築地場内『洋食たけだ』

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 世の中おかしいんじゃないの? と思うのは築地場内飲食店を歩いているとき。とにかく本来は市場人が仕事帰りにちょいと休んでいくときに立ち寄るのが場内の食堂の役割だった。それがねー、場内の飲食店は外人さんや一般人(市場よりも築地グルメに感心のある人々)がそれこそ群生していて、とてもその筋の方は近寄れない。ちなみにボクもここでは空腹感を満たしたいわけで「グルメを気取りたいワケじゃない」、まあその筋の人に近いわけだ。
 たぶん今や人気絶頂の『大和』や『鮨文』なんて絶対にその筋の人は入れないところになってしまっている。それにそれにそれにボクが場内に入り始めた20年前にはなかった店が多いな。

 ちなみにボクの20年来の築地行きは珍しい魚貝類を見て採取するのが目的であり、「築地でグルメ」というのは縁遠いものだ。その築地通いのなかでも『洋食たけだ(この店名、今回初めて認識した)』ではよく空腹を癒したものだったはず。例えば大物(マグロ)の競りを見る。荷受けの荷を見るとちょっとした空き時間が3時から5時に出来る。とすると、早朝から開いている店でたっぷり食べられてとなると限られてくるのだ。よく食べていたのはタンメンとか、この店の揚げ物の盛り合わせとか。

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行列は『鮨文』のもので『洋食たけだ』は比較的市場人の店

 不思議なことに3時過ぎに築地に着いてウニの競りなんか見て、と走り回ると異常に腹が減る。となるとこの店の揚げ物がうまいんだー。何種類か盛り合わせられるのだけど懐具合がいいと3種、4種盛り上げていただいたこともあった。

 ここで改めて書いておきたいのは、この店もそうだが築地場内の店が特別うまいわけでも、ましてや安いわけでもない。ボクが初めて築地場内に足を踏み入れたのは大学1年のときだから、かれこれ30年以上前。そのとき築地で働いていた友人のお父さんが場内でご馳走してくれたのだけど、店内の品書きを見た感想が「高いな」というもので、今考えると築地がよいの人がわざわざお高い場内で食べるのは、ほっと一息つきたいという付加価値があったからだろう。当時は店内のそこここでビールが見られた。友のお父さんも瓶ビール2本勝手にポンと明けて午前7時のビールが僕たちのコップにも注がれたのだったね。「うまかったかって」、「うまかった」なー。

 さて久しぶりに入る(かれこれ5年振りかな)『洋食たけだ』はまったく昔と変わりがなかった。というかそのままタイムスリップしたように昭和30年代のままだ。
 この店で注文するのは揚げ物2種盛り合わせ。これは追加したければいくらでも組み合わせを増やせるし、かなり割高だがお浸しや一品料理も足していける。でも何度この店に入ったのか思い出せないけど、一度も一品ものはお願いしたことがない。なぜなら揚げ物2種とみそ汁、ご飯で1000円前後もするからだ。

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 注文してから揚げて、待つこと暫し。出てきたのは築地場内でももっともあっさりしたフライ、アジとヒレカツだ。ボクはおもむろにご飯に福神漬けをのせて、大急ぎで食う。
 この店のフライは、「あっさり度」からすると都内でもかなり上の部類ではないだろうか? ヒレカツは軟らかく、肉の旨味もある。アジフライもこれほどかりっと香ばしいのは珍しいだろう? この食べやすさに場内を猛烈な勢いで駆け抜けた後では物足りなさを感じるほどだ。

 そう言えば、30代の頃は近くにある脂ギロギロベットリがうまかったのだ。ここ10年ほどついつい『洋食たけだ』を選んでしまったのは加齢のなせるわざだろうか? 寂しいものであるな。ボクにもその昔、神保町某洋食店でカツカレーと揚げ物の皿を並べて、まだもの足りぬ時があったのに……なー。


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このページは、管理人が2007年11月 4日 10:33に書いたブログ記事です。

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