2006年9月18日アーカイブ

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 京成線町屋の駅は大好きなのだ。ホームに立つと荒川線を市電が町屋駅に滑り込み、また出ていくのが見える、これを眺めるだけで電車を2本は見送ってしまうのだ。でも下町といっても町屋は無差別で暖かみのない、そしてセンスのないビルにどんどん占有されてきている。それでもこの町屋の荒川線と京成線に仕切られた北西の一角だけに古い街並みが残っている。そこに向かうべく駅から尾竹橋通りを超えると『なんでも鑑定団』で有名になった「流体力学」という店がある。その店を過ぎてすぐ右手に折れると『小林』を見つけることができるのだ。この店、串に刺したモツ煮込みで有名。すなわち大衆酒場なのである。

 町屋の駅は足立市場に行くときに乗り替えるのだが、駅から見る限りビルが迫ってきており、魅力を感じたことがない。それで町屋を歩いてみようなんて思ってもみないでいた。そんなときに久しく会わなかった知り合いと立ち話をしている内に下町の飲み屋の話題で盛り上がり、『小林』の名もあがってきた。でも彼が教えてくれたのはここで食べる「つけ麺」がうまいということだったのだ。「面白いね」と言うと、親切にも地図をコピーして場所まで教えてくれた。
 そんなことで仕事が早めに終わった日に「つけ麺」を食べに町屋に行ってみるかと神保町で買い物を済まして、ふと靖国通りの古本屋で見つけたのが「散歩の達人」の千住・町屋特集。こんな偶然ってあるんだろうかとページを開くと『小林』がしっかり取り上げられているのだ、店主の顔写真とともに。でも予め雑誌の特集を読んでからその店に行くというのはみっともないではないか。千代田線での10分ほど読むべきか、読まないで行くべきか悩んだ末に、結局「散歩の達人」はバッグに放り込んだまま。町屋駅を出たのだ。

 そして『小林』でモツ煮込みなどで酒を飲んだ後にお願いして、出てきたのが思いもかけない形の「つけ麺」だったのだ。ここで今時流行っているつけ麺というのがどんなものなのかを書くと、〈太目まっすぐな中華麺を茹でて水洗い、それを皿に盛り上げて出す。つけじるはラーメンのスープよりは濃いが飲めなくもないほどの味わい〉というもの。ところが『小林』のは冷たい水に縮れ麺が入っている。しかもつけじるがはっきり飲めないと主張するかのように黒く濃そうだ。

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 つけじるにはネギとメンマ、そして海苔が浮かんでいる。その板海苔に大量のコショウ。この海苔の上にコショウがのせられているのがなんとも懐かしい。確か子供の頃のラーメンには同じようにコショウがのっていたのだ。海苔を沈めて、麺をからめてすすると意外なほどにさっぱりとした塩分濃度の高い汁である。そしてその塩分を妨げない旨味。これはまことにバランスがいい。後で調べるとラーメンスープの醤油ダレをモツ煮込みの汁で割ったものだという。つけじるに感じた旨味はモツから出たエキスなのである。
 大衆酒場なので夕方5時からの営業。でもこのつけ麺なら昼に食べてもいいのではないか? ボクは今時の「大勝軒系」のつけ麺よりは絶対にこっちがうまいと思う。

 市場仲間のスーパーに行ったとき、惣菜や加工品の棚に懐かしい「マルシンハンバーグ」の文字を見つけた。「これまだ売っているんだな」と店主に聞くと、「これは今でもよく売れるんだよ」という。じゃあ2,3個買って帰ろうかなと聞くとなんと「売り切れ」だった。
 この店で気がついたのはマルシンハンバーグを肉やハムなどのコーナーではなく、魚肉ソーセージや惣菜のコーナーに置かれていたこと。そして市場で探すと、やはり肉関係の店にはなくて塩干、惣菜などを置く仲買の店にあったのである。

「不思議だな。肉製品でも惣菜関係で流通するのと、明らかに食肉関係の店で流通するのがあるんだね」
 こんなことに感心していたら、
「バカだな、塩干・惣菜を売る店ではね。加工品はなんでも扱うわけよ。逆に生鮮品は扱わない。それにマルシンフーズは餃子もあるし、どう見ても惣菜メーカーなんだよ」
 仲卸なので1箱(10個入り)単位である。卸値からすると1個100円前後となる。そして翌日1箱持ち帰り、箱から出てきたのが昔ながらの紙(?)で包装されたもの。この紙に印刷された「みみちゃん」というのも懐かしいな。

 マルシンハンバーグを初めて買ったのはもう30年以上前のこと。世田谷駒沢交差点そばの西友で姉と買ったんだった。
 上京してきて三軒茶屋で机や椅子、洗面器、箒などを買って、弦巻の四畳半一間のアパートがやっと住まいらしくなった。鍋釜、食器などは実家から届いていて、気が付くと夕方近い。そして本当に初めての自炊というときに出くわしたのが「マルシンハンバーグ」なのだ。
 初めての食料品の買い出しというのは思った以上に大変なもの。姉が付いてきてくれたとはいえ、想像以上の大荷物となってしまった。そこに姉がこれは便利だからと言って2つ薄いビニール袋にいれてカゴに入れた。そう言えばこの薄いビニール(?)の袋に自分で野菜などを入れるというのもこのときが初めて経験した。

 このマルシンハンバーグ、袋から取り出すと表面に白くラードがへばりついている。フライパンを熱すると油を引かないでそのまま焼ける便利なものなのだ。ご飯を炊いて、後はマルシンハンバーグを焼くだけという簡単な食事が18歳、一人暮らし一年目の定番になったのは言うまでもない。当時いくらだったのだろう? これで夕食というのが少し贅沢な気がしていたのだ。

 さて、ほぼ20年以上食べていなかった、マルシンハンバーグだが、思った以上にうまいのだ。豚鶏牛と3種類の肉が混ぜ合わせてある。そこに工夫があるのだろうか、焼き上がりが軟らかく、子供達にも人気上々。遅く帰ってきた一人っきりのお父さんの夕食にもぴったりかも。
 昔はこれにソースをかけて食べていた。太郎はケチャップを山盛りにしている。そう言えば、これに醤油をかけていたヤツがいたな。アイツどうしているんだろう?

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マルシンフーズ
http://www.marushin-foods.co.jp/
●これは一部書き直して「お魚三昧日記」から移したもの。コメントいただいた方のはごめん、ごめん

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