2007年11月アーカイブ

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 市場でなにがうれしいかと言って食堂が健在であるということではないだろうか? 食堂などに詳しい遠藤哲夫さんは本来の食堂の基本を和洋中のごったまぜにあるといているように思える。その見解にボクも大賛成で本当に空腹な状況を癒してくれるのが食堂であり、その優しさに単純に感激するのが食堂人とも言える。ボクは間違いなく食堂人だな。

 だいたい食堂が生まれた大正から昭和期に「食堂」という名称は、いろいろ様々な食を楽しめるという意味合いもあったと思われる。
 それなのにどうだろう、都心を始め食の分業化が進み、やたらその権威を見せびらかすようなみっともない飲食店が増えてきているではないか? 五十路のボクが言うのもなんだが、店側がこだわりや、客に押しつけがましいことを言うのは千年早い。不届きものめ!

 そんな食堂がまだまだ健在なのが市場なのであり、船橋中央卸売市場には10店舗にあまる食堂が元気いっぱいで営業している。その店店を探検するのがまことに楽しい。

 今回は姫が一緒なのでなかなか店選びが難しい。「ここでいいかな」と聞いてもなかなか首を縦に振らないのだ。そろそろしびれを切らしたところで姫が決めたのが『福田屋』だった。
 どうやら中で働いているオバサン達をみて決めたらしい。

 そのカウンターだけの店内はいかにも市場人のためのものらしく慌ただしい。ゆっくり食べるという雰囲気ではない。ここでボクは銀だら煮つけ定食、姫は定番のラーメン。

 銀だら煮定食にはコロッケも着いてきて800円くらいだったろうか、そしてラーメンが500円。この銀だらの煮つけの甘さ加減がいかにも千葉県らしく重い。そしてみそ汁の辛さ。これは明らかに市場人のための腹空き定食であり、後から来る人の多くが「大盛り」を注文していたのが、またそれらしい。

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 そんな煮つけ定食はおくとして脇の姫がおかしい。
「父ちゃんこれ食べてみな」
 ラーメン丼をこちらに寄こす。その味わいが微妙なのだ。
「スープはうまいね。でもどこかおかしいだろ」
 姫の言うことがわかりすぎるくらいにわかるのだ。なんだかしっかりしない味だけどスープはおいしい。結局姫は最後まで食べてしまった。でも首を傾げてしまっている。

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 だいたいラーメンというのはスープと麺の調和なのだけど、福田屋のはそれが出来ていない。でもまずくはない。こんな不可思議さも市場ならではだろう。だいたいラーメンというのはわかりやすくてはダメなのだ。

 しかし福田屋の品書きを見てもなかなか楽しい。チャーハンオムレツ、当然煮魚に刺身もあり中華麺類各種。そして千葉県名物の「焼きそば」もある。

 さて船橋中央卸売市場関連棟での食事は毎回満足至極なのだ。値段も安いし、多彩だし。船橋市の方は明け方に突然腹空きに悩まされたら市場に急行するといいのではないか? 遠く多摩地区に生きるボクは思うのである。

船橋中央卸売市場関連棟
http://www.funabashi.gr.jp/ichiba/

 世の中おかしいんじゃないの? と思うのは築地場内飲食店を歩いているとき。とにかく本来は市場人が仕事帰りにちょいと休んでいくときに立ち寄るのが場内の食堂の役割だった。それがねー、場内の飲食店は外人さんや一般人(市場よりも築地グルメに感心のある人々)がそれこそ群生していて、とてもその筋の方は近寄れない。ちなみにボクもここでは空腹感を満たしたいわけで「グルメを気取りたいワケじゃない」、まあその筋の人に近いわけだ。
 たぶん今や人気絶頂の『大和』や『鮨文』なんて絶対にその筋の人は入れないところになってしまっている。それにそれにそれにボクが場内に入り始めた20年前にはなかった店が多いな。

 ちなみにボクの20年来の築地行きは珍しい魚貝類を見て採取するのが目的であり、「築地でグルメ」というのは縁遠いものだ。その築地通いのなかでも『洋食たけだ(この店名、今回初めて認識した)』ではよく空腹を癒したものだったはず。例えば大物(マグロ)の競りを見る。荷受けの荷を見るとちょっとした空き時間が3時から5時に出来る。とすると、早朝から開いている店でたっぷり食べられてとなると限られてくるのだ。よく食べていたのはタンメンとか、この店の揚げ物の盛り合わせとか。

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行列は『鮨文』のもので『洋食たけだ』は比較的市場人の店

 不思議なことに3時過ぎに築地に着いてウニの競りなんか見て、と走り回ると異常に腹が減る。となるとこの店の揚げ物がうまいんだー。何種類か盛り合わせられるのだけど懐具合がいいと3種、4種盛り上げていただいたこともあった。

 ここで改めて書いておきたいのは、この店もそうだが築地場内の店が特別うまいわけでも、ましてや安いわけでもない。ボクが初めて築地場内に足を踏み入れたのは大学1年のときだから、かれこれ30年以上前。そのとき築地で働いていた友人のお父さんが場内でご馳走してくれたのだけど、店内の品書きを見た感想が「高いな」というもので、今考えると築地がよいの人がわざわざお高い場内で食べるのは、ほっと一息つきたいという付加価値があったからだろう。当時は店内のそこここでビールが見られた。友のお父さんも瓶ビール2本勝手にポンと明けて午前7時のビールが僕たちのコップにも注がれたのだったね。「うまかったかって」、「うまかった」なー。

 さて久しぶりに入る(かれこれ5年振りかな)『洋食たけだ』はまったく昔と変わりがなかった。というかそのままタイムスリップしたように昭和30年代のままだ。
 この店で注文するのは揚げ物2種盛り合わせ。これは追加したければいくらでも組み合わせを増やせるし、かなり割高だがお浸しや一品料理も足していける。でも何度この店に入ったのか思い出せないけど、一度も一品ものはお願いしたことがない。なぜなら揚げ物2種とみそ汁、ご飯で1000円前後もするからだ。

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 注文してから揚げて、待つこと暫し。出てきたのは築地場内でももっともあっさりしたフライ、アジとヒレカツだ。ボクはおもむろにご飯に福神漬けをのせて、大急ぎで食う。
 この店のフライは、「あっさり度」からすると都内でもかなり上の部類ではないだろうか? ヒレカツは軟らかく、肉の旨味もある。アジフライもこれほどかりっと香ばしいのは珍しいだろう? この食べやすさに場内を猛烈な勢いで駆け抜けた後では物足りなさを感じるほどだ。

 そう言えば、30代の頃は近くにある脂ギロギロベットリがうまかったのだ。ここ10年ほどついつい『洋食たけだ』を選んでしまったのは加齢のなせるわざだろうか? 寂しいものであるな。ボクにもその昔、神保町某洋食店でカツカレーと揚げ物の皿を並べて、まだもの足りぬ時があったのに……なー。

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