神田神保町とんかつ『ニューポート』

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 ボクは田舎も片田舎、ある意味山奥の小さな町に生まれたのだ。だから東京に出てきて「初めて食べた」というものも数知れずある。そんななかにカキフライがある。そのカキフライを初めて食べたのは「どこだったかな」が思い出せないのだ。そこで思いめぐらすに最初に住んだ世田谷区弦巻、お金があったときに立ち寄った洋食屋さんだろうか? でも確か偏食気味にチキンフライばかり食べていた。それでは小岩だろうか? でも確かに食べたという記憶がない。そんななかで間違いなくカキフライを食べたという記憶が存在するのが神保町の『ニューポート』である。その1970年代に間違いなくカキフライをこの油っこい店内で食べているのをまざまざと記憶する。一緒に入ったというのが同年の明大生。ボクの学校のなわばりからするとやや離れている金華小学校の前あたりにあって、店名を忘れてしまったパチンコの人生劇場前のすき焼き屋(安いのだ)、ラーメンの『伊峡』『天丼のいもや』『とんかつのいもや』とともに当時は贅沢をしに明大から坂を下っていた。
 すき焼き屋は遙か昔になくなり、2店舗あった『伊峡』は本店がなくなり、『天丼のいもや』のオヤジさんはお亡くなりになったという。また『とんかつのいもや』はどちらかというと従業員の移り変わりが激しく、懐かしさに欠けるのである。そんななか30年のときがなかったかのように『ニューポート』があるのだ。
 この前は年に何回も通り過ぎる。でもなぜかいつも「準備中」の札を見るばかり。どうしたんだろうと、久しぶりに通りかかったらやっと開いていたのだ。
 入ったら店内も30年前と変わらない。べたべたする床もまったく「べたべたする」し、カウンター奥のオヤジさんもおんなし。
「やっぱりカキフライかな」と思った。でも待てよ、ここでトンカツを食ったことってあるんだろうか? それで今回はロースカツ750円にする。また昨年から今年にかけてカキフライを食べ過ぎた。ノロウイルスの原因は決してカキにだけあるとは言えないのに、暮れにはカキが仲卸でも売れなくて困っていたのだ。それがこちらに回ってくる。こんなところ、日本ていう国は困ったものだ。
 ひとしきり待って出来上がったのが目の前に。これがなんとも普通でいいのである。そこにドバドバっとソースをかけて白いご飯と……。そうだここはみそ汁に豚肉が入っている。すなわち味噌仕立ての「豚汁」だったのだっけ、と思い出す。
「20年以上になるんです。前に来たのは」と言うと「来年にはウチもしめちゃうからね」とのこと。それはあまりにも寂しいではないか?
 いたって良くできたスタンダードなロースカツはとても魅力的なものだ。うまい。『とんかつのいもや』とはひと味違ってときどきはこちらにも来たいと思ったところなのだ。
 いろいろ話をして店を出てから、前々から知りたいと思っていた店名の謂われを聞き忘れたことに気がついた。友達と初めてきたときに店名から浮かんできたのは「ニューポートジャズフェスティバル」のこと。たしかその頃に『真夏の夜のジャズ』が再上映されていて話題になっていたように記憶する。1960年が日本初上映だと言うことだからオヤジさんあたりの年代とも符合する。とんかつ屋に馴染まない店名の由来は「ニューポートジャズフェスティバル」なんだろうか?

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ニューポート 東京都千代田区神田神保町1丁目2


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このページは、管理人が2007年1月26日 13:17に書いたブログ記事です。

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