市場・港でご飯: 2008年4月アーカイブ

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 柏魚市場で「場内の食堂でどこがうまいんですか」と聞くと、「どこもそんなにうまいとは言えないけどね」と幾人に聞いても味は期待薄に思える。
「最近じゃ、そこの寿司屋が人気でね。うまいらしいけど開店が遅いしね」
 なかなか「これがいい」とは出てこないなか、
「そうだ、ここから見て“二八そば”ってあるでしょ、あそこが比較的うまいかな」

 その“二八そば”というのが『幌市』だった。外見はまことに平凡だが、外にある看板がすごい。イクラ丼やら海鮮丼、天丼などの写真が派手派手しい。このような看板に辟易しているので、回りの店も見て回るが、どこも似たり寄ったりで決め手に欠ける。ここは初志貫徹で店の引き戸をあける。
 店内は思った以上に普通の食堂にみえる。中心になるのはそばと丼、そこに日替わり定食があって650円ということは市場で働く人たちも食べていそうに思った。

 この日替わり定食が、なかなかよかったのだ。中心にくるのが鶏肉の塩味のオイル焼き、つけ合わせのマカロニサラダ、キャベツのせん切り。隣に主役と見まごうカレイの煮つけがある。そしてたぶん市販の長芋の梅肉和え、青菜の漬物に、なめこのみそ汁。

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 これは言うことなしの朝ご飯である。
 カレイはどうやらカラスガレイかアブラガレイで冷凍ものを使ったのだろうけど、味付けがいい。また冷凍物としてもいい材料を使っているように思える。鶏肉は平凡でも、なかなかこれだけ満ち足りた定食は少ないように感じる。

 このような平凡であるけど、よくできた定食というのがいちばん市場飯としてはいい。これなら国産ものを使っているというアナゴの天ぷらなどもうまいに違いない。

柏市公設総合地方卸売市場
http://www.city.kashiwa.lg.jp/cityhall/sosiki/B_KEIZ/KEIZ_KOU/kashiwa_ichiba/Index.htm

 深夜に帰宅して、それなのに市場魚貝類図鑑の改訂まですると、翌朝は胃の腑がひっくり返ったようになる。
 それが解消されるのが9時から10時くらいの間で、丁度、八王子総合卸売センターにいるというわけで、市場飯となる。
 最近の悩みは、そんなとき『さくら』で食べるか? 『市場寿司 たか』で食べるのか? 迷って迷って混迷してしまうということ。

 近年は関東周辺の市場にもよく出かけていく。そして朝ご飯を食べて帰ってくるのだけど、いまのところうまい店に出くわしたことがない。
 それなのに八王子総合卸売センターだけがうまい店、二店舗が隣り合っているなんて、ボクには迷惑極まりない。

 最近では、野菜もご飯もたっぷり食べたいと思ったら『さくら』、軽く食べたいなら『市場寿司 たか』で、となってきている。
 ともに困るのはうますぎて、ついつい大盛りにしてしまうこと。また追加の二、三かんがメタボの素かもしれない。

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『さくら』の我がまま野菜たっぷりの「野菜炒め定食」。ボクは大好きな一味唐辛子を振る

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これは持ち帰り用弁当用の中華煮込み。レバが入っているのだけど、これがまことに美味

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どこにも真似の出来ない素晴らしい、『さくら』のつけ麺。麺の太さはお好みで選べる。

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『市場寿司 たか』のぼうずコンニャクスペシャル。大好きなこはだにマグロ八の身

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ボクが疲れ果てた時に食べる、『市場寿司 たか』のカッパ巻き。たかさんはカッパ巻自体が好きじゃないという。それで食べたくなると、八王子綜合卸売協同組合『河村青果』でキュウリを買ってくる。「誰が買いに行くのかって?」。もちろんボクなのだ。

 どうやら、ボクの体重が落ちないのは、このふたつの店のせいだ。

八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html

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 京都に来て、市場というと「錦市場」がまっさきにくる。この四条通りの北にある小路は、あくまでも仲卸、小売りが中心で、「市場」というよりも食を中心とした商店街である。最近では明らかに観光地化が進みすぎて、本来の良さが失われているように思われる。
 さて、ボクにとって京都で市場というと、七条通りの北にある中央市場のことで、食に関するものを売る魅力的な店も、このあたり七条商店街に集中していると考える。

 その中央市場の仲卸さん何人かにお聞きして、「朝ご飯ならあそこにしなはれ」というのでガラリといきなり引き戸を開けたのが『権八』である。
 中央市場の建物は鉄筋の大きな建物なのだけど、その西側にウナギを焼く店があったり、練り物を売る店、また野菜の市場めいたものがあって、ごみごみしている。この中央市場寄りに『権八』はある。

 3月初旬の早朝なので、冷え込んでいる。ダウンから厚手のコートに代えたのが失敗だった。ほんの1時間ほども市場を歩く内にすっかり身体が凍えてしまっている。
 その硬直した冷たい身体が、カウンターだけの湯気もうもうとして店内でゆっくり溶けていく。
 品書きをみるとそばうどんに丼物が並ぶ。そのどれもが魅力的だが、いかんせん前日の慌ただしさに胃の方がご飯を受け付けない。関西に来たらうどん、それも「きざみ」に限ると思っているのだけど、品書きにある「きざみきつね」はいかなるものか。
 カウンターの中では無心に働く人がいて、カウンターの手前は常連さんで和気あいあい。「きざみってどんなもんですか?」と聞くと、「刻んだお揚げが入っとるんです。“甘きつね”は甘く煮たお揚げがね」ということからすると大阪と同じだ。

「きざみきつね」をお願いすると、隣からお声がかかる。この方、Tさんは荷受けの方でボクのことをご存じだったらしい。ここではお名前は伏せるが、京都ではこれから色々お世話になりそう。また料亭などの仕入れをやっている方ともお話しが出来て、店内での時間が有意義だった。

 そして目の前に「きざみきつね」。これになにげに触れようとすると、「熱いから気をつけてくださいね」と声がかかる。確かに丼の回りはおそろしく熱くて、怖々とカウンターにおろす。

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 その熱い湯気の中から山椒(さんしょう)のいい香りが立ち上る。ボクは香辛料の中でも山椒がいちばん好きなのだ。前夜来の体調不良が癒されていく。
 関東ではうどんには唐辛子、七味唐辛子しか思い浮かばないが、種によっては山椒も使う、というのが食の都・京都らしい。

 刻んだ揚げと青ネギの下のうどん汁(つゆ)は澄んで、昆布の旨味がよく出ているし、かつお節の香りもする。味はやや甘めながら、塩辛さがきりっとして、醤油の香りは抑え気味だ。残念ながらうどんはボクの嫌いな餅っとしたものだが、それが気にならないくらいに汁がうまい。
「京都のはんなり(花なり)、大阪のまったり」と表される、まさに京都らしい汁の味である。
 なんとうまい汁だろうか。急ぐ旅であるのに、ゆっくりゆっくり汁の味を堪能する。最後まで飲み尽くしても、汁のうまさは変わらなかった。青ネギ、刻んだお揚げがまたいい味である。
 非常に庶民的な店であるのに、味は一級品。関東ではまず出合うことのない本物である。

 中央市場もさることながら、『権八』に飯を食らいにくるというのも京都に立ち寄る目的のひとつになりそうだ。
 御支払をお願いすると、「もういただきました」という。この「きざみきつね」、Tさんにご馳走して頂いたようだ。まことにありがとうございました。

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 岡山中央卸売市場には仕事であるような、ないような、中途半端な目的でやってきた。それでお昼ご飯はというと、とにかく関連棟で済ませることに。
 仲卸で聞くところでは関連棟の飯どころではなんといっても『備前食堂』がいい。それで腹減りと二月の寒さをたっぷりの昼ご飯で癒す。

 岡山中央卸売市場は、まったく新しい青果も水産も合わさった県の中心にある大型の近代的な市場である。だから全体的に無機質なものとなっている。とくに無機質なのが関連棟であって、『備前食堂』というなんだか「そそられる」店名もここにあっては身も蓋もない。
 とにかく暖簾をくぐる。なんと目の前にいくつかの惣菜が並んでいて、これがなかなか魅力的だ。それ以上に魅力を感じるのが左手のおでん。真っ黒な汁は「関東炊き」とよばれる西日本の田舎風のもので、当然、牛すじが入っている。
 これをお好みでとっていいのだと思ったら、ついつい菜箸が皿にたくさん盛り上げてしまった。
 大振りの大根、牛すじ、焼き豆腐に卵。おいおいこれでご飯とみそ汁を加えたらたいしたボリュームではないか。となぜかついでに冷や奴も。

 この大根にかぶりついたら冷え切った身体がとたんに暖かくなってきた。おでんはかなり醤油っぽいものでまったりしている。かといって、むさぼるにそんなに重苦しくないのはどうしてだろう。
 この、おでん、ごはん、に加わるみそ汁の味がいいねー。
 これぞ腹減りの、市場の朝飯そのものだ。

 食べ終わると、まことに満足至極で豊かな気持ちになる。岡山中央卸売市場内『備前食堂』は市場飯を満喫できる飯屋である。

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