浅草から千束に抜けて、南千住までの無駄歩きは、賑やかな浅草から北上するにしたがって人影まばらになってきて、観光客は消えて、日常的な商店街の風景に変わる。ここから千束に抜けるとソープランド街となるのだが、竜泉へとまっすぐ進むと、いたって在り来たりな下町の住宅地になる。
この浅草と千束、竜泉の切れ目アタリにあるのが「竹松商店」である。通りかかるといつも買い物をする主婦で賑わっている。生の鶏肉の品揃えも豊富だが、その買い物客のほとんどは店頭に置かれている鶏肉のお総菜目当てだと思われる。
このお総菜を一度買ってみたかったのである。焼きとり、ローストチキン、ケースの中には魅力的なものがいっぱいある。みなそれぞれに魅力的でうまそうなので、全部買いたくなる。それでも無駄歩きの途中だし、せめて2種類くらいにしておきたい。
仕方なく、「お勧めはなんでしょうか?」と聞くと「ウチの名物は“なか焼き”です」というので、素直にたっぷり買い込んできたのだ。
この「竹松商店」名物の“なか焼き”が面白い味わいだ。どちらかというと穏やかな醤油味で、身がふっくらと柔らかい。こまったのはスパイシーではなく、そんなに特別うまみがあると思えない鶏肉の味わいなのだが、食べていて、食べ飽きないのである。「いくらでも食べられる」という表現がぴったり合う。
もしかして、この穏やかなタレの味わいは、昭和の、例えば30年代の味わいかも知れない。食べていてとても懐かしい。
またこの店の生肉のショーケースに鶏皮、レバー、砂肝、ハツなんかがバットにのせられている。これなどボクは見ているだけでワクワクする。こんど鶏皮200、レバー300、ハツ200、砂肝200、それに手羽もとに、鶏こま切れに、端から端まで全種類買ってしまうつもりだ。
竹松食品株式会社 3874-5252 東京都台東区浅草3丁目38-3
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