山陰本線益田駅「さざえ弁当」は名品だった

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 山陰本線はれっきとした幹線鉄道である。
 京都駅から山口県下関まで、というのだから凄まじく長く、国内でも屈指の鉄路だろう。
 島根県に通うようになって、何度もこの長大な山陰本線に乗っている。
 乗ってみなけりゃわからない島根県の実情というのがある。
 例えば山陰本線は幹線鉄道なのに単線なのだ。
 例えば長大な鉄路を有しているのに1時間に1本しか便がない。
 そして例えば、朝夕でも2両編成、深夜(そんなに遅い時間ではない)ともなると1両編成が当たり前。
 夜遅く乗ったら、途中から乗客がボク一人なんてことだってあった。
 そのときの寂しさと言ったら、カンパネルラと別れたジョバンニのようではないか。
 たくさん乗っていた乗客を消去してしまったのは誰だろう。
 それは都心にみっともない巨大ビルを建てている脳天気野郎や、小沢一郎を代表とする汚染された政治家、汚染された行政者、汚染された企業、人間味の欠片もない金(かね)本位バカだろう。
 早く人間性を取り戻して欲しいものだな、この国の人たちよ。
 と、自分も含めて戒める。

 閑話休題。
 駅弁に話を戻したい。 
 島根県浜田市から『島根県』津和野町に行くには、山陰本線で島根県益田駅まで行き、そこで山口線に乗り換えることになる。
 車で行くと、1時間半くらいだろう、これが鉄路だと2時間以上かかる。
 なぜなのだろう?
 それは山陰本線が一時間に1本なら、山口線の本数はもっと少ないからだ。

 益田駅で半時間ほどの待ち合わせ。
 駅前通の酒屋で日本酒を買い、それでも駅で退屈な時間を過ごす。
 あまりに暇なので、駅売店をのぞき見つけたのが「さざえ弁当」だ。
 長楕円形に帯状のラベル、そこに「益田名物」、「寄ってみんさい 来てみんさい 歌の聖の人麻呂と 画聖雪舟に 日本海の旬の味」とある。
 弁当を食べ終わってしまっても「さざえ弁当」と「益田名物」以外、この細かなコピーまでは読んでいない。
 このコピーは帰宅して画像から読みとったもの。
 面白いコピーだが、長すぎて行楽気分にはないボクには意味をなさない。
 ボクなら「人麻呂・雪舟縁の地 益田名物」だけにする。
 ゆったり旅気分の人用に長いコピーを小さく印刷すればいい。
 ちなみに「さざえ弁当」の大きさはよろしいな。

 包装も簡便でキッチュなものなのに値段は900円もする。
 材料がサザエなんだから当たり前だけど、駅売店の隅に置いてあったので高いと感じた。
 これが思わぬ拾いものだった。
 食べたら900円が安いとさえ思った。

 午前11時過ぎ、停車中のディーゼルカーに乗り込む。
 益田の地酒「宗味」ワンカップ片手に、ディーゼルカーの大きな揺れを気にしながら、2駅超えてから蓋をとる。

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 長楕円形の三分の二がさざえ飯でうまっている。
 上に煮たサザエがあるので、ご飯を煮汁で炊いているのだろう。
 おかずは竹輪、野菜天(薩摩揚げ)、玉子焼きに椎茸。
 もうひとつ、今度は丸のままのサザエが一個。
 漬物は大根二種でタクワンと桜漬け(桜色の漬物)。
 サザエを何個使っているのか判然としないが、明らかに原価率が高そうに思える。
 安いときだったらサザエは二個で200円ほど、高いときなら300円はするだろう。
 練り製品の質もよく、なかなかこれは良くできた弁当と言わざるを得ない。

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 さて左手にワンカップを持って、何がうれしいかというと、さざえ飯が、酒の肴として食べられることだろう。
 ボクは駅弁にはお茶ではなく、ワンカップというのが大好きなのだ。
 ご飯に適度な旨味と醤油の香り、ときどきサザエにあたるとほんのり甘みを感じる。
 煮サザエはうまいのだけど個人的には無用だ。
 でも普通の人なら、感激するだろう。
 ボクはずぼらなので、ワンカップをわざわざ車窓に置き、左手にサザエの貝殻を持ち、爪楊枝を右手に持つのが煩わしい。
 さて、ボクが幕の内弁当を愛好するのは酒を飲みながら食べられるからだ。
 その意味では「さざえ飯」も飯自体が酒の魚となるので、とてもありがたい。

 山口線は山の中を縫うが如く走る。
 日は傾き、車窓からの眺めがいやに深として寂しい。
 「さざえ飯」でワンカップを一本。
 食べ終わって二本目を飲む。
 
2008年7月25日
デリカ丸久 島根県益田市あけぼの西15-5
宗味
http://www13.ocn.ne.jp/~migita/
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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このページは、管理人が2009年3月20日 15:24に書いたブログ記事です。

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