市場でなにがうれしいかと言って食堂が健在であるということではないだろうか? 食堂などに詳しい遠藤哲夫さんは本来の食堂の基本を和洋中のごったまぜにあるといているように思える。その見解にボクも大賛成で本当に空腹な状況を癒してくれるのが食堂であり、その優しさに単純に感激するのが食堂人とも言える。ボクは間違いなく食堂人だな。
だいたい食堂が生まれた大正から昭和期に「食堂」という名称は、いろいろ様々な食を楽しめるという意味合いもあったと思われる。
それなのにどうだろう、都心を始め食の分業化が進み、やたらその権威を見せびらかすようなみっともない飲食店が増えてきているではないか? 五十路のボクが言うのもなんだが、店側がこだわりや、客に押しつけがましいことを言うのは千年早い。不届きものめ!
そんな食堂がまだまだ健在なのが市場なのであり、船橋中央卸売市場には10店舗にあまる食堂が元気いっぱいで営業している。その店店を探検するのがまことに楽しい。
今回は姫が一緒なのでなかなか店選びが難しい。「ここでいいかな」と聞いてもなかなか首を縦に振らないのだ。そろそろしびれを切らしたところで姫が決めたのが『福田屋』だった。
どうやら中で働いているオバサン達をみて決めたらしい。
そのカウンターだけの店内はいかにも市場人のためのものらしく慌ただしい。ゆっくり食べるという雰囲気ではない。ここでボクは銀だら煮つけ定食、姫は定番のラーメン。
銀だら煮定食にはコロッケも着いてきて800円くらいだったろうか、そしてラーメンが500円。この銀だらの煮つけの甘さ加減がいかにも千葉県らしく重い。そしてみそ汁の辛さ。これは明らかに市場人のための腹空き定食であり、後から来る人の多くが「大盛り」を注文していたのが、またそれらしい。
そんな煮つけ定食はおくとして脇の姫がおかしい。
「父ちゃんこれ食べてみな」
ラーメン丼をこちらに寄こす。その味わいが微妙なのだ。
「スープはうまいね。でもどこかおかしいだろ」
姫の言うことがわかりすぎるくらいにわかるのだ。なんだかしっかりしない味だけどスープはおいしい。結局姫は最後まで食べてしまった。でも首を傾げてしまっている。
だいたいラーメンというのはスープと麺の調和なのだけど、福田屋のはそれが出来ていない。でもまずくはない。こんな不可思議さも市場ならではだろう。だいたいラーメンというのはわかりやすくてはダメなのだ。
しかし福田屋の品書きを見てもなかなか楽しい。チャーハンオムレツ、当然煮魚に刺身もあり中華麺類各種。そして千葉県名物の「焼きそば」もある。
さて船橋中央卸売市場関連棟での食事は毎回満足至極なのだ。値段も安いし、多彩だし。船橋市の方は明け方に突然腹空きに悩まされたら市場に急行するといいのではないか? 遠く多摩地区に生きるボクは思うのである。
船橋中央卸売市場関連棟
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