2007年4月アーカイブ

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 八王子綜合卸売センターにある惣菜冷凍食品塩干を売る『清水保商店』で見つけたもの。そのパッケージが面白くて、この手の誘惑には非常に弱いのでついつい買ってしまったというもの。
 面白いのはこの島田髷の「白玉奴、赤玉奴、両姉さん」の絵。この絵を描いた人ただものではない。かなり才能ある! これで吹き出しのネームが面白ければ言うことないのだけれど、これが食べ方の説明というのが尻つぼみだ。

 この吹き出しが
「ああら、白玉姉さん、どこへ」
「新橋まで。赤玉姉さんはどちらへ」
 なんて永井荷風の「腕くらべ」のようだったらいいんだけどな。

 とここまでは中身とはなんら関わりのない話。でもこの中身がまたなかなか美味なのである。卵豆腐というと味も素っ気もない、平凡で嫌われない程度の無個性なものが多いのだが、これはなかなか味わいに深みがある。残念ながら卵の持つ風味が薄いのは、まあ結局工業製品なのだから仕方がなく、それでもがんばって味に深みを持たせたところがいい。これなら大振りの卵豆腐として食卓にごろんと転がして起きたい。

ふじや食品
http://www.fuziya-food.co.jp/
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html

 市場で仲良しのコマちゃんは『カワベ(カワベハム)』の店長である。この店、上州牛をメインに扱って、なかなか定評があるのだ。
 面白いのは『市場寿司 たか』で昼下がり、ときどきコマちゃんが上州牛の三角バラというのを差し入れてくれる。この表面を軽くあぶって握りにするのが名状しがたいくらいに「うまい!」。これ以来、牛肉は『カワベ』以外で買うのをやめてしまっている。それほどこの三角バラの味が印象的、今でも思い出すと生唾が出てきて困る。
 でもやっぱり旨い肉は高い。だから食べたくても、なかなか手が出ない。そんなときにはコマちゃんお勧めの牛肉、しかも格安なのを買うに限る。今回のは上州牛すき焼き用というやつ。これがなんと100グラム200円というのだから凄い。

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 迷わず、いっぱい買って帰り、当日は家族はすき焼き。ボクは当然、魚。なにしろ毎日、それこそ20年以上一日も欠かさず、魚貝類を食べていると休日の夕食は魚ずくめとなる。
 このすき焼きがうまかったのである。ボクが食べたのが2切れだけ。家族だけで1キロ近い肉をぜんぶ食べてしまった。ああああ、これが200円、もっと買ってくればよかったのだ。
 ひとりタイラギの刺身を肴にして酒をあおりながら、もっと肉が食べたいな、としみじみ思うのであった。

八王子の市場に関しては
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 湯島から御徒町まで歩くのは、ボクの大好きなお散歩コース。松坂屋で『まる赤』の干物の値段を見たり、アメ横を覗いたり。そのとき通り過ぎるのが、スタンドカレーの店に毛が生えたほどの造りの「デリー上野店」である。
 実はこの店の正式な店名は今回初めて知る。過去に2,3回入っているのだが、「まずい」という印象が残っているだけ。そこでほぼ15年くらいぶりに(前に入ったのはいつ頃だろう覚えていない。この年になると、年数がわからなくて困る)はいる。やっぱり造りはいたって庶民的である。これでいちばん安いのがインドカレーの800円というのがアンバランスだな。
 さて、今回もインドカレー。ここのはどろっとしていなくてスープ状。そこに小島を作るように鶏肉、ジャガイモがあり、粒状のものはカルダモンだろうか?
 そう言えば、これどうやって食べるんだっけ。まあご飯にかけながら食べる。イギリス風のものはスープに旨味があり、それはまさに「スープ」なのだが、ここのはまさにインド風。スープは香辛料を炒め溶かし込んだもの。だから辛いものの旨味は薄い。すなわちここで味わえるのは香辛料そのものの、と言えそうだ。そこにやや硬めの鶏肉があって、付け足しのようなジャガイモ。
 最近インド料理の店が都内にもどんどん増えてきている。その多彩さからすると、この「デリー」はややもの足りない。でもこのような香辛料の辛み、組み合わせの妙を味わうのもときにはいいものだと、今回再認識する。

デリー上野店 東京都文京区湯島3-42-2

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 この春に、なんどか芝、新橋に行く機会があった。当然、あたりを散々無駄歩き。そんな昼時に見つけたのがこの店。この外観を見て通り過ぎることが出来るのははっきり言ってオヤジではない。まさに昭和の香り、なかから森繁久弥が出てきそうだ。

 思わず店に入って「しまった」と思う。なぜならヒレカツ、ロースカツも総て2千円以上する。これは貧乏なお父さんには辛いな。でもよく見ると「ランチ」というのがあり、これならなんとかなる。
 注文を受けるとすぐに天ぷら用の低い銅製らしい鍋に、トンカツを泳がせる。揚げている音はパチパチと8分音符である。そしてしばし待ち、出てきたものにはちょいとがっかりした、荒く刻んだキャベツが皿からはみ出している。ご飯は茶碗ではなく皿にのる。しかもみそ汁が豚汁なのである。豚汁は好きだがトンカツに豚汁は合わないと思う。この点では神保町界隈の「いもや」のシジミのみそ汁の方が上だ。

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 この失望はトンカツを一口食べるやすぐに解消する。なぜならサクリとあがった衣の中の豚肉が柔らかく、そして味がある。「ええ、え!」と外見の平凡さとの違いに驚くのである。しかしこのトンカツはうまい。これでもしも定食のロースをお願いしたらいかなることになるのだろう。この「カツランチ」、豚汁がシジミ汁だったらまさにパーフェクトだ。

 店内が1時をとうに過ぎて満席である。どうもこの店はかなりの有名店らしい。ガイドブックのたぐいを持たない、読まない主義であるし、あえて言うと今風に言うところのグルメではないので、いい店に出合うのは一入うれしい。

燕楽   住所:東京都港区新橋6-22-7

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 ボクの「魚貝類を探す旅」ではまず旅館やホテルに泊まるなんてことはない。
 クルマなら車中泊、電車・汽車ならその街の一番安いホテルにする。車中泊が多いので苦労するのがお風呂である。最近はどこにでもスーパー銭湯というのが出来ているが、ただお風呂に浸かるだけで1000円以上もかかってしまうのは困りもの。
 目的は魚貝類と街自体なのだから、まったくのんびりしたいとか、快適な時間が欲しいなんて夢にも思わない。ただただ最低限の疲れを取り清潔に保ちたい、トイレを確保したいだけのこと。そんなとき昔ながらの銭湯がいちばんありがたい。

 生粋の沼津っ子である甲殻類学者である飯塚栄一さんに「沼津って銭湯とかないのでしょうか?」と聞くと。「まだ二軒営業しています」という。そこでネット検索で位置を確認すると一軒目の朝日湯の方が駐車場に近い。また沼津の本来の中心は本町という地域らしく、朝日湯はそのやや南寄りにある。古い沼津の街並みと銭湯という取り合わせも魅力的ではないか。
 沼津魚市場から沼津駅に向かう道を愛車青い稲妻号を走らせる。途中、右手に永代橋を見ると、通りの右手が古くは魚市場のあった魚町、左手が本来の沼津の繁華街本町である。道を左に折れて本町の通りに入る。並ぶ商店は作りが古さびて、やや寂れた感じがする。その通りにぐっと引っ込んで、すぐに朝日湯を見つけることができた。
 路地を入って突き当たり。そこに間口二間ほどの入り口がある。面白いのはやっぱり「右側が男」「左が女」ということ。たぶん全国的にも、この形がいちばん多いはずだ。

 間口二間の入り口から、中の状況はまったく想像できない。わくわくしてドアを手前に引く。靴を脱いで、その置き場にとまどいを感じる。下駄箱に入れる、鍵があるのだが、掛け方がわからないのだ。普通、鍵はアルミの板状のものが差し込んであって、蓋を閉めて横手のレバーを押し込むとちょっと浮き上がり、鍵が掛かる。それがここのはアルミのプレートを外すだけで鍵がかかるのである。
 やや低い番台(女湯は覗いてないぞ)で入浴料360円を支払う。この料金も高くなったものだ。ボクが初めて上京しての、小岩の銭湯が確か120円くらいではないだろうか?(『値段の風俗史』朝日文庫でも120円となっている)
 そして脱衣所、脱衣所の右手に服をいれる棚があり、ここの鍵も下駄箱と同じ作りになっている。改めて浴場の方を見て、総て木造なのに感激する。浴場は手前が洗い場であり、奥に浴槽がある。この造りは関東のもので、関西の古い銭湯は中央に浴槽となっている。
 ケロリンの桶と腰掛けを持ち、いちばん浴槽側の並ぶ蛇口、シャワーに座る。ケロリン製薬の黄色い桶は懐かしい。見上げると天井は上に行くほど狭く、三角形の空間を広々と作っている。その斜面も木であり、やや水色のペンキがかなりはげてしまっている。これが現代建築の古さびると汚らしいのとは違って、どこか風雅なものを感じる。湯船の奥のペンキ絵は富士山ではなく、駿河湾と伊豆の山。
 湯の蛇口を幾ら押しても、冷たい水がでるだけ。仕方ないので低すぎる位置にあるシャワーをひねるとぬるいけれどお湯が出る。

 昨日は午後11時に自宅を出ている。戸田村には午前2時半到着。うつらうつら3時過ぎまで仮眠したものの。ほとんど睡眠ゼロのまま底引き網にのっているのだから、朝日湯の湯船につかる、このときが疲労の頂点である。湯船は2つに分かれていて、左手が深く、下からぶくぶくと泡が出ている。左手はタダのお湯。まずは右手でじっくり身体を温める。下町の銭湯に馴染んでいたので、ここのはややぬるめに思える。それでも体中にびりびりと湯の癒しが染みこんでくる。ほんの5分ほどだろうか、手がふやけて白くなっている。子供の頃、風呂にちゃんと入ったのを手の白くなったのを祖母に見せていたのを思い出す。そう言えば、こんなことも久しぶりだ。最近では日々忙しく、ゆっくり風呂に浸かることもなくなっている。
 右手の湯船は深く、足の裏をあぶくが刺激して、これもなかなかいい気持ちだ。そう言えば、火曜日の夕方だというのに、お客が少なくゆったりしている。ボクとしてはありがたいのだけれど、銭湯の経営は大丈夫だろうか? とても気に掛かる。
 沼津という街にこんな昔ながらの銭湯がある。それが新鮮に感じるし、また街の魅力を倍増してもいる。この朝日湯も長く続けて欲しいものだ。
 さて風呂上がりにはオレンジ牛乳かコーヒー牛乳と決まっている。またコカコーラという選択肢もある。そう言えば初めてコカコーラを飲んだのも故郷貞光町の南風呂だった。ボクのウチには内湯もあるのになぜか銭湯にいっていたのだ。ボクが生まれた1956年、街には北、中、南と三軒の銭湯があった。今も残っているのだろうか?
 自動販売機に向かおうとして、ふとどうせ焼鳥屋で生ビールを飲むのだから、我慢する。外に出ると四月だというのに風がなま暖かい。

朝日湯 静岡県沼津市下本町9

市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 別に八王子総合卸売協同組合『ユニオンフーズ』の名物がハムカツというわけではない。まあ言うなれば勝手にボクが名物だとしているだけのこと。本来肉屋であり、牛肉も豚肉も激戦区の八王子総合卸売協同組合にあっては健闘している店である。
 でも市場内で唯一、揚げ物総菜を売る店というのが貴重だし、また惹かれる部分でもある。
 そしてメンチカツ、コロッケ、はたまた名物の焼き豚などを押さえボクのいちばんのお気に入りがハムカツなのだ。この揚げたてをサクサク食べるのはメタボリック症候群オヤジにはたまりません。地獄に落ちてもやめられなーーーい。
 八王子総合卸売協同組合にきたらお土産にハムカツというのもいいぞ。

八王子の市場に関しては
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市場魚貝類図鑑へ
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 北野の八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合に近いのに一度も入ったことのなかった店。なにしろ外観はかなり引いてしまうもの。よくぞここまで低級なものを設計したものである。少々気持ち悪い。なんて思っていたら、これがまさに昭和の遺物なんじゃいという気もしてくる。
 まあとにかく入ってみると、まことに店員さんが気持ちの良い「いらっしゃい」で出迎えてくれる。女性二人、若い男性ひとりの明るい店である。そして遅い昼飯なのでとにかくラーメン。待つほどもなく出てきたのは、これがまさしく中華そばそのもの。
 鹹水の利いた黄色い麺、シナチク、海苔にチャーシューにお決まりのなるとである。ワカメは余分であるが、これはなかなかうれしい典型的なもの。そして味わいも微かに煮干し風味があり、スープがいい。気になるのは味わいがやや甘めであること。もっとストレートに醤油味のほうがいいかも。
 それでもこの『豊春』のラーメンはオヤジには魅力的だ。ときどき来ようかな!

豊春 東京都八王子市北野町581-4

八王子日野などのラーメンに関しては、ぼうずコンニャクよりも、さやぴぃさんの方が正確じゃ
http://www.geocities.jp/sayapie3838/database.htm

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 貧乏学生であったので、その昔、この店とは無縁であった。初めて入ったのは仕事を始めてから。当時は夜も昼も朝もなく、という状態だったので、少しでもまともな飯が食いたいと『魚玉』『亀半』『末広』『近江屋』なんかで定食を食っていたのだ。ほかには『キッチン山田(ヤマダ? 忘れてしまった)』というのもあったが、とにかく今に残るのは『近江屋』とこの『魚玉』だけとなっている。ともにめったに足を運ばない。なぜなら生活がやや普通になってしまったからだ。とすると昼飯にこのような「焼き魚」を中心とする店に入る気がしないのである。あえて言うと中途半端な夜に利用するだけ。

 さて、『魚玉』の引き戸をあけるとカウンターが奥に続く。いちばん奥には1個だけテーブルがある。その左手が厨房なのだが、そこで目立つのが発泡の白い箱。席に着くと、オヤジさんが来て「サンマにサバ、ニシンの塩焼き、サワラの粕漬け、ブリの照り焼き。お刺身もあります」なんて唄う。それに圧倒されてゆっくり選べないのが、この店の嫌なところ。でもこれも珍しいし、懐かしい、好ましいと思う人も多いだろう。

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 この店のいちばんのお勧めは鉄火丼であった。でも久しぶりに来店して、なぜだかニシンが食べたくなったのだ。そのニシンは白い発泡にすでに焼いて入っている。それを出すだけだから、来るまでに数十秒、ときに1,2,の3で来たりする。この早さがうれしいのだ。
 でも言っておきたいのは、けっしてこの素早くくる焼き魚がうまいもんじゃない、ということ。ここはあくまで「投げるタイミングのいい好投手」のようではあっても、「打ち安くはない」という代物で、「店としては至って優秀」だが「満足度は低い」のである。この日のニシンもやや焼いてから時間が経ち、ぱさついている。そこにうまい白飯があってはじめて許される程度のもの。こんなところがこの店のあらましなのだ。

 このような店がある意味、神保町らしいものの代表だと思う。例えば築地の食い物屋の多くが期待はずれなのが、それはあくまで質実であるのを尊ぶからであるのと同じ。この店を利用する常連というと、授業を前にした助教授あたり、はたまた胃袋にたまにはまともな食事を入れたい本屋の店員、編集者などだろう。当然、時間に余裕があるはずもない。そこに「ニシンね」、「あと冷や奴に、お浸しも」ときて「そら!」とくる手早さが捨てがたい魅力となる。その最後の店が『魚玉』である。

魚玉 千代田区神田神保町1の32

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 浜松町駅を利用するのはデジカメが故障したときだけ。そのたびに立ち寄るのがこの立ち食いそばの店。『満留賀』というそば屋は都内に何軒もあり、どうやら歴史のある店名のようだ。その『満留賀』と言う名で立ち食いそばというのも珍しいように思われる。

 店の表構えはいかにもチェーン店というもの。そしてよくよく見ると、個人営業の店というのがわかる。このようなへたくそな造り自体が、そば屋さんが一転立ち食いを始めてしまったという顛末を感じる。とにかく中に入るととても気持ちのいい清潔感あふれる、そしてサービスの行き届いた店なのだ。

 さて、真四角ななかに入れ子状に真四角な厨房があり、その中は明らかに街のそば屋そのものに思える。そこからは揚げ物の音はするし、「ざるあがったかい」なんて声も聞こえる。食券を買い、厨房の前に置く。席で待つこと「立ち食いそばの店としては長め」。明らかに店の人(アルバイトではない)という女性がかき揚げそばを持ってきてくれる。

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 かき揚げは揚げて間もないもの。野菜の甘味もあっていい味わいだ。そばも細めながら風味がある。汁はいたってありきたりなそば屋のつゆだが飲んでもイケル。ワカメが入っているのは意味不明だし、汁の味わいを落とす。これは出来れば濃いそばつゆで味付けして一カ所に集めて欲しいな。そして、かき揚げの上にある刻んだネギがキレイだ。これは今時のよくできた立ち食いそば屋に勝るとも劣らず。しかも店員さんの好感度からすると「また来たい気」が湧いてくる。

 さて街のそば屋さんでかけはいくら位なのだろう。最近めったに入らないのでわからないのだけど、優れた立ち食いそば屋が増えているときに500円だったら席についても嫌だし、400円を超えてもいやだ。高いなら並木やぶくらいの味わいはせひとも欲しい。そうするとほとんどのそば屋が現在の都会人からすると不合格ではないか。そんなときに街のそば屋、しかもかなりレベルが高い店が立ち食いに転身するというのも時代を感じるし、少しだけ歓迎もする。

満留賀 東京都港区海岸1-4-12

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 卸売り市場というのは鮮魚、精肉、青果などの生鮮品と、惣菜という加工食品のふたつの分野が同居しているところ。多摩地区などでは個人商店が店に並べる総てがここに揃っている。この惣菜の仲卸には昔ながらの定番的な存在が数々あって、「イシイのチキンハンバーグ」もそのひとつ。
「マルシン(ハンバーグ)とおんなし棚に並べるんじゃない。スーパーやってる人は必ず一箱持ってくよ。注文も多いし、ミートボールもあるよ。どっちも古いね」
 仲卸のユキちゃんの解説。そう言えば、どこの惣菜屋(仲卸)にも置いてある。1か月保つというので一箱買ってみる。

 千葉県船橋市にある石井食品は戦後に生まれた会社。仲卸に聞くと、チキンハンバーグで有名だと言うから肉関連なのかと思ったらもともとは佃煮屋さんなのである。それが1973年にチルドの「チキンハンバーグ」を「作ってから大きくなったんだろう」と仲卸では思われているようだ。とにかく「イシイのチキンハンバーグ」は惣菜関連の仲卸にはなくてはならない存在であるという。

 持ち帰ったら家人がいきなり、
「イシイのおべんとうクン、ハンバーグ」
 歌い出した。これはよく耳にするコマーシャルソングではないか? 考えてみたらテレビかラジオから常に流れてきている。そして家人が昼食用に太郎に残りご飯をチンと温める。かたわらには沸騰したお湯にチキンハンバーグ。カレー皿にご飯、そこにいきなりハンバーグをソースごとのせるのだ。ついでだからボクにも用意してもらったらこれがなかなかいける。
 トマトが入っているようで酸味のあるソースには甘味があって濃厚だが優しい味わいだ。その上、ハンバーグにちゃんと鶏肉の旨味とジューシーさがある。これは子供が大好きな典型的なもの。

 この定番的な商品、市場仲間に食べたことがあるのか聞いてみる。すると60歳を筆頭に全員「なつかしいな」という。
 山梨の高校(太陽学園って言ってるけど、それ本当にあったんだろうか?)に通っていたという寿司屋のオヤジ(45歳)は
「お弁当にはよく入っていたよ。半分ね。おんなし会社のミートボールもあったな。それと魚肉ソーセージを焼いたヤツ。昔の弁当箱はおかずとご飯が別々だっただろ。そのおかずの方じゃなくてご飯の方に(ハンバーグが)入っていたんだ。それをストーブで温めるの。ウチは代々店(実家がスーパー)やってるだろ。お袋なんか料理作らないで、こういうのをドカっと入れてくれる。(学校では)むしろうらやましがられたな」
 八百屋のオヤジ(コイツ40歳前後?)は、
「この家業やってると、朝忙しいだろ。おやじは“やっちゃば”だし、だから子供の頃は朝自分で作ったよ。母ちゃんがご飯と、みそ汁を作ってくだろ。そこにこれがあると妹もオレも贅沢って感じでさ。マルシンハンバーグよりも高かったんじゃない。やっぱ贅沢って思ってたね。そいで八百屋だから漬物があるだろ。懐かしいね。朝にご飯っていうことがさ。今はパンだもん」
 魚屋(仲卸)の若い衆は今でも手が空いたときにこれを「食ってる」という。
「あの、サトウのご飯っていうのあるでしょ。それにレトルトのカレーとハンバーグをかけるの。これはうまいっすよ。オレは朝はカップ(ヌードル)よりは飯だから」
 市場の片隅でカップヌードルで朝飯というのはよく見かける光景だ。確かにそれよりも何倍か健康的に思える。

 一箱買ってきたら、それ以後我が家でも定番的なものとなっている。1個100円前後だろうから、決して安いものではない。でも慌ただしい朝ご飯のときや、子供が腹減りのときには便利極まりない。
 これなどスーパーの片隅の優れものといった存在だろう。
 
石井食品
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