松江で普段着のお昼『かまや』の半チャンラーメン

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 島根県のアドバイザーをやっていて、思いのほかありがたいことがあって、それは市内の普段着の飯が食べられることだろう。
 なかなか悪くない県庁食堂、通りすがりの旅人が入店を躊躇するような洋食店、そして肩肘どころか、どこにも装飾めいたもののない油でべとつく中華料理店などなど。
 県の職員の方も、そんなにいいもん食べていないな、なんてことも思うし、意外にこんな庶民的で普通の暮らしぶりから、公務員も人の子だな、なんてあらぬ方に想像巡らせたりする。

 さて、正午前、一仕事終えて、次の会議までのひととき。
 そろそろお昼だな、というときにボクが見つけたのが『かまや』。
 「ここにしましょう」、というと「『かまや』かーー」という声がもれた。

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 それもそのはずで店に入ったら、なんとなく知った顔に出合う。
 県庁からもほど遠からず、松江に官庁街があるとしたら、この周辺なので、背広組ばっかりだ。

 『かまや』は店の外観のいわゆる“あばら屋”に見えることといい、店内といい。
 本当に町の食堂そのもの。
 合板の壁の品書き、これまたもっぱら実用的なテーブルに、並んだ調味料。
 品書きに「焼きめし」があるのを見つけて、ここに入店してよかったと思う。
 だれも感心のないことだろうが、品書きに「チキンライス」、「焼きめし」があることが1960年らしさの最たるものなのだ。
 「チキンライス」、「焼きめし」は1960年代には食堂の品書きでは花形だった。
 まことにモダンだったはずなのだ。
 店内にいると、この一角だけの時間が1960年代から止まっているのがわかる。
 時間よ止まれ、といったのが、店内のオバチャンなのか、奥の厨房にいるであろうオヤジさんかわからないながら、強力な磁場がこの狭苦しい一角にとどまって、沈滞し、よどんでいるようだ。

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 当然「焼きめし」をお願いするべきだが、ここに「半チャンラーメン(700円)」というのがある。
 神保町(東京都)暮らしも30年以上だ。
 「半チャンラーメン」の起源は神田神保町にあり、と思っているのだけど、松江市内にふんだんにこれが見られるのだ、何故だろう。
 新しい一品として、登場しているものなのか、もしくは「半チャンラーメン」の起源は、本当は松江なのかも知れない。
 ウナギの蒲焼きの起源を探る上で宍道湖周辺は重要な地である。
 大阪に出雲屋ありだし、このあたりのことは、邪馬台国を探すがごときロマンを感じている。
 ここにまた「半チャンラーメン」の謎が加わると、松江の奥深さの証明ともなるだろう。

 まあどうでもいいことばかり書いてきたが、勘を働かせて、「半チャンラーメン」にしたら、やっぱり「半焼きめしラーメン」がやってきた。
 インスタントコンソメの風味がある焼きめしの、古くさくて、懐かしいような味に落胆して、上にのった錦糸卵が古都松江らしいな、なんてちょっと感心もする。
 松江らしい濁ったスープのラーメンはやっぱりうまくはない。
 どこにも“うまい”を見つけられなくてがっかりしただろう、そう思われるかもしれない。
 が、もしもボクが松江で暮らしていたら、3日に1度は『かまや』に来るだろう。
 とても『かまや』が気に入ったのだ。
 ボクはぜんぜん美食家ではなく、いうなれば純粋なる味の探求者だ。
 しかも「美食家=味オンチ」と確信してもいる。
 だいたい、平凡な飯に敢えて惹かれるくらいでなくて、純粋なる味の探求者とはなれっこない。
 この平凡で目立ったところのない、『かまや』のお昼はたぶん中毒性のあるものに違いない。
 それが証拠に、松江ののび太君とボクが呼んでいる、意外に食に感心の強そうな男がこの店に通っている。
 こののび太君の舌が確かであると感じた一瞬でもあるのだ。

 ちょっともの足りない昼飯を食い、「次はチャンポンが食いたいな」、食べ終わってから3秒でこんなことを思う。
 ボクは永延に痩せられそうにない。

かまや 島根県松江市東茶町
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
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このページは、管理人が2009年6月21日 08:23に書いたブログ記事です。

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