2006年7月23日アーカイブ

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 京成線立石駅を仲見世方面に下りてすぐ目の前にある。『愛知屋』は肉屋である。薄汚れたトタン張り(?)のカンバンに白抜きで「愛知屋」とあり、その右手に肉売り場、左手3分の1が揚げ物を売っている。奥でオヤジさん3人が肉を切ったり、揚げたり、お客の対応をしたり。そこを外と仕切っているのがガラス張りの陳列ケース、その下が白いタイル張りである。
 立石の駅を初めて下りたら、まず最初に目に飛び込んできたのが、この店である。この店を見ただけで「立石っていいな」と間違いなく思うのがオヤジの嗅覚だ。
 当然帰りにはここでコロッケを買って帰るべく、じっくりと立石歩きをしてくる。時刻は夕闇迫る7時前。驚いたことには店の前には行列が出来ている。その待っているのが会社帰りのお父さんたちであるのがなんともいい。立石では「お父さん、帰りに愛知屋に寄ってきてね」なんてのが日常茶飯事なんだろう。また並んでいるお父さんたちは「コロッケがおやつだった」という年齢でもありそうだ。

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 コロッケで思い出すのはかれこれ40年以上前、我が故郷の家の前にあったのが尾花精肉店。ここで15円のコロッケを買ってもらうというのが楽しみだった。これを油紙に包んでもらってその場でかじりつく、あれがボクのコロッケの原典。そして味わいだけど、ここで重要なのはソースもなにもつけなくても食べてうまいこと。すなわちコロッケ自体に適度な塩味とコショウで味つけされていることなのだ。だから買ってすぐかぶりついてうまい。


 閑話休題。
 この『愛知屋』で売れているのがメンチカツ、そしてコロッケ。コロッケはいまどき80円である。当然、待ちに待って先頭にたってお願いしたのがコロッケ、そして下町ならではのレバカツ100円。ややたっぷり買ってオマケに着いてきたのがハムカツ80円ひとつ。このオマケになんだかとてもありがたいなと感じるのはどうしてなんだろう。
 そして、このコロッケのうまいのなんのって、いいですね。なにより大きすぎず、小さすぎず。子供のたなごころほどである。そのまま食べてうまい。たぶん揚げたてを一個だけ食べるともっともっとうまいんだろうな。ソースなんていらない味わいだ。しかもジャガイモの味わいが生きている。
 そう言えばスーパーや量販店のコロッケのほとんどがまずい上にデカイ。まったくコロッケの肝心なところを押さえていないのだ。そんなときに『愛知屋』のコロッケを食べてみろってんだい!

 とても腹減りで中央線に乗らなければならない、時間がないお金もないというときに入るのが「アルプス」である。だいたいここに来店している客をみても同様の状態に陥っているとしか思えない連中ばかりだ。いい年をしたオヤジなど、ここで慌ただしくカレーなどを食べているとそこはかとなく悲哀を感じるのではないか。とにかく値段の安いのと味がほどほどにいいこと。また席が多く、待たなくても食べられることがいい。
 カレーにコロッケやカツをのせても500円でおつりが来る。また大盛りにしても500円台で済むのでまことにありがたい。

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アルプス
http://www.yaechika.com/shop_detail/sp169/sp169.html

 山梨に行くとする。塩山だったり、勝沼だったり。ここでいつも困ってしまうのが、どこでお昼ご飯を食べるかということ。山梨名物といえば「ほうとう」なのだが、麺類では寂しいなと思いながら20号線を下っていく。ときには町々を見て歩き、また食堂らしきものがあるとクルマを止めてみる。それでもなかなか魅力的な食堂が見つからない。
 結局、もうすぐ大月というところで見つけたのが「いなだや」。「いなだや」は20号線が急カーブを切るその湾曲に立っている。民宿も兼ねているようで、釣り客にでも利用されているのだろう。

 どうして「いなだや」にクルマを止めたかというと、その簡素な作りにある。右手が食堂、左手が居酒屋であるようだ。中にはいると昼間から小上がりで酒を飲んでいるグループがいる。またボクの後からすぐに入ってきたのが、この辺りを営業で回っているらしきサラリーマン。
 ここで食べたのが豚カツ定食850円である。となりに味噌カツ定食800円というのがあって惹かれるところ大であったが、まあ味噌カツは名古屋に限るな、と思って豚カツにする。
 さて、運ばれて来たのはいたって普通の豚カツ定食。豚カツの大きさも普通なら、千切りキャベツも程良い山加減。豚カツの柔らかさからすると850円は山国なら安いし、みそ汁はシジミで薬味が三つ葉。お新香は寂しいのが残念だが、いい昼ご飯だったかな。

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大月 いなだや
山梨県大月市大月町真木2823

 前を通るたびに入ってみたかったのがこの店。3階建ての古めかしい外観。各層に緑色のタイル、そしてコンクリートの仕切、このビルの一番上部には青い丸瓦状のものが見える。このような形式の建物は他ではなかなか見ることが出来ない。
 日本橋本町は昔は古いビルが多くて歩いていても楽しいところであった。それが近年、どんどん取り壊されて高層ビルが目立ってきている。そんなとき『大勝軒』を見るとほっとする。ちなみにこの真ん前の鶏肉専門店とともに、なんとか後世に残せないものだろうか?
 さて、昼と夜の営業でなかなか入るに入れないでいた『大勝軒』。先週やっと夕ご飯をここで食べることが出来た。ラーメンも食べたいし、ご飯も食べたいと思ってメニューを見ると、驚いたことにカツ丼まである。中華にカツ丼あり、というのは意外に古い店に多いのだと思われる。それではカツ丼といきたいところを我慢してラーメンと小ライス、餃子の定食Bにする。これが850円。
 タンメンや餃子などの値段をみると、近年の神田、日本橋の相場からするとやや高め。これは老舗としては良識の線なんだろう。昔は明らかに安い店であったのが新興のチェーン店などがしきりにこのあたりで価格戦争をおっぱじめているのだ。そんなことどこ吹く風でいるのも良いのだろう。

 出てきた定食でまず目に飛び込んできたのがラーメンに入っているハム。ハムはチャーシューの代用なのかと思ったら、それもちゃーんと入っている。上品な醤油味のスープで程良い旨味がある、そして微かに香ばしいのは鶏ガラが主体であるようだ。そしてハムはともかくチャーシューがうまい。豚肉の味わいが残る淡い味つけで、これがいい。麺はかなり細く、これはもう少し太い方がいいと思うのだが全体に好きなタイプのラーメンである。

 ちょっと横道にそれるが最近、小津安二郎の『お茶漬けの味』で鶴田浩二演じる岡田がお代わりまでして食べていたラーメンがうまそうで、うまそうで仕方ない。『お茶漬けの味』はなんども見ているのだが、この場面がいちばん好きだというのもおかしな話だな。でも1952年以前のラーメンの味ってどんなものなのだろう。初めてラーメンを食べた記憶と共に昔のラーメンの味を想像するのだ。
 そして『大勝軒』なのだが、その古きラーメンの味わいに「やや近いものである」と思われる。でも本当に麺が細すぎるのが残念だ。
 餃子の味わいは在り来たりだが、うまい。ご飯がついて満足度もあり、ときどき『大勝軒』には立ち寄りたい。

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大勝軒 東京都中央区日本橋本町1丁目3-3

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