6月の広島駅、やっと通勤ラッシュが終わったところである。
ボクは駅構内で立ち食い(立ち食いの麺類を売るスタンド)を探したのだ。
そして芸備線ホームで、駅員さんにそれを問うと、「ありませんな」なんて答え。
どうやら「簡単に朝ご飯が食べられるところ」と問うたのが間違いであったようだ。
それでホームを新幹線改札口の方にもどって、立ち食いスタンドを探したのだけどない。
仕方なく買い求めたのが、今回の駅弁なのである。
ちなみにボクは駅弁はあまり好きではない。
だいたい芸備線で弁当を広げられるものだろうか?
その芸備線ホームに戻り、入って来たディーゼルカーを見ていて、振り向くとなんとそこにうまそうな立ち食いスタンドがあったのだ。
それこそ目の前に、気づかなかったのは隣のホームに車両がとまっていたせいに違いない。
とにかく芸備線に乗り込む。
思った以上に上客は少なく、4人がけの席にたったひとり。
喜ばしいことなのか、芸備線の将来を鑑みて憂うべきことなのか、なんとか駅弁を広げる。
経木風の折りに薄く煮染めたご飯、上には丸々一本ほどの焼き穴子がのっている。
香の物の奈良漬け、ショウガの酢漬けの量がほどよい。
なかなかなんとも見事ではないか?
これなら1260円でも高くない。
煮染めたご飯がうまい。
軽い味付けで旨味も微かに感じられる。
そこに香ばしい焼き穴子の、これまたうまいのでちょっと感激する。
次の駅でまた上客が乗り込んできて、ボクの4人がけをにらんで通り過ぎていく。
でもボクの前の4人がけも空っぽなのだ。
芸備線ははじめこそ市街地を走っていたのが、徐々に民家まばらになり、庭先でイチジクの木を剪定する老人が間近に見える。
そして幾駅か過ぎてディーゼルカーはそれこそ山を縫い込むように走る。
川をいくつも超えて、そろそろ三次というとき、乗客はボクひとりだけになる。
このとき弁当は当然跡形もなく消えてしまっている。
ひろしま駅弁
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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