有楽町ガード下「谷」のラーメン600円

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 有楽町駅を下りる。そのまま東京駅方面にガード下を歩くとどうなるか? そこは昭和30年代を通り越して戦前戦後の姿そのままの暗がりが広がっているのだ。ここにも今や「明るく清潔な死の世界」が広がりつつあるが、まだまだ踏ん張って「人らしい」姿を、そのままに生きている暗闇がある。その路地の先に「谷」はあった。
 まるでネズミの穴のようではないか? そこにはやきとり屋、小料理屋があり、チャーハンとラーメンの「谷」がある。この路地にある自動券売機で600円なりのラーメンの食券を買い求め狭苦しい路地から、またまた狭苦しい店内に入る。左手の厨房は客席から見て無闇に高く感じる。そしてカウンターを挟んで右手に小さなテーブルが3つ。奥に幾重にも筋の入ったテレビ画面が時に縦に揺れている。これなど四国の片田舎でむりやり毎日放送に合わせた時のようである。

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 そこにラーメンの食券を置くと無言で大男が先に入った客のチャーハンの中華鍋を振っているのだ。ズンドコズン、ズッッッッドドンズン、ズンドコズン、ズッッッッドドンズン。ズンが「トン」と聞こえている。すなわち重い確かな地響きのようである。周りを見渡すとみなチャーハンを注文しているのだ。
 そのチャーハンの合間を縫ってラーメンは作られている。そして来たのが澄んだスープのとてもスタンダードなものである。

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 とてもスープが多い、麺は太く沈んでいる。メンマ、海苔にチャーシューが浮かんでいる。そのたっぷりのスープをすすってみる。これがなんとも素晴らしい味わいなのだ。でももの足りない。でもうまい。どうしてこんなにうまいんだろう。そしてもの足りないんだろう。しかしうまいのだ、とスープだけ飲み干してしまいたい。「でもでも麺もチャーシューも海苔もメンマも残しちゃダメよ」とボクの耳元で呟いているのは食の女神だろうか? 一気に総てを食べ尽くしてしまった。ここにいたってもうまいのか普通なのか判然としない。でも「また食べたいのだ」。
 ぼんやり店を出たらそこは終戦後そのままの有楽町ガード下なのである。フランク永井の「有楽町で逢いましょう」という歌が出たのが1957年、すなわち昭和32年なのだがそれ以前の闇市の匂いを残しているのがこのあたりなのだ。

 おい今時の能足りんの都市開発者よまさかこの生きている、有機的な人の温かみを狙っていないだろうな。君たちは明らかに人の血の通った暖かみを忘れている。もっと人としてまっとうな心を取り戻してから都市開発をして欲しいんだけどね。コノヤロ!

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このページは、管理人が2006年10月13日 21:02に書いたブログ記事です。

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