神保町一丁目「とんかつ いもや」とんかつ定食700円

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 築地にときどき魚を見に行くようになって20年以上になる。初めての築地行きは学生の頃から「食通」として通っていた友達と場内でさんざん蹴飛ばされて、疲れ果てて(当時の築地は恐かったのだ)、逃げるように場内の飲食店街にたどり着いた。そして彼が本で見たことがあるといって入ったのが「豊ちゃん」なのである。ボクはカツ丼、彼はカツの定食。1000円近い値段で「高いな」でも「期待大」でやってきたものに二人で「がっかり」した。
 どうして「がっかり」したかというと我々お茶の水・神保町で学生時代、そして仕事をしていると「とんかつ」というと「いもや」となる。そして「いもや」と比べて「豊ちゃん」のが明らかに貧弱なのだ。
 そして本題の「いもや」なのだが、神保町界隈、飯田橋、神田錦町まで点々と散在する。そして天ぷら、天丼、とんかつという3つの「いもや」があって、その手軽さ、うまさを誇りに誇っているのだ。「じゃっじゃあああん!」。若い頃、天丼の「いもや」には毎日でも行ける、でも「とんかつ いもや」は少々お高いと思っていた。でも行きたいな! と「とんかつ いもや」、神保町1丁目店を目差す。残念ながら昔の値段を思えていないがいつもお願いするのが「とんかつ」なんである。今、これが700円、今のボクはちょっとお金持ちになったからこれなら毎日食べても大丈夫だ? 昔、「とんかつとひれかつ、そしてご飯を」と行ったヤツがいてあまりのリッチさ加減に「こういうのがブルジョアだって言うの」とか「プチブルだろ」なんてバカなことを言ったのである。考えてみると今でも「ひれかつ」の値段を知らない。やっぱりボクは貧乏だ。

 この店に入ると右手に厨房、それをぐるりとLの字型にカウンターが取り囲んでいる。そのLの角近くに山盛りのせん切りキャベツがのせられた平皿が並ぶ。その斜め前に揚げ鍋。メニューはとんかつだけなので作業は単純である。注文と共に油に投げ込まれた「とんかつ」以前がピチピチ音を立てている。客は待つのだ我慢して我慢して。このとき周りを見回そう。とんかつを待っているのは3人、いや4人なのだ。平皿の数は4つ。そして最初の2枚が揚がる。すかさずお櫃(おひつ)からご飯、シジミのみそ汁が順番通りの客の前に置かれる。そしてシャクシャクシャクシャクとトンカツを切る音がして、また静かに客の前に置かれるのだ。「あと2人だ」とため息をつく。そして揚げ担当のお兄さんがキャベツ大盛りの平皿を3つ作る。店内は混んできて後ろの長椅子で待つひとも出てきた。そして待って待ってやって来たのが「ほんとうにこれで700円なのだろうか?」と思うほどデカイとんかつ。ご飯、シジミのみそ汁。
 待ってましたとばかりにトンカツソースをじゃぼじゃぼにかける。このソースが一升瓶ブルドッグソースであることはカウンターから丸見えである。ブルドッグはあまり好きではないのだが、そんなことを考えている余裕がない。キャベツにもくるりぐるりとかけ回す。そしてシジミのみそ汁で一息入れる。
 後はひたすら食らうのだけど、「とんかつ いもや」の凄いところはロース肉が驚くほど柔らかく、そして芳醇である。目がウルウルするほどうまい。せん切りのキャベツ、とんかつ、シジミのみそ汁でちょっと一休みしてとんかつ。食べたあとにまた来たくなるのだよ「いもや」のとんかつは。

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このページは、管理人が2006年10月13日 08:32に書いたブログ記事です。

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