2007年3月アーカイブ

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 外見からして誰が見てもチェーン店。ここまであからさまに「らしい」ととても入る気にならない。でも中途半端な時間に仕事を終えて「伊峡」も「さぶちゃん」も閉店していたという状況で、あえてその拒否反応を抑えて入る。
 店に入ると食券機。そこにあるいちばん安いのが「尾道らーめん」650円である。本来若い世代の街、神保町では一際高めの価格である。ボクなども懐の寂しいお父さんなので、「本当に650円の価値あるんだろうね」と食券を買ってからじっとりと思う。
 そして目の前に、それほど待つこともなく、やって来たのが「尾道だから煮干し、そうだ煮干し出汁の醤油ラーメン」である。この出てきたものに迫力というか、「作ったぞ、さあ食べてみろ」という迫力はゼロ。こんなところが、やっぱりチェーン店の悲しさだ。
 そしてひとすすりするに、これが意外にうまい。煮干し出汁の取り方も合格だし、麺が中太なのも、クチナシで黄色いのもいい。メンマとチャーシューはどうでもいいというさりげない代物ながら「ラーメンとしての完成度」は高い。
 ではまた来店するかというと、「困ったときには入ってもいい」というレベルを1ミリも超えていない。だいたいスープの温度が低いし、味わいのバランスがとれている割に、それ以上もそれ以下の部分も存在しない。まったくつまらないラーメン、たぶん「誰が食べてもうまいもん」を目差してよくできた商品を開発したような味だ。ボクはこんなものはどうしても受け入れられない。
 同系列のチェーン店にも良し悪しがでるだろう。当然、「柿岡や」にも優れた店がありそうだ。でもチェーン店でなにが嫌かといって「優等生前後の店」がいちばんつまらない。

柿岡や 東京都千代田区神田神保町2-14-9
株式会社 太魯閣
http://www.taroko.co.jp/kakiokaya/index.html

『さぶちゃん』『近江や』『キッチングラン』は3兄弟である。そのなかでもっとも利用回数が少ないのが『キッチングラン』だと思う。だいたい学生時代には一度も入っていない。お茶も水界隈には明治、専修、中央、東京電気、それに大原簿記学校、アテネフランセ、文化学院、お茶美、など数知れずの学校があって、それぞれに微妙な縄張りがあったように思う。この靖国通りから白山通りを水道橋方面に曲がるというのが、ボク達の学校からすると、やけに遠く感じた。

 初めて入ったのは仕事を始めて数年経ってからである。知り合いの古本屋店主が夕ご飯を食べに行くというので、のこのこついていった。そこで食べたのがメンチカツだったが、やや量的にももの足りなかった。知り合いの古本屋が注文したのはセットメニューというやつで、「さすがは常連」だと感心する。それから10年単位で2回、3回食べに行く程度。忘れた頃に入る店というのが『キッチングラン』なのである。だから神保町怖い顔三兄弟でも、この店のオヤジだけ顔が浮かばない。

 今回、夕食を食べる気になったのは、この店が長い間しまっていたためだ。それにかれこれ10年近く店に入っていない。その素っ気ないサッシのスイングドアを久しぶりに入っても、初めて入った気分である。厨房には三兄弟にしては若すぎる男性。どうもこの店は代替わりしてしまったようだ。

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 今回初めてハンバーグ、そしてショウガ焼きセットにする。これがちょっと失敗であった。記憶が正しければメンチの味はいいのである。それがハンバーグは焼き置きしたものであるようで、味は悪くないが、からめたドミグラスソースもなんだかうまいものではない。ついでにショウガ焼きも平凡だ。ただしつけ合わせのせん切りキャベツ、ヘナっとした酸味の薄いナポリタン、こう言うのが大好きなので、この定食の評価は低くはない。そう言えばナポリタンは茹ですぎて冷めてヘナっとしたのがいい。田舎の国道沿いの喫茶店なんかでエイヤ! と真面目に作ったのが出てくるとがっかりする。ナポリタンを神保町・お茶の水族が一品として注文するのは『さぼーる2』だけだ。

 今回改めて思ったことだけど、この店のよさは、この平凡さにあるようだ。ちなみにボクの知り合いには幾人もの、この店の常連がいる。考えてみると彼らからも特別この店の味の話が出たことがないのだ。これなど須田町の『松栄亭』とは対照的だし、また『キッチン南海』のカツカレーのような特筆すべきメニューもない。この店にあるのはいたって普通の昔ながらの洋食屋然としたところ。そこが多くの常連を惹きつけている。そんな気がするのだ。

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 八王子綜合卸売センター『フレッシュフーズ福泉』にはときどき不思議なものがくる。本来塩干、冷凍食品、お総菜の仲卸なのだけど、店主のフクさんが若いということもあり、「アレレ?」とか「面白い!」なんて感心するものが並んでいる。

 本日の“珍しや!”は「横手焼きそば」というもの。秋田県横手市といえば一度だけ行ったことがある。石坂洋次郎が好きなので記念館に行ったり、みそ醸造所を見つけてたっぷり買い込んだり。そして、あの町ではなにを食べたのかな? 思い出そうとするがまったく記憶にない。これを2袋買い込んで、「そうか焼きそばが有名だったのか」なんて改めて思うのである。それでネットなどで調べると、この「横手焼きそば」というのに特徴らしいものが見あたらない。あえて言えばソースが薄口だというくらいか?

 さて焼きそばのルーツとはなんだろうか? 関西では明らかにお好み焼きの一種、すなわちお好み焼き屋の品書きのひとつという認識がある。お好み焼きは1948年にオリバーソースが初めてトンカツソースを作ってから現在の形になったもの。だから焼きそばも戦後になって出来たのだと思う。ちなみにボクが初めてお好み焼き屋に入った1960年代には徳島県貞光町にもたくさんのお好み焼き屋があったものだ。そこには「うどん焼き」はあったが「焼きそば」があったのかが記憶にない。確か1960年代後半、東浦に「新田」という店があってそこで初めて「焼きそば」を食べた記憶がある。そこで使っていたのもどろっとしたトンカツソースらしきもの。どう考えても基本的には焼きそばには濃度の高いソースを使うものなのだ。だから確かに薄口ソースを使うというのは珍しいのだろうか? でも一般家庭では焼きそばに薄口ソースというのは珍しくない。そうすると「横手焼きそば」というのものの個性は弱々しい。

「横手焼きそば」というものの特徴がつかめないまま。林泉堂の「あつあつ亭の横手焼きそば」の袋を破くとクチナシで黄色く染まったゆで麺とゆるゆるの薄口ソースが入っている。あとは肉とキャベツを炒めて作るだけだから、ソース以外はまったく普通の焼きそばである。でも家庭で焼きそばを作るときにいちばん失敗するのが焼き加減では粉っぽくなること。それが、このゆるゆるのソースを焼いた麺に搦めながら炒めるとまったく粉なっぽさが感じられなくなる。つまり作り方が濃度の高いソースを使うものや粉末のものより簡単なのである。そしてこのソースだが甘さが控えめながら、なかなか酸味も旨味もスパイスも程良くうまいのである。当然出来た焼きそばもうまい。これは一人っきりの夕食やお昼ご飯には満足感もあり、もってこいだ。

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 これで卸値からすると定価が2食で300円前後とすると林泉堂という麺の会社はなかなか優秀ではないだろうか? そうか横手は麺どころだったのか?

やきそばの街横手
http://www.yokotekamakura.com/12-yakisoba/F-ATTEN.htm
林泉堂
http://www.rinsendo.com/default.htm
オリバーソース
http://www.oliversauce.com/profile.htm
八王子魚市場に市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html

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 八王子魚市場で見つけたもの。最近、ここには面白いものがよくくるのだ。
 パッケージはやや野暮ったい、そこに「北の麺職人」とあってこのざっかけなさになぜかしら惹かれるところがある。それでついついたっぷりと買い込んできた。
 そしてさっそくお昼に食べたら外見の無骨さ通りにうまいのである。
 しょうゆ勝ちの旨味のあるスープ、そこに腰のある乾麺。これなどインスタントラーメンとしてもとても優れている。最近は困ったときにはこれを出してくる。驚いたことに、とりあえず食べる濃厚な味わいの「北の麺職人」が夕食に食べても満足度大。下手な大手メーカーのインスタントラーメンが霞む味わいである。
●このメーカーのホームページはダメだな。もっと情報を伝えるということに努力を注ぐべし

マルワカ食品
http://www.maruwaka-food.com/

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 名古屋に初めて行ったのが30年ほど前。そして確かに食べたと記憶するのが名古屋駅から歩いていけるところにある、どうやら『矢場とん』の大須の本店であるようだ。東京の予備校で知り合った女の子がなぜか名古屋の学校に受かり、ちょうど1年半たったとき「帰省するときに名古屋に寄ってよ」といわれて人生がバラ色に輝いた。可愛くて美人で、ミニが似合うボクには憧れの女性だった。ウキウキしながら名古屋駅で帰省の途中下車。
 そして出迎えてくれた彼女は別人だった。
「太ったでしょ」
 なんてもんじゃない。
 テレビ塔、名古屋城へ行き、彼女がボクを連れて行ってくれたのがみそかつの店。彼女は丼、ボクはデカイとんかつ、今思えば「わらじとんかつ」を食べた。
 たっぷり食べて、改めて彼女を見てみるに、ほんの1年と少し前、新宿駅で別れたときの面影が幻のようである。そう言えば天地真理というアイドルがいたのだが、久しぶりにテレビで見るとまるで猪八戒のように変身していた。それと同じ衝撃だった。よほど名古屋の食い物が旨いのか? もしくは受験勉強のストレスを名古屋の食で癒したのだろうか。
 でもそんなことは置いておくとしても、みそだれのかかった「わらじとんかつ」はボクにはとても新鮮で、甘くて旨かった。
 ちなみにそれから愛知県で3回ほど、みそかつを食べている。それがぜんぜんうまくなかったのだ。ソースかけて食べればよかったとしみじみ後悔したのは常滑駅前の店。ここのは甘すぎて、食いしん坊のボクが残しそうになった。

 それからたぶん30年振りの『矢場とん』である。連れは千葉の海人つづきさん。築地の東都グリルでさんざん飲み、会話が楽しすぎて固形物をほとんど食べていない。なんだか胃の腑が寂しーくて仕方ない。うまい食い物屋を求めて歌舞伎座から有楽町方面を目差して、なんとなく路地に入ったら豚のカンバン。まあこれが派手なもので一瞬引いてしまう。でも『矢場とん』の文字に文字通り引っかかって入りたくなる。
 入った店内のなんとも味気ない作りであることか。そう言えばこのような変にモダンな店舗が名古屋アタリには多い。この時点で少しずつ30年も前のことが頭に浮かんできていたのだが、本当にここはあのデカイとんかつの屋の支店だろうか? 2階の席について当然の如く「わらじとんかつ」を注文する。


 出てきたものには微かに記憶がある、「確かこんな感じだった」。でも久しぶりの、みそかつがやっぱり旨くない。みそだれが甘すぎるのだ。これは愛知県独特の豆味噌にしょうゆやみりん、砂糖で作り出したものだろう。これが甘くて、間違いなく“うまいとんかつ”の味がわからなくなっている。ほんの少しでもいい、もう少し塩辛ければ旨いはずだ。どうしてこんなに甘いんだ。

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 さてボクは名古屋の味が決して嫌いではない。「ミラカン」「天むす」「みそ味のおでん」、また八丁味噌自体も好き。新幹線ホームのきしめんも『山本屋(間違っているかな)』の「みそ煮込みうどん」も大好き。あと津島市で買った「ふなみそ」もよかったし、豊川の鰻丼も旨かった。
 でもときどき「ごっつい甘い」のに出くわして面食らうことがあって、『矢場とん』のは甘味があっさりしているのだが、とんかつというものの媒体(タレ)としては「甘い=辛さよりも控えめでなければならない」という絶対的な原則から大きく外れている。ではまったく受け付けないかというと、そうでもなさそうだ。「たまに食べたくなるんじゃないかな?」とは思うのだ。
 だいたい今回は朝から昼過ぎまで築地の東都グリルでさんざん日本酒を飲んでいる。普通は昼には「ビールくらいにしておくでしょ」とは思ったのだが、“いけない”きんのり丸さんが「日本酒にしましょう」というものだからついついぐいぐいやってしまったのだ。その上、目の前にいたこれまた“いけない”ヒサマツさんがどんどん注いでくれる。いけない、いけないと思ってもついつい日本酒が喉を通りすぎるのだ。その後の『矢場とん』だから、「旨くなかった」というのは「日本酒をがばがば飲んだ後には旨くなかった」と言うことかも知れない。また行ってみるべきかなー?
矢場とん
http://www.yabaton.com/

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 富士吉田の「うどん」を食べ歩いていて、こまるのが多くの店が昼過ぎには終了してしまうことだろう。そんなときに茶饅頭を買いに立ち寄った店が食堂も兼ねていて、うどんも品書きに並んでいる。
 寒いし疲れたのでとにもかくにも入ってしまったという店である。入ると右手に厨房。厨房に窓が開いている。左手に小上がりの座敷。すばり「吉田うどん」というのがあり、少々はいったのを後悔する。この手のやり口は嫌いなのだ。

 それでもきつねうどんの味わいはなかなか悪くない。どことなくあか抜けないがしょうゆ風味の勝った濃い煮干し出汁の味わいがいい。また手塩皿に盛られた山椒風味の薬味が何とも言えずうまい。
 ちょっと店の雰囲気からして富士吉田でうどんを食べると言う向きにはもの足りない店ではあるが、ここに富士吉田うどん界の底力を見てしまった感じだ。

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べんけい 富士吉田市下吉田805

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 九州大分には「ゆずこしょう」という名産品がある。これはユズの皮、青唐辛子をすり下ろして、塩をくわえて混ぜて発酵させたもの。これを刺身や湯豆腐のときにちょっとつけると素晴らしい香りと辛みが楽しめていいのである。
 今回のものはユズの替わりにカボスを使ったもの。ユズの香りは強く、やや甘ったるい。それに比べてカボスは香りに甘さがなく、より青味を感じるのである。ボクはユズを使ったものよりも、どうやらカボスの方が好きらしい。
 ときどき富士吉田を無駄歩きするようになって、当然食べるのは“うどん”となる。釜揚げあり、ふつうのかけありで吉田のうどんは多彩なのだけれど、必ず添えられるのが唐辛子みそ、もしくは山椒みそである。これいいなと思っても買ってこれるわけでもなく、あれこれ思案していたときに見つけたのが「釜揚げうどんをかぼすこしょうで」というもの。これがなんともうまいのである。我が家ではカツオ節をきかせた汁を作るのだが、それが無用というほどに充分旨味がある。

大分みどり農業協同組合
http://www.ja-oitamidori.jp/index.html
八王子綜合卸売センター「伸優」
http://www.shinyuu-ok.com/

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 北区十条の商店街はまことに活気があり、歩いていて楽しい。その上、夕暮れどきともなれば、かの「斎藤酒場」が待っているのだから“街歩きと、軽くいっぱい”がセットになったボクの大好きな無駄歩きコースのひとつになっている。

 そんな十条で酒をのむ前に、ちょっと腹ごしらえというので入ったのがこの店。何度か歩いてみて、十条にはうまそうな定食屋などはあるものの、軽く食べる店がなかなか見つからない。さっぱり系の、できれば東京ラーメンといったものを探して行き着いたのがここなのである。しかも値段が手もみ麺で380円!
 この『福しん』、オヤジとして入りやすいのと、入り難いののちょうど中間の店構え。「福しん」の文字が今風に変に遊んでいないのがいい。実際に入ると非常に狭い。面白いのは客席と従業員のいる内側・床面の高さが同じであること。座ると従業員のお姉さんを見上げる形になる。

 そう言えば、板橋にも「手もみで380円」という『新しん』という店があった、関係あるんだろうか?
 待つほどもなく、いたって平凡な、ボク好みのラーメンがきた。やや濁りのある醤油系のスープ。麺は中くらいの縮れたもの。チャーシューの上にメンマが散らばって、その上に海苔と貝割れ菜、どことなく投げやりな造りだ。またラーメンに貝割れ菜というのは、どう考えても合わない。これなど「野菜もとらなければダメよ」という下町人情の現れなのだろうか? でもこの店はどう見てもチェーン店だ。(後でホームページを見たら池袋を中心に展開することが判明)

 さて、せわしなくすするスープがやや甘い。濁りを見て予測できたものだが、どこか、しっかりしない味わい。ここに中太麺がくると余計に味が惚けて生ぬるく感じる。加うるに具が薄い味付けのメンマやこれまた薄いチャーシューであるから、けっしてうまいものじゃない。
 これは同じ「380円」でも板橋の『新しん』の方が明らかに上である。先に『新しん』に行かなければ、これで充分に満足できたかも知れない。なにしろ380円なんだから。

 店を見回して気がついたのは、ラーメンを食べているのがボクだけだということ。しかもお隣のレバニラ炒めがうまそうだ。入り口近くアールになったところの女子高生もご飯とショウガ焼きかなんかを食べている。ほどなくオバサンふたり、レジ袋をいっぱい下げてさがさせながら入ってきた。そして注文したのが麻婆豆腐、餃子。またまたレジ袋を下げたお婆さんがご来店だ。そのお婆さんはチャーハン。どうもこの店、ラーメン店というよりも中華料理店である。世田谷や多摩地区ではこの手の店にオバサンや主婦が入ってくるのは珍しい。よく見渡すと主婦、若い男性客、高校生と客層がバラバラである。これなど店の持ち味なのだろうか? それとも十条という街の持つ特徴かな?

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福しん
http://www.fukushin.info/

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