この立ち食いそば屋に初めて入ったのは、いったいいつ頃だろうか? もうかれこれ30年近くになるはず。その頃、三越の本売り場(今もあるんだろうか?)はミステリーが豊富にあって、その丁寧なカバーのつけ方もあって通ったものだ。その帰りに寄るのが、この店であったはず。
この店の売りは豊富な自家製天ぷら。竹-、春菊、げそ、イカなど、これがなかなか楽しい。また、初めて入ったときに驚いたのは汁の濃さが他を圧倒するぐらいに真っ黒なこと。これは東京(のうどん、そばの汁が醤油辛くてまずいという反省から、他の店が徐々に上品になってきても、今でもまったく変わっていない。
その真っ黒な汁だけど、すすってみると、イノシンの多さからかのたりとして重い。甘味の強く、旨味もあり、そして醤油辛い。いかにも鈍な味わいである。そしてここの、そばの小麦粉の比率が高くぼってとしているのに、非常に相性がよく、これがなかなかうまいにはうまいのだ。でも、天ぷらを3つものせて、その上、玉(卵)まで落としているオヤジを見たがとても真似が出来ないな。ボクはかき揚げひとつでもいっぱいいっぱいである。
また、今時、ほとんどの立ち食いの店は、自販機で食券を買うシステムになっている。それがここでは未だに「360円ね、そこに置いといて」という原始的で古(なシステムを通していて、これだけでもなんだか懐かしいのだ。
帰りがけに見上げると二階では酒が飲めるようである。これはなかなか穴場かも知れない。
さて我が日本橋、散髪も村町だし、.紙の専門店もあるので時々来ている。でも「六文ぞば」は本当に久方ぶりである。しかし五十路近く、食べた後にくるこのものもの悲しい気持ちはなんだろう。人生の悲哀、悔悟の念を噛みしめたい人におすすめ。
げそ天そば、360円
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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足立区京北食品「はと印本小粒納豆」