神戸の「オリバーソース」の創業は1923年だとある。これは関西で日本初のスターソースが生まれてから30年近く後、決して早い創業とは言えそうにない。ただ、この会社が歴史に名を残すのはトンカツソースを開発したことにある。トンカツソース(濃度のあるソース)は、ウスターソースがイギリスからの輸入ものを模索し作ったのと違い、まったく新しい発想のソースである。
そんな「オリバーソース」の「どろソース」を初めて知ったのは、確か15年以上前。我が故郷から上京する途中、必ず京都か大阪に立ち寄るのだけれど、その大阪難波で買い求めたと記憶する。そのときは珍しいラベルだというだけで、「どろソース」という存在はまったく知らなかった。
そして帰宅してさっそく使って驚くとともに、以後、我が家での常備調味料となってしまっている。だいたい西日本ではウスターソースの使用頻度が高く、ときに何にでもかけてしまう。我が子供の頃には天ぷらにかけるのは当たり前だったし、お祭りの屋台で売るタコの天ぷらには、あらかじめソースがかかっていた。このソースの匂いにアセチレンガスの光が懐かしいな。まあ、まあ、それは置いておくとして、我が家で普段使っているのは「イチミツボシ 加賀屋」のお好み焼きソースである。これがかなりの甘口。本来お好み焼きに使うものをフライなどに使っているので、それに加えてボク用にブルドッグのウスターソースが並ぶ。でもこれは味わい的に好みのものではなく、それでも家族が勝手に買ってくるもので言うなればイヤイヤ使っているのである。ここに登場するのがオリバーの「どろソース」である。ブルドッグに、少し「どろ」を加えるととたんに味が良くなる。またときには「どろソース」だけというのも刺激的。
さて「どろソース」とはなんぞや、という話が後になってしまった。これはウスターソースを造るときに熟成期間が必要となる。そのときに熟成タンクの底にたまった「泥」のような部分。ここには野菜から出る旨味も、スパイスも高濃度で溜まっている。その味わいはスパイスの刺激が強く辛い、酸味旨味も強く濃い。
我が家でフライを食べるときには、まずブルドッグで食べて、「どろソース」で締めるのを常としている。またせん切りキャベツやサラダには「どろソース」というのが私流。これにレモンで口中すっきり感があって、肥満気味のオヤジには満腹感を助長してくれるからうれしい。
ついでに最後につけ加えるとオリバーの「どろソース」は関東でもっとも手に入れやすいもの。他社にも「どろソース」もしくは同様のソースがある。あれこれ試してみたいのだが、なかなか近所で見つからない。ああ、こんなことを考えていると関西にソースを買いに行きたくなる。
オリバーソース
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