お総菜・惣菜・お持ち帰り: 2006年8月アーカイブ

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 飯能祭のときに見つけた小さなてんぷら屋さんである。飯能大通りは昔、定期的に近隣から産物が持ち寄られて市の立ったところ。古き良き家並みが残っているのだが、飯能夏祭りの日で、それはたくさんの騒がしい露店の奥に隠れている。そんな一角にまだ真新しい、とてもこぎれいな店があり、そのガラス窓の向こうに、ご夫婦で天ぷらを揚げているのを見つけた。そのにこやかに、てんぷらを揚げている女性の優しそうな雰囲気がとてもいい。

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 店内をのぞいてもテーブルも座席もないので持ち帰り専門であるようだ。

 ついふらふらっと店内におじゃま虫。姫と一緒にあろうことか、ここでてんぷらを食べさせてもらう。これがいい味なんである。てんぷらの衣自体にも味つけがされているらしく、まずいただいたイカてんが、それだけ食べてもうまい。衣のさくっとしたのとイカの適度な柔らかさ、「ここに生ビールがあったら最高なのに!」と改めて買ってきてしまいそうになる。このイカてんをあっという間に平らげてもうひとつ。

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「なにかお勧めなのありますか?」
 ワクワクしながら聞くと、お二人はにこやかにあれやこれや考えて、
「かき揚げかな。これはねイカ、サクラエビに玉ねぎといろんな野菜が入っているんだ。まあこれだけ入ってるのは珍しいと思うよ」
 さっそく、かき揚げをむしゃむしゃ。姫はチョコバナナに夢中で「くれ」とは言わない。多種類の具のせいだろうか? 味わいにふくらみがある。その全体をまとめているのが玉ねぎであるようだ。

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 さて、真夏ではなく、また祭の日ではなく、クルマで来ているときのお土産は「小川」でかき揚げと決めてお店を後にした。

 ボクは町の良さは、風景の一部となりきっている個人経営の小売店が並んでいることだと思っている。この「てんぷら 小川」などご夫婦共々、飯能の街並みになくてはならないものであると、よそ者のボクでも思う。こんなことを同じように思っている小学生や中学生は多いのではないだろうか。ボクの幼い日にそんな思いで通り過ぎていた店は、今でも瞼の裏に焼き付いている。
 それとこれは「飯能の豆腐は真四角なのだ」の続きなのだが、この大通りの一角に「問屋」という昔は食料品の市場を運営していた豆腐屋さんがある。そこが小川さんなのであるが、この「てんぷら 小川」さんが「問屋」からの分家、また真四角な豆腐を作っている「とんき食品」も分家なのだ。この「問屋」さんが市場を運営していたときというのはどのようなものだったのだろう。例えば個人経営の市場は各地にあり、例えば八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合なども「公設」ではない。「公設」ほどの規模はなく、小さな地域の流通の要としての市場ってどんなものなんだろう?

 神田多町(たちょう)はその昔、やっちゃ場のあった場所。多くの野菜商、食料を扱う店が軒を連ねていたのだ。そんな多町には今でも古き東京の名残がある。そのひとつが『鳥正』なのだ。ちなみに屋号には「鳥」、鶏肉の「鶏」ではないので間違えてはいけない。と言いながら、最近、鶏肉屋・もしくは鶏肉専門店の屋号で使われるのは「鳥」であるのに気づいたのだ。まぬけだ! またこの店の品書きは総てカタカナ、そのにレジ袋の屋号には「鳥ショウ」の文字も見える。このカタカナ使いがモダンであった頃の名残かも知れない。

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 いつも「鳥正」に立ち寄るときには神保町から靖国通りを東に歩き、神田多町の路地を神田駅に向かう。なぜかこのあたりは夜になると暗くて都心にあってどこか取り残されたようなところである。木造建築も残っているし、「サカエヤ・ミルクホール」、行司の二十二代木村庄之助が始めた「庄之助最中」の灯りが闇にポツンと浮かんでいる。そして歩くことしばし、左手に木枠の引き戸が見えて灯りがこうこうともれてくる。そこが「鳥正」なのだ。

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 店の右手では揚げ物を揚げているし、左手にはコロッケや鶏肉を買いに来たお客さんが順番を待っている。そんな一般客にまじって真っ白な割烹着を身につけた料理人が鶏肉を取りにくる。ここは鶏肉専門店として見事な鶏肉、また砂肝や肝が置いてある。ときには刺身用の正肉、砂肝、レバーがあり、これもまたうまいのだ。
 店に入ると揚げ物をしている正面のタイルに品書きが見える。ハムカツ120円、トンカツ300円などもあるが中心となるのは何と言っても鶏肉を使ったもの。上トリカツ250円、並200円、ササミカツ170円なんてあり、メンチコロッケ160円もコロッケ120円も鶏肉が入っている。コロッケは注文を受けてから揚げる。この時間が長〜く感じるのはなぜだろう。そして揚げたてを経木に包んでくれる。そのいい香りが中央線でも注目されること必然なのだ。ちょっと恥ずかしいけど我慢我慢。
 さて、持ち帰った「鳥ショウ」の神田コロッケ、大急ぎで経木を開こう。そしてなにもつけないでかぶりつく。ホックリしたジャガイモの味に鶏のミンチからジワリと鶏肉の脂が染み出す。塩加減もほどよく、まあお父さんはビールといきますか。

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多町や神田周辺のことは「西平の神田探偵団」を見るべし
http://nishihei.com/

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