暮らしのなかの器・雑器・道具の最近のブログ記事

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 8月後半はなんといっても武内立爾さんの「べにや民芸店」の個展に気が向いてしまって、その方向性を変えられなかった。
 なぜなら武内立爾の作品にひきつけられたからだ。
 ただ見ているだけで、楽しい、そんな個展であった。

 今回の器は、非常に美しいものが多かった。
 昨年は力強い人間じみた個性を感じた。
 対するに今年は、自然が持っているものと同じような抗しがたいような魅力がある。
 その魅力を最大限に感じた深皿があって、それが我が家に来るとは今回ばかりは思ってもみなかった。
 喜びを感じるとともに、この器をいかに生かし切るかを思うと気が引き締まる思いがする。

 武内立爾さんに感謝。

酒津のホタルを親しむ会
http://sakadu-hotaru.jugem.jp/
べにや民芸店
http://beniya.m78.com/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
http://www.zukan-bouz.com/

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 武内作品が我が家に来てから、なんだか落ち着かない日々を送っていた。とにかく何でもいいから使ってみたい。でも平凡なものじゃだめ。それでは、最初に何を盛ればいいのか? かなり苦しんだ末に、最初の一品は我が家の家庭料理でいいのではないか? と思い至る。

 それで徳島県人である、ボクが、徳島県阿南市産干しえびの出しで、東京都日野市高幡不動そばの三河屋豆腐店の大がんもどきを煮る。
 干しえびは前の晩から、昆布とともにうるかして、翌日、ゆっくり一煮立ち。
 このだし汁に味醂、酒、薄口醤油、塩で味つけする。ここに油ぬきしたがんもどきを入れて、これまたゆっくりたきあげる。
 こんな単純な料理がいちばん気が抜けないもので、最後に蓮根を加えて、一煮立ち半。
 料理は平凡極まりないものである。この出色の大皿に見合うものだろうか?
 辰砂の赤に、あえてニンジンを加えないで作った、がんもどき、見た目はいかがだろう?

 がんもどきの味わいは、あまりに日常的なもの。がんもという材料よりも出しの味わいを楽しむ。この干しえびのたきものは、冬定番のもので、今冬最後となる。

●まだ日時は決まっていないが、武内立爾さんの個展が東京でも開催される。こうご期待。

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倉敷市酒津榎窯武内立爾作

 今回の長旅の締めくくりは岡山となった。当然といっては我が儘な話となるが宿泊は倉敷は酒津の武内家となる。
 そして前回と同じ布団を敷いていただいたのが陶器が置かれた部屋であり、今回、初めて感じたのであるが、作家ものの器というのは、夜明け前に一瞬、生命を得て、話しかけてくるのだ。

 まだ明けやらぬために蛍光灯の光で見る器は、青ざめて見えるが、その存在感が言語となって放出されてくる。いくつかの器が、「ぼうずコンニャクさんのところに行きたいわ」とささやいているのだ。
 そこで黙然と布団の上に座り込んで、じっくり武内作品と対話する。ボク好みの、また魚貝類を撮影するのに、欠くべからざる面々が机に上に並ぶ。この器が我が家に来ると、明らかに撮影する魚貝類の色彩、また表情が変ぼうして、ボクのカメラ人生も変わるだろう。

 我が儘至極であるが、友と見込んで武内さんに「この子達を連れて帰りたいなー」とお願いする。
 武内さんは「この子達が行きたいと思ってるんだからどうぞ」と快くうなずく。
 どうやらボクが単に器が「欲しい」と思っているわけじゃない、というのがわかってくれたようだ。
 武内さん、アンタは偉い!

 ほどなく届いた、器に、既に何度も戦いを挑み、ときに負けて、ときに勝つ。なんという楽しい時間であることか。
 この器を作り出した、生みの母である、武内さんに感謝。
 これからは、この器たちの父親として、心して生きていかねばならぬ。

 そう言えば、武内さんが生みの母で、ボクが育ての父なら、我々は夫婦と言うことになる。ちょっと気持ち悪いが、どうしてもそうなるんだから仕方がない。

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 山梨県富士吉田の廃業目前といった古い瀬戸物屋で見つけた飯茶碗。この絵柄がなんとも面白い。またこれが何という文様なのであるのか、あれこれ考えるだけでも楽しいものである。
 茶碗の表、中央にウネ状に盛り上がった綱のような輪、そこに結んだ紐を差し挟んでいる。何かの儀式のときに作る飾りなのか? もしくは神棚に供えるめでたい結びもの? それとも「綱と紐」というので何らかの洒落かも知れない。
 器としては非常に薄手。このような軽くて薄い磁器の茶碗というのは、たぶん昭和30年代以前のものではないだろう? 絵付からすると瀬戸のもの?
 ボクはこの骨董とはいかない現代物の、昭和、大正の安い生活雑器が大好きである。また廃業直前の瀬戸物屋を見つけると入らずに通り過ぎることなど、とてもできないのだ。

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