丼・どんぶり図鑑: 2006年8月アーカイブ

 実を言うと丼物は「どんぶり」に入っていて欲しい。例えばカツ丼、親子丼、他人丼、玉子丼、鰻丼、ともに重箱に入ったヤツはきらいだ。でも大方の店で「カツ重」「たまご重」「うな重」と「重」を明記しているだろう、と言うかも知れないがそうでもないのだ。この猿楽町の「浅野屋」には時々昼飯を食いに行く。ちょっと遠いのだが、知り合いにも会わないし時刻を外すと空いていてほっとできる。そこで空きっ腹で食べるのはカツ丼なのだが、これが上になると「重」になるようなのだ。でもかれこれ4,5年行ってないから「丼」はやめて「重」に変えたのかな。でもとにかく「重」でカツ丼を食べると不愉快でならない。
 ちなみにボクは自前ではぜったいに上は注文しない。神保町周辺で仕事をしていると気を利かせて昼飯や夕ご飯にこんなものをとってくれるのだ。でもどうしてボクには「なにを頼みたいのか」聞かないでいつもカツ丼をとってくれるのか最近とても気に掛かる疑問点だ。
 ここで断っておく必要があるのだけれど、「江戸老舗 神田蕎麦乃地図(神田当たりのそば屋でもらえる)」というパンフレットを見るとこの「浅野屋」は創業128年の歴史があり、また街の素朴なそば屋としてとてもうまい店なのだ。当然、カツ丼も適度な甘味と、カツが軟らかくてうまい。その上、もりやざるを頼むと並盛りでも大盛りなのも偉い。ここで言いたいのはカツ丼が「重」であるのがきらいだと言うこと。
 なにしろ「重」には保温性保湿性がある。ということは入れたご飯が適度に冷えないし乾かない。はあいいかというと、ぜんぜんよくないのだ。保湿性保温性があるということは、とうぜん蒸れるということだ。この蒸れ蒸れが大嫌いなのだ。それにもう一つ、ワッシワッシとかき込めない。それでも「浅野屋」のカツ丼(重)はまだいい。それは丸いからである。はっきり言って四角い重にカツ丼が入っていたらボクは耐えられない。「ごめんなさい」と言って金を払わないで出てくる。
 はっきり結論づけよう「丼」とあって「重」は犯罪行為だ。

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浅野屋 千代田区猿楽町2の6の7

 このところカツ丼が食べたくて、食べたくて仕方がない。でもトンカツは揚げている。その上、卵でとじているのだからカロリーが高い。こんなことで悩んでいたら浮かんできたのが「他人丼(たにんどんぶり)」である。
 でも「光陽」に他人丼があるだろうか? 玉子丼はある。玉子丼は玉ねぎを甘い汁で煮て卵でとじる。これじゃあまりにもの足りない。
「おかあさん、他には丼物ないかな」
「そうね玉ねぎと肉を卵でとじた肉丼があるわよ」
「それ他人丼じゃないの」
「他人丼、そうよ他人丼よ。名前が出てこなかったの」
 そして『光陽』で出てきたのが驚いたことに豚肉を使ったもの。そう他人丼の「他人」が豚肉なのだ。この他人丼のうまいこと。これでみそ汁、お新香つき500円だから、土曜日は他人丼に決めてもいいくらいだ。

 これで暇そうな年寄りにいろいろ聞いてみた。「当たり前だろ。他人丼は豚肉で作るの」。そして飛び出してきたのが「開化丼」という丼の名前。それが牛肉と卵を合わせたもの。でも子供の頃の記憶をたどると、それが他人丼だったはず。
 さて最後に整理してみよう。ボクの記憶が間違いなければ関西、四国での「他人丼」は牛肉を使っていた。関東での「他人丼」は基本的には豚肉を使う。牛肉を使ったものは「開化丼」となる。そう言えば関西とか四国に「開化丼」というのはあっただろうか? 

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 川崎駅の地下街に迷い込んだのは午後5時近かったと思う。広大な空間に案内板はほとんどなく、非常に不親切である。これなど東京駅八重洲地下街と比べて地元以外の人に対する思いやりに欠ける。またこの地下街も大きいばかりでデザイン的にも、また地上に出ることなど配慮に欠ける部分が多いのはなぜなんだろう。川崎駅と言い、この広大な地下街といい、もっと人間味のある人物に造ってもらいたかったな。
 川崎駅に入って、また地下に潜り込む。さっきの地下街と、駅の地下街は繋がっているのだろうか? 駅の地下街は逆に狭く全体にごみごみしている。「腹が減った」という太郎のために鮟鱇さんに教わったラーメン街に。ここを回ってみて、とてつもなく混雑している店と、ほとんど客のいない店があり、その極端なのに驚く。ながなが行列が続く店はうまそうだし、一人も客の見えない店はまずそうだ。
 我慢の限界に近い太郎は1階にあった豚丼の店がいいというので、その『豚丼和幸』に入る。明らかにチェーン店。向かえてくれた店員のやるきのなさが気になる。このアルバイト、まったく接客をしている雰囲気がない。メニューはいろいろあったが単純に豚丼500円というのを注文する。松竹梅の「梅」である。これは竹松とどう変わるのかがわからなかったためだ。例えば松竹と肉が多いのか、またご飯はどれくらいなのか、わかりやすいメニューなどが見あたらなかった。
 注文して、すぐに来るのかと思った豚丼がなかなか来ない。腹が減って死にそうだという太郎は泣きそうな顔をしている。まあ、そんなに目くじらを立てるほどでもなく豚丼3つが来る。
 タレで焼いた豚肉、シジミのみそ汁、お新香。すぐに太郎が丼を抱え込んだ。豚丼はタレが甘く、そして香ばしさやうまさに深みのないもの。豚自体もそんなにいいとは思えない。これは作り手の不手際があるのかも知れない。火加減をもう少し強くして焼いたときの香ばしさが出るようにする。また焼いたときの脂が染み出してジューっと音を立てているようだともっといい。もしくは香ばしさが感じられないのはレトルトなのかも知れない。近年レトルトはよくできている。
 ただチェーン店の丼として考えるとよくできている。500円でここまでやれるのか、と思うと街の食堂はびびるだろうな。だいたい、シジミのみそ汁がうまいし、ほんの少しとはいえ漬物もいい。
 太郎は「量が多いんなら松にしたかった」という感想。これは牛丼のない吉野屋よりいいかも?

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豚丼和幸
http://www.wako-group.co.jp/02shop_16butadon.html

 もうかれこれ30年近く通っているのが「天丼いもや」である。連れて行ってくれたのは明治大学に通っていた予備校からの仲間。「いっしょに受験しようぜ」といってボクも明治を受けて、なぜだか滑って転び、彼もボクと一緒に駿河台の大学を受けて、こんどは反対に彼が滑って転んだ。
 この明治大学裏はどちらかというと明治のなわばりであって、古本屋街に向かうにも回り道になって死角となっていた。でも今考えると彼と行ったのが「天ぷらいもや」であったのか「天丼いもや」であったのは判然としない。まあ、どうでもいいか?
 さてここで食べるのが「天丼並盛り500円」。これを大盛りにすると650円だっただろうか? 若い頃はいつも大盛りにした。そしてご飯粒ひとつ残さないで食べると、これが並盛りと同じ500円になる。毎年明治の新入生が初めて来店する。すると先輩らしき学生がこのシステムをそっと教えているのが見られたものだ。でも最近、あまりこの光景ない。むしろ出てきた並盛りに「ボク全部食べられるかな?」なんて情けないのがいる。
 その並盛りだが長い間、450円であった。これを500円にしたときのオヤジさんのすまなさそうな顔を覚えている。まさに誠実でしかもありがたい店なのだ。
 さて週に一度は通っていた「いもや」であるが最近は2,3ヶ月に一度丼をかき込みに行く。天ぷらはきす、いか、えび、かぼちゃ、板海苔。これは30年来まったく変わっていない。これに辛口の丼つゆ。この辛口のどんつゆにからりと揚げたての天ぷらがうまい。「いもや」の味わいは、みそ汁もそうだが、どこまでも江戸風の塩辛い味わい。これがなぜかしら腹減りの身にしみるのだ。
 食べ終わったらお茶をもう一杯飲み干して店を出る。この言いしれぬ満足感、味わって見ないとわからね〜だろうな。

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天丼いもや 東京都千代田区神田神保町1-22

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