ラーメン・つけめん図鑑の最近のブログ記事

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 お茶の水駅から、駿河台をおりてすずらん通りをまっすぐ、白山通りを渡ったところを、さくら通りという。ここにはかつて戦前の映画界に名を残す東洋キネマ(20年くらい前まで建物が残っていた。映画館)があり、確か勧行場(文字間違っているかも、資料が見つからない)もあって戦後まで殷賑を極めたところであった。でも今は見る影もない。

 ボクがさくら通りに行くのは単に銀行に立ち寄るためであり、行きつけの古本屋があるではなし、とんと縁のない地区だ。時刻は5時を回っている。昼飯抜きなので腹が減って「どこでもいいから、飯が食べたい」という状況に陥っていた。でもこんなときに厄介なのは帰宅して魚貝類が待っていると言うこと。なにしろ365日、魚貝類を食べない日はない、という日常なので自宅には「食べなければならない魚貝類」が常に待っている。

 と言うことでラーメン屋を探す。探すほどのこともない。さくら通りの専修大学通り入り口角に一度も入っていない古めかしい中華料理屋があるのだ。当然、ボクが初めて神保町を歩いた30年以上前にもあったのだけど、このあたりは専修大学の縄張りなので一度もここで飯を食ったことがない。

 店は角地で外観からすると三角形じみて見える。入ってみるとこれが正方形に近い。薄暗い店内、古くなったテーブルが3つ、4つ。右手奥が厨房で、隔てる壁にたくさんの品書きが見える。ボクは当然の如くラーメンを注文する。ここには「半チャンラーメン」があるが800円以上もする。これは都内の中華料理屋の平均的な値段ではあるが、神保町では高い部類になる。

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 ほどなく来たラーメンは想像したごときものであった。すなわち中華料理屋のラーメンよりはちょっと上だろうと思われるもの。店の看板にある「中華そば」の文字にほんの少し期待していたのだ。豚ロースであろうチャーシュー、メンマにほうれん草。東京ラーメンでは必須アイテムである「なると」がないのが残念だが、醤油味のスープは明らかに昭和の味がする。スープは醤油の香りが強いがなかなかあっさりしてうまい。塩分濃度と旨味のバランスもいいではないか。ストレート麺がやや多めであること、やや粉っぽいことなどが欠点だ。麺を替えれば、これは旨い部類のラーメンではないだろうか。思ったよりも「上」のラーメンに満足して店を出る。

 夕闇迫り、帰宅を急ぐ人が行き交う。近所に品揃えは凄いが値段の点で折り合いのつかない『鳥海書店』がある。目の前には小さな酒屋があって、日本酒、焼酎の品揃えが素晴らしい。しかも仕事場からちょっと距離があるのがいい。ということで、「ときどきここで飯を食うのもいいな」と久々のさくら通りで思った次第である。

成光 千代田区神田神保町2の23

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 八王子を代表する食べ物に「八王子ラーメン」というのがある。起源は「八麺会」のサイトを見てもらうとして、昭和30年代(元号は嫌いだが、この場合西暦では雰囲気がでない)に八王子市子安に生まれたもの。特徴は「濃い醤油味と色、表面に浮いている油、そして刻み玉ねぎ、麺はストレート」というもの。その誕生とともに、もっとも古くから「八王子ラーメン」を提供していたとされるのが「初富士」だという。

 八王子市中野上町の「初富士」を探すのは大変である。市場仲間に「秋川街道からちょっと外れているけど、ガソリンスタンドの角を左に曲がればすぐわかるよ」と教えられて、市場からクルマで20分。その通りに曲がって、行けども行けども見つからない。そりゃそうだ、曲がってすぐをまた曲がるのであった。今回も事前にあまり調べるなんて面倒くさいので、行き当たりばったりにグルグルと回る。ついてきた姫が「もう諦めようよ」と言った矢先に店が目の前に現れたのだ。
 そこはまったくもって何の変哲もない住宅街。三度目の正直で見つけたのはいいが、外見は、これでも「もっとも古くから八王子ラーメンを出した店」なのかと拍子抜けするほど無機質な現代風の建物だ。
 ただし駐車場にクルマを止めてドアを開けた途端に期待が膨らんでくる。そこには香ばしい、濃厚な醤油の香りが漂っている。これなら店の周囲100メートルくらいにいても風向きによっては店に引き込まれそうだ。

 店内はそっけないけど真四角で清潔極まりない。さすがに猛暑日にラーメンを食いたいという人も少ないのか客はボクと姫だけだった。ボクは「中華そば大550円」、姫は「並450円」とする。
 ボクたちの直後に来店した人が「中華そば大に半ライス」と注文。そうだ「八王子ラーメン」にはご飯が合うのだ。たぶん「八王子ラーメン」にご飯をつける確率は男性なら60パーセントを超えているかも知れない。また「八王子ラーメン」を出す店の白いご飯が、みな美味でもある。
「ご飯たのもうかな?」と呟くと、姫が「おとう、ご飯禁止」だって。どうして娘が父上に命令するのか変だぞ、とは思うが蹴りが怖いので思いとどまる。寂しいな。

 店内は冷房がきいていて快適。姫など「ずーっとここで暮らしたい」というほどに気持ちがいい。これなら体内の溜まった熱気にラーメンの熱気をプラスし、外の猛暑と相まってのボロボロ状態にはならないですむ。
 
 ラーメン(中華そば)はなかなかこない。どうやらお客が少ないために茹で鍋の火を一時とめていたのだろう。かなりまたされて、チャキチャキしたオバチャンがよいこらしょとまずは大を、続いて並を持ってきた。
 丼の中にはかなり多量と見える透明な油。この油は豚や鶏肉からとるのだそうだが、詳細は不明だ。そしてなによりも特筆すべきは、太いまっすぐな麺がキレイに平行に丼の中で沈んでいること。その上に薄っぺらいチャーシュー、と海苔、メンマと刻みためネギを四方に従えて中央に鎮座しているのが、な、な、なるとだ。まるで、なるとが太陽であるかのように見える。ひょっとすると「原始太陽はなるとだった」のかもね。

 醤油の香りと共にスープをすする。これがなかなかうまいのである。味わいは柔らかく、いたって在り来たりな旨味しかない。そこに上乗せされてくるのが醤油の香りとうまみ。これほど醤油のうまみを感じるスープも少ないのではないか。気になるのが表面に浮かんだ油である。ここのは他の「八王子ラーメン」の店よりも多いように思える。これがボクにはちょっとうるさい。スープに満足していたら、本日だけのことかも知らないが麺が茹ですぎで柔らかい。麺が太いだけに、この茹ですぎがすすりこむと重苦しい。

 スープは100点、麺とかは30点というのが姫の評価。ボクも姫に賛同する。

 店を出るや否や熱風がまとわりつく。クルマのエアコンがまったく利かないほどに、八王子は熱帯と化している。その奈落のような状況で、腹はラーメンで満たされているのだが、けっして「もたれ」ているわけじゃない。どうやら「初富士」の中華そば、後味がよろしいようで……。

詳しいことは「さやぴぃのラーメンデータベース」へ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm

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 共栄会ビルの地下にはあまり足を踏み入れたことがない。だいたい築地場内しか回らないので、この築地4丁目界隈とは疎遠だったのだ。それが場外に長崎漁連直売所が出来てから、この変にメタリックな情緒のないビルの前も通るようになった。それでトントンと地下に下りるとボクの拒否反応を起こさせるような文字と、惹かれてしまう暖簾が目に飛び込んできた。まず拒否反応を起こさせたのは「バカウマ亭」という文字。そしてラーメンの品書きの多さ、御託の多さ。それに「鳴門は紀文」なんて意味不明なことも書いてある。まあせっかく下りてきたんだからと席につき無難そうな東京ラーメン醤油味600円というのを注文する。
 なかにいるのは身体の具合でも悪いのだろうか、やたら動きのぎこちないオヤジさんである。席について見回すと厨房内、店周辺がやたら汚い、散らかっている。また暖簾の前に椅子が並んでいて、混んでいるときには座って待てという文字も見受ける。この店そんなにうまいのだろうか?

 注文してから、ほとんど待つこともなくラーメンが来た。厨房の中ではオヤジさんがぜんぜんお湯を切らないまま、麺を丼に入れているのが見えて十数秒後である。これが普通の醤油ラーメンなのであるが具材がかなりユニークである。
 まずダメだと思ったのが貝割れ大根の存在である。なぜラーメンにこのピリカラ野菜なのか、そして鳴門の形がいびつ、そこに三角形の玉子焼き、チャーシュー、メンマ。なぜ? なぜ? このような組み合わせが考えつくのだろうか? 理解できない。

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 まあとりあえずはスープだ。これは平凡至極だがまずくはない。平均点確保といったところだ。そして箸ですくい上げた麺だが細縮れ麺で味がない。いくらすすっても麺に旨味を感じないのだ。これはスープとの相性の問題かも知れない。ちなみに具材のほうだが玉子焼きはどうにもいただけない。貝割れ菜は道を挟んだ有名店の真似だろうか? これも不要だな。鳴門も敢えて「紀文」と書いてなんになる。
 この店、これで600円ならたぶん二度といかないだろうな? ボクは苦手だ、この手の自己顕示欲の強いだけの店は。
 追記、この「つきじラーメン バカウマ亭」の隣が『伝承ラーメン 北都』である。表の看板を見ているとこちらの方がもっとうるさくてどうでもいいことを書いてある。ラーメンは店主のこだわりは隠すべし、うまけりゃ客はくるだろう。どうもこのビルは鬼門だ。

東京都中央区築地4-7-5 築地共栄会ビル地下1階

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 一頃、八王子のマグロ屋と一緒に築地に通っていた時期があった。競りの光景を見ていたのではなく値段に感心があったのである。だからマグロを見て回り値踏みし終わって、競りが始まるまでの小一時間、場内で食事をとっていた。そのときもっとも頻繁に食べていたのが「喜久」のタンメンである。
 この店に初めて入ったのは、そんなに古い話ではない。たしか10年ほど前に相対取引を見るために4時頃に、築地に行ったのである。エビ、ウニ、貝類などの売り場を歩き、荷物を積み込むとさすがに腹も減るし、疲れてくる。そのときの市場関係者が「朝飯食べましょう」と連れて行ってくれたのが「喜久」であった。
 ボクはトンカツで大盛りご飯が食べたい気分だったが、彼が注文したのがタンメン。「そうか、この店ではタンメンなのか」と素直な性格なので右へならえをして同じものにする。これがうまかったのである。寒い時期だし、腹が減っていたというのもあるが、食い始めから、最後のスープをすすりこむまでズーっとうまいうまいで、時間にして5分ほどだろう。あまりのあっけなさに「大盛りにすればよかった」と後悔しきり。それ以来、早朝の築地では「喜久」のタンメンということに決めてしまっていた。
 それから早朝に築地場内に行くこともなくなって久しい。「喜久」のタンメンも久しぶりだなと店の表までくると大和寿司の行列が長く、店の前ではその行列に加わるべきか悩んでいる風のカップルがいる。仕方なく今回は裏側から入って、どうした加減なのか「ラーメン」を注文してしまった。この店でラーメンを食べるのは初めてなのだ。

 築地場内の関連棟は細長い建物が川の字形に並ぶ。この細長い建物に長屋風に並ぶ飲食店では「一区画で入り口を決め、奥に厨房を置く、奥行きがなく店の左右が広いタイプ」と、「入り口を建物の両面にとり、細長くカウンターで仕切っている、奥が深く客席左右狭苦しいタイプ」がある。「喜久」は細長カウンタータイプの典型的なもの。建物のどちらからでも入ることが出来て、カウンターに座る。席に着くと、その後ろを通る人は壁にへばりつくように、また飯食う人は前のめりで通路を開ける、そんな努力が必要なくらいに店は狭苦しい。

 注文すると待つほどもなく出来上がる。この素早さが築地場内のよさなのである。

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 目の前にして驚いたのがラーメンなのにタンメンと同じ太い麺であるということ。スープは醤油味、チャーシュー、メンマ、たっぷり散らしこんだネギ。いかにもあっさりして軽そうだがスープにはしっかり鶏ガラの風味があるし、醤油味ながら塩分濃度もしっかり高い、これが太く旨味のある麺と調和して、味に余韻がある。この店ではタンメンと決めてしまっていたのを後悔するほどにボク好みの味である。これなら軽く2杯は食べられそうだ。しかも2杯食べても飽きがこないのではないか?

 久しぶりに築地場内で「当たりくじ」を引いた気分に浸っていると、なにやら店の前が騒がしい。暖簾の隙間からこちらを覗く集団がいて、これが最近では築地場内名物となってしまっている外国人観光客である。どうやら寿司屋に並ぶか、ここでラーメンを食べるかを決めかねているらしい。これに気が付いた「喜久」のお姉さん、「ラーメンはヌードルだっけね」。ドヤドヤと入ってきた団体さんに「ラーメンヌードル食べる。食べるの? OK?」なんて聞いている。それに常連さんが「ラーメンはアメリカでもラーメンじゃないの」なんて、これも不思議な光景であるな。

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 北野の八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合に近いのに一度も入ったことのなかった店。なにしろ外観はかなり引いてしまうもの。よくぞここまで低級なものを設計したものである。少々気持ち悪い。なんて思っていたら、これがまさに昭和の遺物なんじゃいという気もしてくる。
 まあとにかく入ってみると、まことに店員さんが気持ちの良い「いらっしゃい」で出迎えてくれる。女性二人、若い男性ひとりの明るい店である。そして遅い昼飯なのでとにかくラーメン。待つほどもなく出てきたのは、これがまさしく中華そばそのもの。
 鹹水の利いた黄色い麺、シナチク、海苔にチャーシューにお決まりのなるとである。ワカメは余分であるが、これはなかなかうれしい典型的なもの。そして味わいも微かに煮干し風味があり、スープがいい。気になるのは味わいがやや甘めであること。もっとストレートに醤油味のほうがいいかも。
 それでもこの『豊春』のラーメンはオヤジには魅力的だ。ときどき来ようかな!

豊春 東京都八王子市北野町581-4

八王子日野などのラーメンに関しては、ぼうずコンニャクよりも、さやぴぃさんの方が正確じゃ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm

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 外見からして誰が見てもチェーン店。ここまであからさまに「らしい」ととても入る気にならない。でも中途半端な時間に仕事を終えて「伊峡」も「さぶちゃん」も閉店していたという状況で、あえてその拒否反応を抑えて入る。
 店に入ると食券機。そこにあるいちばん安いのが「尾道らーめん」650円である。本来若い世代の街、神保町では一際高めの価格である。ボクなども懐の寂しいお父さんなので、「本当に650円の価値あるんだろうね」と食券を買ってからじっとりと思う。
 そして目の前に、それほど待つこともなく、やって来たのが「尾道だから煮干し、そうだ煮干し出汁の醤油ラーメン」である。この出てきたものに迫力というか、「作ったぞ、さあ食べてみろ」という迫力はゼロ。こんなところが、やっぱりチェーン店の悲しさだ。
 そしてひとすすりするに、これが意外にうまい。煮干し出汁の取り方も合格だし、麺が中太なのも、クチナシで黄色いのもいい。メンマとチャーシューはどうでもいいというさりげない代物ながら「ラーメンとしての完成度」は高い。
 ではまた来店するかというと、「困ったときには入ってもいい」というレベルを1ミリも超えていない。だいたいスープの温度が低いし、味わいのバランスがとれている割に、それ以上もそれ以下の部分も存在しない。まったくつまらないラーメン、たぶん「誰が食べてもうまいもん」を目差してよくできた商品を開発したような味だ。ボクはこんなものはどうしても受け入れられない。
 同系列のチェーン店にも良し悪しがでるだろう。当然、「柿岡や」にも優れた店がありそうだ。でもチェーン店でなにが嫌かといって「優等生前後の店」がいちばんつまらない。

柿岡や 東京都千代田区神田神保町2-14-9
株式会社 太魯閣
http://www.taroko.co.jp/kakiokaya/index.html

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 八王子魚市場で見つけたもの。最近、ここには面白いものがよくくるのだ。
 パッケージはやや野暮ったい、そこに「北の麺職人」とあってこのざっかけなさになぜかしら惹かれるところがある。それでついついたっぷりと買い込んできた。
 そしてさっそくお昼に食べたら外見の無骨さ通りにうまいのである。
 しょうゆ勝ちの旨味のあるスープ、そこに腰のある乾麺。これなどインスタントラーメンとしてもとても優れている。最近は困ったときにはこれを出してくる。驚いたことに、とりあえず食べる濃厚な味わいの「北の麺職人」が夕食に食べても満足度大。下手な大手メーカーのインスタントラーメンが霞む味わいである。
●このメーカーのホームページはダメだな。もっと情報を伝えるということに努力を注ぐべし

マルワカ食品
http://www.maruwaka-food.com/

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 北区十条の商店街はまことに活気があり、歩いていて楽しい。その上、夕暮れどきともなれば、かの「斎藤酒場」が待っているのだから“街歩きと、軽くいっぱい”がセットになったボクの大好きな無駄歩きコースのひとつになっている。

 そんな十条で酒をのむ前に、ちょっと腹ごしらえというので入ったのがこの店。何度か歩いてみて、十条にはうまそうな定食屋などはあるものの、軽く食べる店がなかなか見つからない。さっぱり系の、できれば東京ラーメンといったものを探して行き着いたのがここなのである。しかも値段が手もみ麺で380円!
 この『福しん』、オヤジとして入りやすいのと、入り難いののちょうど中間の店構え。「福しん」の文字が今風に変に遊んでいないのがいい。実際に入ると非常に狭い。面白いのは客席と従業員のいる内側・床面の高さが同じであること。座ると従業員のお姉さんを見上げる形になる。

 そう言えば、板橋にも「手もみで380円」という『新しん』という店があった、関係あるんだろうか?
 待つほどもなく、いたって平凡な、ボク好みのラーメンがきた。やや濁りのある醤油系のスープ。麺は中くらいの縮れたもの。チャーシューの上にメンマが散らばって、その上に海苔と貝割れ菜、どことなく投げやりな造りだ。またラーメンに貝割れ菜というのは、どう考えても合わない。これなど「野菜もとらなければダメよ」という下町人情の現れなのだろうか? でもこの店はどう見てもチェーン店だ。(後でホームページを見たら池袋を中心に展開することが判明)

 さて、せわしなくすするスープがやや甘い。濁りを見て予測できたものだが、どこか、しっかりしない味わい。ここに中太麺がくると余計に味が惚けて生ぬるく感じる。加うるに具が薄い味付けのメンマやこれまた薄いチャーシューであるから、けっしてうまいものじゃない。
 これは同じ「380円」でも板橋の『新しん』の方が明らかに上である。先に『新しん』に行かなければ、これで充分に満足できたかも知れない。なにしろ380円なんだから。

 店を見回して気がついたのは、ラーメンを食べているのがボクだけだということ。しかもお隣のレバニラ炒めがうまそうだ。入り口近くアールになったところの女子高生もご飯とショウガ焼きかなんかを食べている。ほどなくオバサンふたり、レジ袋をいっぱい下げてさがさせながら入ってきた。そして注文したのが麻婆豆腐、餃子。またまたレジ袋を下げたお婆さんがご来店だ。そのお婆さんはチャーハン。どうもこの店、ラーメン店というよりも中華料理店である。世田谷や多摩地区ではこの手の店にオバサンや主婦が入ってくるのは珍しい。よく見渡すと主婦、若い男性客、高校生と客層がバラバラである。これなど店の持ち味なのだろうか? それとも十条という街の持つ特徴かな?

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福しん
http://www.fukushin.info/

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 初めて入ったのはボクがまだお茶の水の学校に入学したばかりの頃。だから30年以上も前のことになるのだ。でもそれ以来、『さぶちゃん』にはとんと縁がなかった。たぶん暖簾をくぐった回数は数えるほどである。だいたい昼飯時には行列を覚悟しなければならない。どうしても『さぶちゃん』で食べたいという知り合いと一度並んだことがあるが、もう二度といやだと思ったものだ。古参の神保町族のボクとしては、この『さぶちゃん』で半ちゃんラーメンを食べるなら夕方がお勧めだ。

 赤い暖簾をくぐると、まことに店内は狭いのだ。狭いL字型のカウンターで仕切られた真四角な厨房。椅子に座ると神保町強面三兄弟のひとりとここで顔つき合わすことになる。神保町族なら誰でも知っていることだが隣の『近江屋』、『グラン』とは三兄弟で営むそれこそ兄弟店なのである。そう言えば最近『グラン』が開いていない。店内に改装がはいったようでもあるし、なにやら貼り紙もあった。そのやや薄暗く狭苦しい空間は、建物がきれいに建てかわってからもぜんぜん変化していない。その昔々からの薄暗くて古ぼけた雰囲気のままなのである。

 半ちゃんラーメンをお願いすると、使用している麺が細いのであっという間にラーメンがくる。へたにチャーハンを待っていると、早く食べなよと睨まれる。そこに作り置きしたチャーハンがぽんと来るのだ。

 さて、大振りで厚みのあるチャーシュー、煮染めたシナチク、細くて黄色い麺に醤油味のスープ。このラーメンは、間違いなく、「いい味わい」であると思う。スープに甘味があるのは、タレに多少、チャーシューを作るときの煮汁が入っているんだろう。このあたりまったくラーメン通ではないのでわからない。でもこのスープ、日常的に胃がただれているオヤジにはなんとも優しいものだ。食い過ぎると胃がもたれてしまうのも忘れて、どんどん大急ぎですすり込んでしまう。
 そこに続いてくるのが半ちゃん、すなわちほとんど一人前のチャーハンである。実を言うと過去に一度も半ちゃんを頼んだことはない。なぜなら外食で滅多にうまいチャーハンというのに出くわさないからだ。だから『さぶちゃん』でも単品でラーメンというのを通してきた。そして初めての『さぶちゃん』でのチャーハンはやっぱり「やめとけばよかった」というもの。しっとりとべったりと、口に含むと重い。

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 さて、今回でやっと10回くらいの『さぶちゃん』。やっぱり神保町名物なんだから一度くらいは“半ちゃんラーメン”という意味合いでわざわざ夕方に店を訪れた。そこで改めて思ったのは“半ちゃんラーメン”と言えば『伊峡』という選択もあるということ。我が神保町仲間によると“半ちゃんラーメン”では『伊峡』の方が先であるという。また『さぶちゃん』は『伊峡』で修業したのだという未確認情報もある。とにかく神保町で“半ちゃんラーメン”と言えば両店しか思い浮かばない。そして“半ちゃんラーメン”を注文するなら『伊峡』の方が半ちゃんがさっぱりしていていい。でもラーメンなら断然、『さぶちゃん』なのである。ここのラーメンは毎日食べても飽きないものだろう。やっぱり行列してまでは食べたいとは思わないが!?

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 たまたま神保町で打合せをしているとき、居合わせた女性が「青森県のラーメンってなんでしょうね?」と聞くので、「青森なら煮干し味じゃないでしょうか? 高いけど焼き干しというのもあってさっぱりした味わいですね」と青森ラーメンで話が盛り上がった。
 暮れなずむ白山通り、最近、神保町交差点から水道橋にかけてやたらにチェーン店が乱立する。教えられた通りに通りの向こうにマツモトキヨシを見ながら水道橋方面に歩く。やっと見つけた「青森のラーメン店」というのが「豚そば屋 けっぱれ」であった。一瞬、どう見ても青森らしさがなく、通り過ぎてしまった。でも「けっぱれ」だよな。山口瞳ファンなら必ずわかるのだけれど、これは青森弁で「がんばれ」の意味である。
 仕方ないので入ってみると典型的やりすぎの内装だ。イラストというか絵と手書き文字というのがわざとらしく、「つくられた」という雰囲気。その雰囲気を和らげているのが店員さんのダサイ対応ブリ。最近、どうもこの作りすぎの店が多くて困る。気色悪い。だいたい人気のあるラーメン屋ほど内装などは普通ではないだろうか。
 メニューを見るともっとも青森らしいと思っている、煮干し風味の醤油ラーメンがなく、それにあたるのが「コク醤油680円」であるらしい。あとは味噌や塩、味噌カレーなんてのもある。よく見ると「青森ねぶた漬け丼」というユニークなものもあり、好奇心が湧くが、やってきたラーメンの背脂が全面に張って(氷が張るように)いるのを見て諦める。
 見たところスープは乳白色である。一口すすると、そこにあるのは、みちのく青森の味わいではなく、完全にニューウエーブの作り出すもの。背脂の甘味と醤油と塩、スープは明らかに豚骨にほんの少し煮干しかなにかのアミノ酸も感じる。今、あちこちにある「花月」に似ている。でも「青森か!」と思ってはいるとがっかりするだろう。ボクなどは一日机に向かっているわけで、汗をかくような仕事ではなく、しかも今年は暖冬だ。とてもこのような濃厚で「旨い」ラーメンを食べたいとは思わない。
 またこのように内装や外装に凝るくらいなら、ラーメンの値段をもっと下げるべきだ。基本が680円は高いな。

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豚そば屋 けっぱれ 東京都千代田区神田神保町1-54-3 原田ビル1F

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