京成線立石駅を仲見世方面に下りてすぐ目の前にある。『愛知屋』は肉屋である。薄汚れたトタン張り(?)のカンバンに白抜きで「愛知屋」とあり、その右手に肉売り場、左手3分の1が揚げ物を売っている。奥でオヤジさん3人が肉を切ったり、揚げたり、お客の対応をしたり。そこを外と仕切っているのがガラス張りの陳列ケース、その下が白いタイル張りである。
立石の駅を初めて下りたら、まず最初に目に飛び込んできたのが、この店である。この店を見ただけで「立石っていいな」と間違いなく思うのがオヤジの嗅覚だ。
当然帰りにはここでコロッケを買って帰るべく、じっくりと立石歩きをしてくる。時刻は夕闇迫る7時前。驚いたことには店の前には行列が出来ている。その待っているのが会社帰りのお父さんたちであるのがなんともいい。立石では「お父さん、帰りに愛知屋に寄ってきてね」なんてのが日常茶飯事なんだろう。また並んでいるお父さんたちは「コロッケがおやつだった」という年齢でもありそうだ。
コロッケで思い出すのはかれこれ40年以上前、我が故郷の家の前にあったのが尾花精肉店。ここで15円のコロッケを買ってもらうというのが楽しみだった。これを油紙に包んでもらってその場でかじりつく、あれがボクのコロッケの原典。そして味わいだけど、ここで重要なのはソースもなにもつけなくても食べてうまいこと。すなわちコロッケ自体に適度な塩味とコショウで味つけされていることなのだ。だから買ってすぐかぶりついてうまい。
閑話休題。
この『愛知屋』で売れているのがメンチカツ、そしてコロッケ。コロッケはいまどき80円である。当然、待ちに待って先頭にたってお願いしたのがコロッケ、そして下町ならではのレバカツ100円。ややたっぷり買ってオマケに着いてきたのがハムカツ80円ひとつ。このオマケになんだかとてもありがたいなと感じるのはどうしてなんだろう。
そして、このコロッケのうまいのなんのって、いいですね。なにより大きすぎず、小さすぎず。子供のたなごころほどである。そのまま食べてうまい。たぶん揚げたてを一個だけ食べるともっともっとうまいんだろうな。ソースなんていらない味わいだ。しかもジャガイモの味わいが生きている。
そう言えばスーパーや量販店のコロッケのほとんどがまずい上にデカイ。まったくコロッケの肝心なところを押さえていないのだ。そんなときに『愛知屋』のコロッケを食べてみろってんだい!