市場・港でご飯の最近のブログ記事

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 長旅もそろそろ終わりに近づきつつある。
 日本海から瀬戸内に来て、魚貝類に埋め尽くされた日々に、また瀬戸内の魚貝類を見て、疲労感は最高潮となっている。
 水産棟から関連棟までとぼとぼ歩きながら、この疲れの原因のひとつが我が身の体重にありと改めて感じるのだ。
 見上げると、すんだ青空が広がっている。
 朝から気温が上がり気味で、頭が一層ぼんやりする。
 連日の酒で胃が重く、少々痛む。
 ふと、浜田(島根県浜田市)の連中と酒を酌み交わしたのは楽しかったな、なんて思い出す。

 関連棟に入り、いちばん端っこから、とぼとぼ正門近くの方に長い長い通路を歩く。
 以前、おでんを飽食した備前食堂、いちど入ってみたいと思っている「シモショク」、そして結局、端まで歩いて、「笑福亭」、もう一度、通路を戻る。
 入る店は既に決めてしまっている。
 でも一度は通り越して、「本当にここでいいのか?」、自分に問い直して店を選ぶのが私流(わたくしりゅう)なのだ。
 店の名は「まあちゃん食堂」。
「まあちゃんに会えるのだろうか?」
 暖簾をくぐるといきなり目の前に、まあちゃん(だろうと思われる)がいたのだ。
 小さな小さな、まあちゃんで、「いらっしゃいませ」なんて愛想がいい。

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 店内にはおかずが並んだケースが大小二つ、そして岡山の市場の定番食ではないかと思い始めた、おでんが煮えている。

「あの、ここからとっていいんですよね」
「いいんですよ(ニコニコ)」
 菜っぱ(葉物野菜)と豆腐の炒りつけたもの、酢の物、トンカツ、コロッケなどがあり、そこに小いわし(マイワシ)の煮つけ、アゲマキの煮つけがある。
 アゲマキの皿を持って、
「この貝なんって言うんですか」
「ああ、“ちんたいかい”ってここらではいうのう」
「いやあ、初めて見ました」
「そうですかいの。ここらへんではよく食べますけん。そんでも最近はあんまり食べんようになったな」
 “ちんたいかい”をとってカウンターに腰掛ける。
「おでんください」
「なにがええですかいね。卵はいります(箸でかき回して)、あるかいな。あったあった。豆腐ね、ああ、これは長てんです」
 ゆで卵に、豆腐、長てん(長方形の薩摩揚げ)を選んだ。
「ご飯、みそ汁いりますね。ご飯は大と中と小があります」
「小でいいかな」
「そうですね。足りなかったら、足してあげますけん」
 その小が東京都内での大盛りに近い。

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 出てきたみそ汁が具だくさんで濃いのだけど、一口すすると身体に染みこんでいくようだ。
 うまいし、おかしなことに疲れが引いていく。
 疲れたときには濃いみそ汁が効くのだな。

 長てんにかぶりつき、まあちゃんの料理の腕がただ者ではないことがわかる。
 おでんつゆは適度に甘く、適度にしょうゆ辛い。
 ごはんに合う、味付けとなっている。
 これは、“ちんたいかい”にもいえることで、思ったよりも軟らかく、そしてアゲマキの味を殺していない。
 ごはんのうまさに、先ほどまでの胃のジクジク感が消えてしまう。
 これなら体調悪くても大でよかったのかも知れない。

 最初にいたお客が帰り、またお客が来て帰る。
 早食いのボクがゆっくり朝ご飯をとる。
 これは久しくなかったことだ。
 最後に番茶(ほうじ茶。中国地方の番茶は焙じるタイプが多い)を飲み、たくわんをポリポリ、そして残った“ちんたいかい”を食べる。

 「まあちゃんまた来るからね」と心の中で言いながら店を出た。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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 築地で食べ歩きをしている、つきじろうさんの何が偉いかというと、ひとつの店に行くとする。
 たぶん何回も行くんだろうけど、その店総ての品書きを食べ尽くしているということ。
 対するに我ながら、その手の好奇心が薄いのである。
 築地に定期的に通い始めたのが、二十歳代半ばのこと。
 場外の『きつねや』はその当時からあって、ボクがもっとも早く築地飯を食べたところだ。
 でもこんなに長い年数であるのに肉豆腐しか食べていない、のである。
 もちろん一年に一度や二度しか食べないので回数はそんなに多くないのだけどね。

 どうしてなんだろう、ある店にはいるとする。
 入るやいなやせっかちに、とりあえず注文してしまう。
 ほとんど考えないで、即注文というのがボクの流儀なのだ。
 だから久しぶりに『きつねや』の大鍋の前に立って、「肉豆腐とご飯」と30年近く同じ事をやっている。
 つきじろうさんに影響されて、普段注文しないものをお願いしようと心に誓っているのだけど、ふっと気が抜けるときがあって、また同じ過ちを繰り返してしまった。

 さて、かなり昔の話になるが、「築地の飯は高い」ので、できるだけ築地飯はさけていた。
 我が神保町と比べると、とても築地飯を気軽にやるのは無理だった。
 当然、『きつねや』でご飯というのはかなりの贅沢であったことを明記したい。
 今回の肉豆腐とご飯にしてもお代は840円もする。
 お新香やボクは苦手なのだけど生卵などを加えると、すぐに千円を超える。
 アルミのトレイにのった肉豆腐と飯を道路沿いの机のようなものに運びながらも、改めて築地の飯代の高さを痛感する。

 話は逸れるけど、店がきれいになったように思うのは間違っているのかな。
 左右に広くなってもいるようだし、若い男性が大鍋の前にいるのも初めて見たような。
 確か昔はオバチャンひとりがいるだけの店で、カウンターに三四人座るといっぱいだった。
 だから煮込みの大鍋を見ながら、席の空くのをよく待ったものだ。

 さて、『きつねや』の肉豆腐は甘くない、あっさりした醤油味で、注文する時間帯によって牛肉の硬さや煮くずれ度が違う。
 ボクはよく煮くずれた方が好き。
 豆腐もよーく煮染まったものがいいと思うのだけど、煮染まった豆腐・煮くずれた牛肉の取り合わせには滅多に出くわさない。
 今回は珍しいことにともによく煮くずれし、煮染まっている。

 まずは肉豆腐の豆腐を潰しながら、かき込み、すぐにご飯をぱくりとやる。
 この肉豆腐とご飯の離れ具合が好きだ。
 ご飯が半分になったときに、残った肉豆腐を茶碗に放り込み、要するに「肉豆腐丼」にしてかき込む。
 まあ、上品とはほど遠い、庶民的な味で、腹が減ったときにときどき、ここの「肉豆腐」が浮かぶことがある。

 さて次回はホルモンに挑戦したいと肝に銘じるのだ。

つきじろうさんの「春は築地で朝ごはん」
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 徳島中央卸売市場はまことに魅力的な市場なのだ。
 魚貝類だけでなく、阿波名産のスダチ、レンコン、山桃があるし、関連の店には、これまた阿波名物の「かつ」、「竹ちくわ」がある。
 当然、魚貝類は瀬戸内海、太平洋両方の多種多様なのがピチピチはねている。
 四国有数の大河である吉野川には天然アユ、ヤマトシジミ、スッポン。

 さて、それではきっと市場の食堂でもうまい魚を食わせるのだろうね。
 と思ったら大間違いなのだ。
 至って在り来たりの、だけど良心的な食堂が並ぶ。
 間違っても築地の新興店舗のような「海鮮丼」などは食べられない。
 言うなれば「市場人の市場人のための食堂」しかない。

 東京を前夜9時に出て淡路島に着いたのが、午前6時前のこと。
 今回は姫とふたりっきりの帰郷。
 サービスエリアには彼のドーナッツ屋があって、姫は朝っぱらからいろいろ買い込んで、これが朝食。
 市場でご飯はボク一人。
 だから思い切って初めての店に入る。

 なんども通り過ぎた『サッポロ』はいつもお客で満員。
 やっと空いたのを見越して、引き戸をあける。
 正面が厨房で真四角にカウンターが囲む。
 厨房には団塊世代くらいの男性がいて、オバチャン、お姉さんがお茶などを出している。
 引き戸の手前におかずの皿、それに丼物、ラーメンにうどん、焼き魚、いろいろあって迷ってしまう。
 ふとカウンターの上を見ると、カタクチイワシの煮つけがある。
 これが実にうまそうだ。
 加うるに冷や奴、釜揚げしらすの小皿、シジミのみそ汁。

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 何と言っても注目してもらいたいのは奴の皿にスダチがあること。
 豆腐でも漬物でも、しらす干しでも、“なんにでもスダチ”というのが徳島ならでは。
 たっぷりスダチを絞りかけた豆腐が昔ながらの硬いものでうまい。
 スダチをかけた豆腐の味が懐かしい。

「この辺で、このイワシのことなんといいますか」
「ええ、ただイワシいうけんどな。魚は地方によって名前が変わるだろ、ここではイワシとしか言わんだろ」
 このカタクチイワシが軟らかくたき上がっている。
 甘さ控えめで、徳島ならではの醤油の丸い味付けがご飯に合う。
「冷や酒があったら最高だろうな」
 シジミのみそ汁は徳島ならではの御膳みそ。
 シジミの身がふっくらして甘い。

 おかずたっぷりの朝ご飯、味にも満足して幸せな気分になる。
 食べ終わって、店名の『サッポロ』というのが気になってくる。
 880円を支払い、聞いてみようか迷った末に諦めた。

 今回は野菜も魚もあまり見ないままに市場を後にする。
 ボクの田舎までは、ここからまだ長々と吉野川を遡る。

徳島中央卸売市場
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 名古屋駅から歩いて数分というところに、まことに賑やかな、そして魅力的な市場がある。
 その名を「柳橋中央市場(柳橋市場)」という。
 市場にもいろいろあるが、これは民間経営の市場であるようで、いくつかのビルに分かれて魚屋、青果、食肉、練り製品、乾物、荒物、紙製品などの小店が並ぶ。

 このビルのなかのゴチャゴチャした迷路の間だ、間だに小さな飲食店、食堂などが見つけられる。なかなかどれも魅力的なのだけど、一際引かれたのが「かつ屋食堂」という小さな店。
 間口一間ほどで表に紺色の大きな暖簾がさがり、大きく食堂とある。
 ちらちら見える店内ではオヤジさんがなにかを揚げているのが見える。

 市場巡りの後で腹がペコペコなので思わず、重い暖簾をくぐる。
 奥行きもなく小さな店だ。
 厨房が丸見えの、そんな距離感がうれしい。
 他に客はひとりだけ。
 こんなときどこに座っていいものやら、うろうろ。
 結局角に座ったのがよかった。

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手前がヨシエビ、奥が「あかしゃえび(アカエビもしくはモギエビ)」

 目の前には甲だけを取り去った「あかしゃえび(アカエビ)」、ヨシエビ、マアナゴの開いたものがある。
「これ天ぷら用ですか?」
「どれでも言ってくれたら揚げますよ」
 このオヤジなかなか気さくで優しげだ。
 それでとにかくお茶をもらい。
 「あかしゃえび(アカエビ)」、アナゴを揚げていただくことにする。
 後はご飯とみそ汁。
 先にやってきたみそ汁がよかった。
 愛知ならではの豆麹豆味噌、そこに里芋、分葱などが入っている。
 この里芋入りというのがうれしい。

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 天つゆをどっぷり浸した、「あかしゃえび(アカエビ)」がうまい。
 足の部分が香ばしい。そして甘味がある。
 アナゴは小振りだけど、これも揚げたてなのでいい味だ。

 天ぷらを堪能していたら、オヤジさんが串ものを揚げている。
 2本揚げて、鍋にどぼっと漬けて皿にいれて隣のお客に。
「それなんですか?」
「ええ、これはただの串カツです」
 奥の客が「コイツ、串カツも知らないのか」と驚いたようにこっちを見ている。
 面白いので、これもお願いする。
「みそとソースどっちにします」
 当然、名古屋だからみそに決まっている。
 やってきたのが黒く染まったカツ。

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 細長く貧乏くさい外見ながら、なかなかうまそうな。
 やっぱり無造作にかぶりつくといい味わいだ。
 豆味噌(三州みそ)で作ったタレに酸味があり、微かに渋いのがいい。
 なかの肉は豚らしいが、あんまり細いので存在感にかける。
 ついついカツの衣だけがひっぺがれる。

 さて、オムレツからラーメンなどもある「かつ屋食堂」での支払は地物のエビ、マアナゴなどあれこれたのんだせいで1400円なり。
 本当はラーメンや普通の定食にすると600円くらいで腹を満たすことができる。
 そんな店だから市場関係者らしき人が後から後から慌ただしく食事をして、大急ぎで去っていく。
 お客の注文に小柄なオヤジはきりきり舞してフライパンを振り、麺をゆでて、天ぷらを揚げている。
 ああ、なんだか名古屋に来ているという実感が湧いてくる。
 そんな食堂なのである「かつ屋食堂」は。

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 最近の築地行は仕事がらみが多い。
 それこそ魚まみれとなって、いろいろやっている。
 この日は、朝2時から荷受けを見て回り、午前11時にやっと仕事が終わる。
 疲れたというよりも、魚貝類を見すぎて魚貝類から少々離れたくなった。
 そこでお昼ご飯をとるべく引き戸をあけたのが『江戸川』である。
 なんとなく「ラーメン食べたい」と選んだ『江戸川』だが、この日の築地の体感温度は40度以上。
 額から、頬から、汗が噴き出し、ポロシャツがびしょ濡れ状態になっている。

 そこでこれも定番の肉豆腐と、さっぱりしらすおろし。
 みそ汁はアサリにした。
 疲れ果ててとても「つきじろうする」気になれなかった。
 ちなみに早朝、これから場内というときに『江戸川』でラーメンというのがいい。
 それからすると『江戸川』の一品料理、肉豆腐などは平凡だと思う。

 ただ疲労困憊していると、このような平凡な昼飯がいい。
 肉豆腐の牛三枚肉は適度に軟らかく、そして煮汁は甘め。
 豆腐もそんなに煮染まっていないところがいい。
 アサリのみそ汁は絶品だったのだけど、疲れているときに濃いめだから、よけいうまかったのかも知れない。
 しらすおろしは注文して、一口食べて後悔。
 たっぷりお新香にすればよかったなー。

 最近思うことだけど、疲れているときにはうまいものはダメだな。
 適度のうまさ、適度のまずさ、平凡な味に癒される。

 こんど築地王さんや、つきじろうさんに会ったら聞いてみたい。
「江戸川のよさは平凡であること」ではないかと。

春は築地で朝ごはん
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
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 美保関定置の水揚げを見て、帰港。
 選別を見終わったのが午前7時前後。
 終始雨の中。
 湿度100パーセントで、なま暖かい。
 不快指数は個人的には最大値である。
 定置網の水揚げを見ている間にも近所の料理屋、旅館、民宿などから魚を買いつけに来る人が雨にもかかわらず多々ある。

 これを見ていて、ふと漁協の女性に
「このあたりで朝ご飯食べられるところありませんか」
 まずないだろうと思っていたら、
「ありますよ。あさひ館ならやってるでしょう」
 その水揚げの場からひょいと目をやると「あさひ館」はあったのだ。
 同行していたダイコク様が
「朝ご飯やってるかどうか見てきます」
 雨の中を店内に入ったダイコク様はすぐに出てきて手をふる。

 すぐにボクも走ったのである。
 とにかく雨具を脱ぎたい。
 店内に入ると熱い番茶が待っていた。
 この番茶は島根県ならではのもの。
 関東でのほうじ茶のたぐいである。
「刺身定食でいいですよね。千円です」
 ダイコク様が念を押してくる。
 もちろん漁港での朝ご飯は刺身に決まっている。

 美保関は観光地である。
 風光明媚、街並みの美しさ、また美保神社の建物としての美しさもあって国内でも特筆すべき観光地と言っても過言ではない。
 だからうまい朝ご飯が食べられるか、少々疑問が湧いてきた。
 この国の観光地の食事には絶望的なものがある。
 とくにグルメリポーターとかが紹介するたぐいのものは最低である。
 せっかく見事な地魚がとれているのに中心にあるのがアイスランド産の甘エビ(ホンホッコクアカエビ)だったり、ヘタクソに解凍したマグロがあったり。
 これをテレビ番組などでは賛美する。リポーターが驚いた振りをする。まことに醜い光景だ。卑しさを感じる。

 そんな物思いにかられているとき、一皿目がやってきた。
 イサキの煮つけだ。
 塩焼きが定番だけど、煮つけもいいね。
 よくみると切れ目のあたりの肉がパツンと盛り上がっている。
 よほど鮮度のいいイサキを使ったに違いなく、当然とれたのは目の前の定置網に違いない。
 もずく酢、わかめのみそ汁、たっぷりの漬物に梅干しがついている。
 そしてスズキとコウイカらしいイカの刺身がきた。
 煮つけを一箸。
 思った以上に上手に煮ている。
 とてもいい味である。
 いい素材を殺さぬように、ご飯に合うように、適度に薄味なのがいい。
 刺身は大盛りじゃないけど、びっくりするほど新しい。
 イカなどは透明感があって硬いのである。。
 島根県独特のやや甘めの溜まり醤油が残念と言えば残念だ。
 それにしても定置網を見た後に食べて、そのまま定置網の魚を思い返すことが出来る。
 たまり醤油をつけてご飯と食べても、穀物の甘味と魚の甘味が相乗効果を生み出す。
 また、みそ汁に入っていたワカメがただものではない。
 シコシコして歯触りがいい。
「このワカメ天然でしょう」
「そうです。そうです。ウチはその前の海でとれた天然ワカメを漁師さんにとってもらって一年を通して使っているんです。
 この朝ご飯はなかなか出色のものであった。

 さて、観光地の食事は最低だ、と書いてきた。
 でも、こんな朝ご飯が食べられる美保関は例外かもしれない。
 こんど一人っきりで一泊してみたくなる。

2008年6月21日
あさひ館 島根県松江市美保関町美保関554
松江市観光協会美保関支部
http://www.mihonoseki-kankou.jp/

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 とても、つきじろうできない(つきじろうするの否定形)。
 後悔の念がうっすらと浮かんでくる。
 たぶん十年以上ぶりの「八千代」来店である。
 勢い込んでホタテとアジフライを注文したとき、アナゴのフライは面白いよな、と追加したのだ。
 このてんこ盛りのフライに圧倒されて、
オヤジ殺し フライを食べ過ぎ 脳溢血
 ふと、こんな一句が浮ぶ。

 でも、つきじろうさんなら、これに加えて白いご飯にカレーをかけてもらうという。
 そんなの無理。
 しかも、本気で“つきじろうする”なら食後のデザートに「センリ軒」でカツサンドを買い、食べながら築地場内を歩かなくてはならない。
 やっぱり“つきじろうする”のは無理だ。

 最近では築地場内の食い物も上品になってきた。
 例えばその最たるものが「八千代」ではないだろうか?
 その昔、「八千代」のフライは油っこかった。
 それこそ労働者(寅さん風に)でなければ気持ち悪くなるような、代物だった。

 それがホタテフライを一口かじって、明らかに大きな変革を遂げているのに気づく。
 ほとんど油っこくない、香ばしい。
 山盛りのフライが驚異ではなくなる。
 アジフライもうまいね。
 冷凍なのか、生なのかはわからないがとても味がいい。
 そして注目のアナゴフライだが、これもうまい。
 でもうまかったのは半分まで、あえて言えばうまかったのは范文雀(こんな洒落今じゃ誰もわからないだろうな)。
 アナゴのフライというのは意表をつくものだが、意外やうまいのである。
 マアナゴは脂がのっている割に味わいが淡白だ。
 そこを衣で包んであげるというのが大正解。
 しかし、「八千代」のアナゴフライは太く長い。
 やっとシッポを食べ終わったときには息も絶え絶えだった。

 ここで救いなのが、うまいみそ汁と、お新香。
 やっぱり「八千代」は飯屋として優れているのだ。

つきじろうの春は築地で朝ごはん
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 一仕事終えた築地場内、どこで朝ご飯を食べようか、迷いに迷った。
 連れは「うまい魚が食べたい」という。でも「かとう」は満席、「高はし」は値段的に無理。
 行きくれて、困ってしまい。「こういうときには“つきじろう”」だと思ってケータイ。
 実を言うと現在6時前、つきじろうさんと通じてから「そうだ今日は土曜日で、まだ早朝だった」と反省する。
「起きてました?」、「大丈夫起きてます」。こんなやりとりの後に、つきじろうさんが「魚のうまい店」としてすすめてくれたのが、なんと「小田保」なのだ。
 この店ののれんにはしっかりと「とんかつ」の文字。
 過去に入ったことがあるはずだけど、記憶に残っていない。
 しかも「おいしい魚が食べたい」とお願いしたはずだ。

 おそるおそるお隣の寿司屋の行列をかき分けて店内に入る。
 壁の品書きを見ると、ロッケやとんかつが主に思えるけど、確かに「あじたたき」「あじ酢」や「まぐろぶつ」があるではないか。
 ということで「あじのたたき、まぐろぶつ、ごはんとみそ汁」を注文する。

 まずはご飯とみそ汁がきて、そこに「まぐろぶつ」。
 この「まぐろぶつ」がすごい。赤身なのだけど、口に放り込んだら旨味が強い。しかも甘味があるのは脂が均質にまわっているためだろう。
 白いごはんのうまさに感激し、みそ汁の新鮮さに感激していたら、「あじたたき」がやってきた。
 マアジはたたいているのではなくごく細く切っている。
 ここに白ネギとミョウガ。
 白ネギというのが東京風でいい。

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 このマアジの脂ののりが素晴らしい。
 連れが「島根定置のマアジと比べると落ちますね」なんて言うが、これはこれでうまいのである。
 支払ったのが1450円なのだけど、2000円以上の価値がある。

 しかし返す返すも“つきじろう情報”は正確無比。
 魚の豊富な地方から上京してきた連れが、やたらに「小田保」の料理に感激していた。
 場内を案内したボクの鼻も高々なのだけど、すべてつきじろうさんのお陰です。
 つけ加うるに早朝から起こしてしまって「すまん、すまん」。

朝は築地で朝ごはん
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 これ以上望めない理想の市場食堂を石巻で見つけた。
 たぶん現在の概念では、ここまでやれば「市場食堂」としては充分だろう、というもの。
 実を言うと、観光客が「うまい魚がくいたい」というのを満たすものではなく、「市場で働く人が空腹を満たして、加うるに魚がたらふく食える」という食堂だ。
 また市場食堂には親切で優しい、従業の方がいらっしゃると、これまた理想的なのだけど、『斎太郎食堂』の場合、その点でも申し分がない。

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 さて品書きをつらつら挙げるに、トンカツにラーメン、焼き飯にカレー、この基本的なもの、どれをとっても味がいい。
 例えばカレーライスだが、平凡だけどうまい。ボクが石巻の市場で働いていたら、ときどきカレーもいいだろうと思うに違いない。

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上はミニカレーライス

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ご飯に混ざる、赤いものが、なると巻きなのである。なると巻きの赤の度合いに注目

 またチャーハンというよりも焼き飯というものがあって、このようなその場で料理して出すものがとてもうまい。見た目は醤油を使っているためか、やや茶系に染まる。そこに卵、焼き豚(チャーシュー)、ネギにグリーンピースが乗っている。そして特筆すべきがなるとを刻んだものが彩りと使っている。この赤いなるとが派手やかで、どこかしら演歌風。考えてみると宮城県といったら演歌が似合う。もっともっと深く考えて見ると宮城県は東北の入り口なのであり、そのせいか看板や料理、食材などの色使いが派手である。北国に映える色づかいというのか、なると巻き(練り製品の)まで赤と白が逆転して派手やかで、その無理矢理明るくしているところに東北ならではのうら悲しさを感じる。

 石巻なんだから、その日に揚がった魚が食べたいというのは、残念ながら出来ない模様だ。ここはあくまで市場の食堂であって、まずは市場人の腹を満たすのが先決だ。
 魚系の定食が紙の札に並ぶ。
 刺身ではカツオ、イカ、ミンククジラ、サンマ。どれも地魚というよりは石巻に大量に揚がるもので、当然、冷凍だけ。
 それでも定価は800円前後であって、いいものを使っているためか、ご飯もつけ合わせもたっぷりしているためか、豪勢に感じられる。当然満足度が高い。
 ボクはカレーライス、焼き飯、銀かま定食(ギンダラ)、クジラ刺身定食をいただいた。

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宮城県鮎川はクジラの町だ。その隣町とも言えそうなのが石巻市。

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「銀かま定食」には冷凍ものながらカツオの刺身がついている

 これが総て、味よし、盛りよし、また満足度は高し、であった。
 気になったのは、単品でお願いした豆腐の味が素晴らしかったことだ。
 石巻にはうまい豆腐屋があるらしい。

 石巻魚市場『斎太郎食堂』での食事は天佑丸冷凍冷蔵尾形清雄さんにご馳走していただきました。
 まことに感謝のしようがありません。ありがとうございました。

斎太郎食堂 石巻魚市場内
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
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●本ページは宮城県の漁港巡りの旅の続きです。
http://uma-i.seesaa.net/article/100845276.html

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 柏魚市場で「場内の食堂でどこがうまいんですか」と聞くと、「どこもそんなにうまいとは言えないけどね」と幾人に聞いても味は期待薄に思える。
「最近じゃ、そこの寿司屋が人気でね。うまいらしいけど開店が遅いしね」
 なかなか「これがいい」とは出てこないなか、
「そうだ、ここから見て“二八そば”ってあるでしょ、あそこが比較的うまいかな」

 その“二八そば”というのが『幌市』だった。外見はまことに平凡だが、外にある看板がすごい。イクラ丼やら海鮮丼、天丼などの写真が派手派手しい。このような看板に辟易しているので、回りの店も見て回るが、どこも似たり寄ったりで決め手に欠ける。ここは初志貫徹で店の引き戸をあける。
 店内は思った以上に普通の食堂にみえる。中心になるのはそばと丼、そこに日替わり定食があって650円ということは市場で働く人たちも食べていそうに思った。

 この日替わり定食が、なかなかよかったのだ。中心にくるのが鶏肉の塩味のオイル焼き、つけ合わせのマカロニサラダ、キャベツのせん切り。隣に主役と見まごうカレイの煮つけがある。そしてたぶん市販の長芋の梅肉和え、青菜の漬物に、なめこのみそ汁。

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 これは言うことなしの朝ご飯である。
 カレイはどうやらカラスガレイかアブラガレイで冷凍ものを使ったのだろうけど、味付けがいい。また冷凍物としてもいい材料を使っているように思える。鶏肉は平凡でも、なかなかこれだけ満ち足りた定食は少ないように感じる。

 このような平凡であるけど、よくできた定食というのがいちばん市場飯としてはいい。これなら国産ものを使っているというアナゴの天ぷらなどもうまいに違いない。

柏市公設総合地方卸売市場
http://www.city.kashiwa.lg.jp/cityhall/sosiki/B_KEIZ/KEIZ_KOU/kashiwa_ichiba/Index.htm

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