美保関定置の水揚げを見て、帰港。
選別を見終わったのが午前7時前後。
終始雨の中。
湿度100パーセントで、なま暖かい。
不快指数は個人的には最大値である。
定置網の水揚げを見ている間にも近所の料理屋、旅館、民宿などから魚を買いつけに来る人が雨にもかかわらず多々ある。
これを見ていて、ふと漁協の女性に
「このあたりで朝ご飯食べられるところありませんか」
まずないだろうと思っていたら、
「ありますよ。あさひ館ならやってるでしょう」
その水揚げの場からひょいと目をやると「あさひ館」はあったのだ。
同行していたダイコク様が
「朝ご飯やってるかどうか見てきます」
雨の中を店内に入ったダイコク様はすぐに出てきて手をふる。
すぐにボクも走ったのである。
とにかく雨具を脱ぎたい。
店内に入ると熱い番茶が待っていた。
この番茶は島根県ならではのもの。
関東でのほうじ茶のたぐいである。
「刺身定食でいいですよね。千円です」
ダイコク様が念を押してくる。
もちろん漁港での朝ご飯は刺身に決まっている。
美保関は観光地である。
風光明媚、街並みの美しさ、また美保神社の建物としての美しさもあって国内でも特筆すべき観光地と言っても過言ではない。
だからうまい朝ご飯が食べられるか、少々疑問が湧いてきた。
この国の観光地の食事には絶望的なものがある。
とくにグルメリポーターとかが紹介するたぐいのものは最低である。
せっかく見事な地魚がとれているのに中心にあるのがアイスランド産の甘エビ(ホンホッコクアカエビ)だったり、ヘタクソに解凍したマグロがあったり。
これをテレビ番組などでは賛美する。リポーターが驚いた振りをする。まことに醜い光景だ。卑しさを感じる。
そんな物思いにかられているとき、一皿目がやってきた。
イサキの煮つけだ。
塩焼きが定番だけど、煮つけもいいね。
よくみると切れ目のあたりの肉がパツンと盛り上がっている。
よほど鮮度のいいイサキを使ったに違いなく、当然とれたのは目の前の定置網に違いない。
もずく酢、わかめのみそ汁、たっぷりの漬物に梅干しがついている。
そしてスズキとコウイカらしいイカの刺身がきた。
煮つけを一箸。
思った以上に上手に煮ている。
とてもいい味である。
いい素材を殺さぬように、ご飯に合うように、適度に薄味なのがいい。
刺身は大盛りじゃないけど、びっくりするほど新しい。
イカなどは透明感があって硬いのである。。
島根県独特のやや甘めの溜まり醤油が残念と言えば残念だ。
それにしても定置網を見た後に食べて、そのまま定置網の魚を思い返すことが出来る。
たまり醤油をつけてご飯と食べても、穀物の甘味と魚の甘味が相乗効果を生み出す。
また、みそ汁に入っていたワカメがただものではない。
シコシコして歯触りがいい。
「このワカメ天然でしょう」
「そうです。そうです。ウチはその前の海でとれた天然ワカメを漁師さんにとってもらって一年を通して使っているんです。
この朝ご飯はなかなか出色のものであった。
さて、観光地の食事は最低だ、と書いてきた。
でも、こんな朝ご飯が食べられる美保関は例外かもしれない。
こんど一人っきりで一泊してみたくなる。
2008年6月21日
あさひ館 島根県松江市美保関町美保関554
松江市観光協会美保関支部
http://www.mihonoseki-kankou.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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