市場・港でご飯: 2008年7月アーカイブ

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 名古屋駅から歩いて数分というところに、まことに賑やかな、そして魅力的な市場がある。
 その名を「柳橋中央市場(柳橋市場)」という。
 市場にもいろいろあるが、これは民間経営の市場であるようで、いくつかのビルに分かれて魚屋、青果、食肉、練り製品、乾物、荒物、紙製品などの小店が並ぶ。

 このビルのなかのゴチャゴチャした迷路の間だ、間だに小さな飲食店、食堂などが見つけられる。なかなかどれも魅力的なのだけど、一際引かれたのが「かつ屋食堂」という小さな店。
 間口一間ほどで表に紺色の大きな暖簾がさがり、大きく食堂とある。
 ちらちら見える店内ではオヤジさんがなにかを揚げているのが見える。

 市場巡りの後で腹がペコペコなので思わず、重い暖簾をくぐる。
 奥行きもなく小さな店だ。
 厨房が丸見えの、そんな距離感がうれしい。
 他に客はひとりだけ。
 こんなときどこに座っていいものやら、うろうろ。
 結局角に座ったのがよかった。

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手前がヨシエビ、奥が「あかしゃえび(アカエビもしくはモギエビ)」

 目の前には甲だけを取り去った「あかしゃえび(アカエビ)」、ヨシエビ、マアナゴの開いたものがある。
「これ天ぷら用ですか?」
「どれでも言ってくれたら揚げますよ」
 このオヤジなかなか気さくで優しげだ。
 それでとにかくお茶をもらい。
 「あかしゃえび(アカエビ)」、アナゴを揚げていただくことにする。
 後はご飯とみそ汁。
 先にやってきたみそ汁がよかった。
 愛知ならではの豆麹豆味噌、そこに里芋、分葱などが入っている。
 この里芋入りというのがうれしい。

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 天つゆをどっぷり浸した、「あかしゃえび(アカエビ)」がうまい。
 足の部分が香ばしい。そして甘味がある。
 アナゴは小振りだけど、これも揚げたてなのでいい味だ。

 天ぷらを堪能していたら、オヤジさんが串ものを揚げている。
 2本揚げて、鍋にどぼっと漬けて皿にいれて隣のお客に。
「それなんですか?」
「ええ、これはただの串カツです」
 奥の客が「コイツ、串カツも知らないのか」と驚いたようにこっちを見ている。
 面白いので、これもお願いする。
「みそとソースどっちにします」
 当然、名古屋だからみそに決まっている。
 やってきたのが黒く染まったカツ。

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 細長く貧乏くさい外見ながら、なかなかうまそうな。
 やっぱり無造作にかぶりつくといい味わいだ。
 豆味噌(三州みそ)で作ったタレに酸味があり、微かに渋いのがいい。
 なかの肉は豚らしいが、あんまり細いので存在感にかける。
 ついついカツの衣だけがひっぺがれる。

 さて、オムレツからラーメンなどもある「かつ屋食堂」での支払は地物のエビ、マアナゴなどあれこれたのんだせいで1400円なり。
 本当はラーメンや普通の定食にすると600円くらいで腹を満たすことができる。
 そんな店だから市場関係者らしき人が後から後から慌ただしく食事をして、大急ぎで去っていく。
 お客の注文に小柄なオヤジはきりきり舞してフライパンを振り、麺をゆでて、天ぷらを揚げている。
 ああ、なんだか名古屋に来ているという実感が湧いてくる。
 そんな食堂なのである「かつ屋食堂」は。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 最近の築地行は仕事がらみが多い。
 それこそ魚まみれとなって、いろいろやっている。
 この日は、朝2時から荷受けを見て回り、午前11時にやっと仕事が終わる。
 疲れたというよりも、魚貝類を見すぎて魚貝類から少々離れたくなった。
 そこでお昼ご飯をとるべく引き戸をあけたのが『江戸川』である。
 なんとなく「ラーメン食べたい」と選んだ『江戸川』だが、この日の築地の体感温度は40度以上。
 額から、頬から、汗が噴き出し、ポロシャツがびしょ濡れ状態になっている。

 そこでこれも定番の肉豆腐と、さっぱりしらすおろし。
 みそ汁はアサリにした。
 疲れ果ててとても「つきじろうする」気になれなかった。
 ちなみに早朝、これから場内というときに『江戸川』でラーメンというのがいい。
 それからすると『江戸川』の一品料理、肉豆腐などは平凡だと思う。

 ただ疲労困憊していると、このような平凡な昼飯がいい。
 肉豆腐の牛三枚肉は適度に軟らかく、そして煮汁は甘め。
 豆腐もそんなに煮染まっていないところがいい。
 アサリのみそ汁は絶品だったのだけど、疲れているときに濃いめだから、よけいうまかったのかも知れない。
 しらすおろしは注文して、一口食べて後悔。
 たっぷりお新香にすればよかったなー。

 最近思うことだけど、疲れているときにはうまいものはダメだな。
 適度のうまさ、適度のまずさ、平凡な味に癒される。

 こんど築地王さんや、つきじろうさんに会ったら聞いてみたい。
「江戸川のよさは平凡であること」ではないかと。

春は築地で朝ごはん
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
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 美保関定置の水揚げを見て、帰港。
 選別を見終わったのが午前7時前後。
 終始雨の中。
 湿度100パーセントで、なま暖かい。
 不快指数は個人的には最大値である。
 定置網の水揚げを見ている間にも近所の料理屋、旅館、民宿などから魚を買いつけに来る人が雨にもかかわらず多々ある。

 これを見ていて、ふと漁協の女性に
「このあたりで朝ご飯食べられるところありませんか」
 まずないだろうと思っていたら、
「ありますよ。あさひ館ならやってるでしょう」
 その水揚げの場からひょいと目をやると「あさひ館」はあったのだ。
 同行していたダイコク様が
「朝ご飯やってるかどうか見てきます」
 雨の中を店内に入ったダイコク様はすぐに出てきて手をふる。

 すぐにボクも走ったのである。
 とにかく雨具を脱ぎたい。
 店内に入ると熱い番茶が待っていた。
 この番茶は島根県ならではのもの。
 関東でのほうじ茶のたぐいである。
「刺身定食でいいですよね。千円です」
 ダイコク様が念を押してくる。
 もちろん漁港での朝ご飯は刺身に決まっている。

 美保関は観光地である。
 風光明媚、街並みの美しさ、また美保神社の建物としての美しさもあって国内でも特筆すべき観光地と言っても過言ではない。
 だからうまい朝ご飯が食べられるか、少々疑問が湧いてきた。
 この国の観光地の食事には絶望的なものがある。
 とくにグルメリポーターとかが紹介するたぐいのものは最低である。
 せっかく見事な地魚がとれているのに中心にあるのがアイスランド産の甘エビ(ホンホッコクアカエビ)だったり、ヘタクソに解凍したマグロがあったり。
 これをテレビ番組などでは賛美する。リポーターが驚いた振りをする。まことに醜い光景だ。卑しさを感じる。

 そんな物思いにかられているとき、一皿目がやってきた。
 イサキの煮つけだ。
 塩焼きが定番だけど、煮つけもいいね。
 よくみると切れ目のあたりの肉がパツンと盛り上がっている。
 よほど鮮度のいいイサキを使ったに違いなく、当然とれたのは目の前の定置網に違いない。
 もずく酢、わかめのみそ汁、たっぷりの漬物に梅干しがついている。
 そしてスズキとコウイカらしいイカの刺身がきた。
 煮つけを一箸。
 思った以上に上手に煮ている。
 とてもいい味である。
 いい素材を殺さぬように、ご飯に合うように、適度に薄味なのがいい。
 刺身は大盛りじゃないけど、びっくりするほど新しい。
 イカなどは透明感があって硬いのである。。
 島根県独特のやや甘めの溜まり醤油が残念と言えば残念だ。
 それにしても定置網を見た後に食べて、そのまま定置網の魚を思い返すことが出来る。
 たまり醤油をつけてご飯と食べても、穀物の甘味と魚の甘味が相乗効果を生み出す。
 また、みそ汁に入っていたワカメがただものではない。
 シコシコして歯触りがいい。
「このワカメ天然でしょう」
「そうです。そうです。ウチはその前の海でとれた天然ワカメを漁師さんにとってもらって一年を通して使っているんです。
 この朝ご飯はなかなか出色のものであった。

 さて、観光地の食事は最低だ、と書いてきた。
 でも、こんな朝ご飯が食べられる美保関は例外かもしれない。
 こんど一人っきりで一泊してみたくなる。

2008年6月21日
あさひ館 島根県松江市美保関町美保関554
松江市観光協会美保関支部
http://www.mihonoseki-kankou.jp/

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 とても、つきじろうできない(つきじろうするの否定形)。
 後悔の念がうっすらと浮かんでくる。
 たぶん十年以上ぶりの「八千代」来店である。
 勢い込んでホタテとアジフライを注文したとき、アナゴのフライは面白いよな、と追加したのだ。
 このてんこ盛りのフライに圧倒されて、
オヤジ殺し フライを食べ過ぎ 脳溢血
 ふと、こんな一句が浮ぶ。

 でも、つきじろうさんなら、これに加えて白いご飯にカレーをかけてもらうという。
 そんなの無理。
 しかも、本気で“つきじろうする”なら食後のデザートに「センリ軒」でカツサンドを買い、食べながら築地場内を歩かなくてはならない。
 やっぱり“つきじろうする”のは無理だ。

 最近では築地場内の食い物も上品になってきた。
 例えばその最たるものが「八千代」ではないだろうか?
 その昔、「八千代」のフライは油っこかった。
 それこそ労働者(寅さん風に)でなければ気持ち悪くなるような、代物だった。

 それがホタテフライを一口かじって、明らかに大きな変革を遂げているのに気づく。
 ほとんど油っこくない、香ばしい。
 山盛りのフライが驚異ではなくなる。
 アジフライもうまいね。
 冷凍なのか、生なのかはわからないがとても味がいい。
 そして注目のアナゴフライだが、これもうまい。
 でもうまかったのは半分まで、あえて言えばうまかったのは范文雀(こんな洒落今じゃ誰もわからないだろうな)。
 アナゴのフライというのは意表をつくものだが、意外やうまいのである。
 マアナゴは脂がのっている割に味わいが淡白だ。
 そこを衣で包んであげるというのが大正解。
 しかし、「八千代」のアナゴフライは太く長い。
 やっとシッポを食べ終わったときには息も絶え絶えだった。

 ここで救いなのが、うまいみそ汁と、お新香。
 やっぱり「八千代」は飯屋として優れているのだ。

つきじろうの春は築地で朝ごはん
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