのときのケンカの後は壁に小さく血痕がのこっていて、今でもまざまざしい。

 明らかにメタボリックなマサさんも犠牲者のひとりだ。
 いっぱい食べても、もの足りなかったので2杯も食べた。
「これじゃ痩せないな」
 当たり前だ。

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まささんの横向きのショットはちょっと危険な雰囲気がするぞ

 ボクだって一日、いっぱいで我慢しているのだ。
「いっぱいで我慢しろー」

 しかし、まことに『さくら』夫婦は人騒がせな人類なのだ。
 あ、いかん、“きのこそば”の実態を説明していなかった。
 手打ち太麺に鶏ガラスープ、カツオ節だしのベース。
 ここにキノコたっぷり、野菜たっぷりの醤油味のあんがのるのだ。
 中華料理の店で、あまり季節を感じることもないと思うが、秋をたっぷり堪能できる。
 だめだ、解説していると食べた記憶が蘇る。
 また今日も食べてしまいそうだ。

八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 築地で食べ歩きをしている、つきじろうさんの何が偉いかというと、ひとつの店に行くとする。
 たぶん何回も行くんだろうけど、その店総ての品書きを食べ尽くしているということ。
 対するに我ながら、その手の好奇心が薄いのである。
 築地に定期的に通い始めたのが、二十歳代半ばのこと。
 場外の『きつねや』はその当時からあって、ボクがもっとも早く築地飯を食べたところだ。
 でもこんなに長い年数であるのに肉豆腐しか食べていない、のである。
 もちろん一年に一度や二度しか食べないので回数はそんなに多くないのだけどね。

 どうしてなんだろう、ある店にはいるとする。
 入るやいなやせっかちに、とりあえず注文してしまう。
 ほとんど考えないで、即注文というのがボクの流儀なのだ。
 だから久しぶりに『きつねや』の大鍋の前に立って、「肉豆腐とご飯」と30年近く同じ事をやっている。
 つきじろうさんに影響されて、普段注文しないものをお願いしようと心に誓っているのだけど、ふっと気が抜けるときがあって、また同じ過ちを繰り返してしまった。

 さて、かなり昔の話になるが、「築地の飯は高い」ので、できるだけ築地飯はさけていた。
 我が神保町と比べると、とても築地飯を気軽にやるのは無理だった。
 当然、『きつねや』でご飯というのはかなりの贅沢であったことを明記したい。
 今回の肉豆腐とご飯にしてもお代は840円もする。
 お新香やボクは苦手なのだけど生卵などを加えると、すぐに千円を超える。
 アルミのトレイにのった肉豆腐と飯を道路沿いの机のようなものに運びながらも、改めて築地の飯代の高さを痛感する。

 話は逸れるけど、店がきれいになったように思うのは間違っているのかな。
 左右に広くなってもいるようだし、若い男性が大鍋の前にいるのも初めて見たような。
 確か昔はオバチャンひとりがいるだけの店で、カウンターに三四人座るといっぱいだった。
 だから煮込みの大鍋を見ながら、席の空くのをよく待ったものだ。

 さて、『きつねや』の肉豆腐は甘くない、あっさりした醤油味で、注文する時間帯によって牛肉の硬さや煮くずれ度が違う。
 ボクはよく煮くずれた方が好き。
 豆腐もよーく煮染まったものがいいと思うのだけど、煮染まった豆腐・煮くずれた牛肉の取り合わせには滅多に出くわさない。
 今回は珍しいことにともによく煮くずれし、煮染まっている。

 まずは肉豆腐の豆腐を潰しながら、かき込み、すぐにご飯をぱくりとやる。
 この肉豆腐とご飯の離れ具合が好きだ。
 ご飯が半分になったときに、残った肉豆腐を茶碗に放り込み、要するに「肉豆腐丼」にしてかき込む。
 まあ、上品とはほど遠い、庶民的な味で、腹が減ったときにときどき、ここの「肉豆腐」が浮かぶことがある。

 さて次回はホルモンに挑戦したいと肝に銘じるのだ。

つきじろうさんの「春は築地で朝ごはん」
http://tsukijigo.cocolog-nifty.com/blog/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 駅弁はあんまり好きじゃない。
 例えば一人旅で新幹線に乗る。
 見知らぬ人が隣に座ると、なんとなく弁当なんて食べる気にならなくなる。
 だから鉄道を利用するときには「立ち食いそば、うどん」をもっぱら食べる。
 でも売っている駅弁を見るのは好きだし、たまにお土産に買う。

 今回は東京駅から名古屋までの新幹線。
 絶対に駅弁を買い求める状況ではない。
 でも新幹線の改札口を出て、すぐのところに面白い駅弁を見つけて、ついつい魔が差したように買い求めた。
 なんとも贅沢な900円なりだ。

 その駅弁名は「品川名物 貝づくし」というもの。
 品川と貝というのは現代ではとんと結びつかない。
 戦前ならば、可能性はあるが、しかしそのときですら有名な産地でもない。
 とにかく「品川=貝」というのは解せないな。
 例えば明治期、大正期、たぶん戦前くらいまで(人によっては高度成長期以前)、とくに江戸時代、品川はカニや貝などで有名であったことがある。
 潮干狩りの図というか浮世絵などもあったはず。
 残念ながら今では見る影もない。
 ちなみに現在でも京浜運河などではアサリ、ホンビノスなどの貝はとれる。
 とれるけど、この水質をみるにとても食べる気にはなれない。

 じゃあジェイアール東海パセッンジャーズという会社はどうやって、もっともらしく「品川名物 貝づくし」なんて名の弁当を作ったのか?
 それが知りたくてわざわざ買い求めたのだ。

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「ハマグリ、イタヤガイ、シジミ、アサリ」
 裏面の原材料にある貝の種類はこれだけ。
 4種で標準和名での記載はアサリだけ。
 あとは種はわからない。
 包みをあけて、まずは貝を調べてみる。
 まず間違いなくイタヤガイは輸入品である。
 たぶんアメリカイタヤかシナイタヤ。
 ハマグリも輸入品としか思えない。
 たぶんミスハマグリ(ベトナム産)、もしくはシナハマグリ(中国産)。
 アサリとシジミも怪しい怪しい。
 中身で見る限り「品川」なんてどこにもない。

 このようになんでも地名をかませればいいというのは「変」じゃないだろうか?
 法律にはふれないけど「だまし」に近い。
 こんなことが許されるのも水産物の標準和名や輸入国、養殖、天然の表示義務が加工品にはないからだ。
 そこをジェイアール東海パセッンジャーズという会社は利用しているように思える。

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 さて食べてみると、なかなかおいしい。
 けっして出色のうまさではないが、1000円前後の弁当では合格点すれすれだろう。
 弁当を作る会社に求めたいのは、もっと原材料に対する表示をしっかりやること。
 弁当名をつけるとき、最低限の誠実さを持ってつけることだな。
 ジェイアール東海パセッンジャーズはこの弁当に関する限り、ダメじゃないかな?

ジェイアール東海パセッンジャーズ
http://www.jr-cp.co.jp/
http://www.jr-cp.co.jp/products/index.php

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 8月後半はなんといっても武内立爾さんの「べにや民芸店」の個展に気が向いてしまって、その方向性を変えられなかった。
 なぜなら武内立爾の作品にひきつけられたからだ。
 ただ見ているだけで、楽しい、そんな個展であった。

 今回の器は、非常に美しいものが多かった。
 昨年は力強い人間じみた個性を感じた。
 対するに今年は、自然が持っているものと同じような抗しがたいような魅力がある。
 その魅力を最大限に感じた深皿があって、それが我が家に来るとは今回ばかりは思ってもみなかった。
 喜びを感じるとともに、この器をいかに生かし切るかを思うと気が引き締まる思いがする。

 武内立爾さんに感謝。

酒津のホタルを親しむ会
http://sakadu-hotaru.jugem.jp/
べにや民芸店
http://beniya.m78.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
http://www.zukan-bouz.com/

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