八王子を代表する食べ物に「八王子ラーメン」というのがある。起源は「八麺会」のサイトを見てもらうとして、昭和30年代(元号は嫌いだが、この場合西暦では雰囲気がでない)に八王子市子安に生まれたもの。特徴は「濃い醤油味と色、表面に浮いている油、そして刻み玉ねぎ、麺はストレート」というもの。その誕生とともに、もっとも古くから「八王子ラーメン」を提供していたとされるのが「初富士」だという。
八王子市中野上町の「初富士」を探すのは大変である。市場仲間に「秋川街道からちょっと外れているけど、ガソリンスタンドの角を左に曲がればすぐわかるよ」と教えられて、市場からクルマで20分。その通りに曲がって、行けども行けども見つからない。そりゃそうだ、曲がってすぐをまた曲がるのであった。今回も事前にあまり調べるなんて面倒くさいので、行き当たりばったりにグルグルと回る。ついてきた姫が「もう諦めようよ」と言った矢先に店が目の前に現れたのだ。
そこはまったくもって何の変哲もない住宅街。三度目の正直で見つけたのはいいが、外見は、これでも「もっとも古くから八王子ラーメンを出した店」なのかと拍子抜けするほど無機質な現代風の建物だ。
ただし駐車場にクルマを止めてドアを開けた途端に期待が膨らんでくる。そこには香ばしい、濃厚な醤油の香りが漂っている。これなら店の周囲100メートルくらいにいても風向きによっては店に引き込まれそうだ。
店内はそっけないけど真四角で清潔極まりない。さすがに猛暑日にラーメンを食いたいという人も少ないのか客はボクと姫だけだった。ボクは「中華そば大550円」、姫は「並450円」とする。
ボクたちの直後に来店した人が「中華そば大に半ライス」と注文。そうだ「八王子ラーメン」にはご飯が合うのだ。たぶん「八王子ラーメン」にご飯をつける確率は男性なら60パーセントを超えているかも知れない。また「八王子ラーメン」を出す店の白いご飯が、みな美味でもある。
「ご飯たのもうかな?」と呟くと、姫が「おとう、ご飯禁止」だって。どうして娘が父上に命令するのか変だぞ、とは思うが蹴りが怖いので思いとどまる。寂しいな。
店内は冷房がきいていて快適。姫など「ずーっとここで暮らしたい」というほどに気持ちがいい。これなら体内の溜まった熱気にラーメンの熱気をプラスし、外の猛暑と相まってのボロボロ状態にはならないですむ。
ラーメン(中華そば)はなかなかこない。どうやらお客が少ないために茹で鍋の火を一時とめていたのだろう。かなりまたされて、チャキチャキしたオバチャンがよいこらしょとまずは大を、続いて並を持ってきた。
丼の中にはかなり多量と見える透明な油。この油は豚や鶏肉からとるのだそうだが、詳細は不明だ。そしてなによりも特筆すべきは、太いまっすぐな麺がキレイに平行に丼の中で沈んでいること。その上に薄っぺらいチャーシュー、と海苔、メンマと刻みためネギを四方に従えて中央に鎮座しているのが、な、な、なるとだ。まるで、なるとが太陽であるかのように見える。ひょっとすると「原始太陽はなるとだった」のかもね。
醤油の香りと共にスープをすする。これがなかなかうまいのである。味わいは柔らかく、いたって在り来たりな旨味しかない。そこに上乗せされてくるのが醤油の香りとうまみ。これほど醤油のうまみを感じるスープも少ないのではないか。気になるのが表面に浮かんだ油である。ここのは他の「八王子ラーメン」の店よりも多いように思える。これがボクにはちょっとうるさい。スープに満足していたら、本日だけのことかも知らないが麺が茹ですぎで柔らかい。麺が太いだけに、この茹ですぎがすすりこむと重苦しい。
スープは100点、麺とかは30点というのが姫の評価。ボクも姫に賛同する。
店を出るや否や熱風がまとわりつく。クルマのエアコンがまったく利かないほどに、八王子は熱帯と化している。その奈落のような状況で、腹はラーメンで満たされているのだが、けっして「もたれ」ているわけじゃない。どうやら「初富士」の中華そば、後味がよろしいようで……。
詳しいことは「さやぴぃのラーメンデータベース」へ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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