2006年7月13日アーカイブ

 江東区森下町に「フジマート」という地味なスーパーがあって繁盛していた。そこの片隅に見つけたのが「四ツ目納豆」である。まずデザインが素晴らしい。このパッケージだけでも買う価値あり。
 そして、この「四ツ目納豆製造所」の裏側にある住所を見ていたら「毛利」という地名が書かれている。これは長州毛利家の下屋敷でもあったということか。また「四ツ目」とは東陽町から錦糸町を経て押上に向かう通りのこと。だいたいこの「四ツ目」という言葉自体曰くありげだ。そして、ますます「四ツ目納豆」を買うのが楽しくなるのだ。
 外見はともかく中身はいたって普通の納豆。小粒ながら、これといった特徴がない。でもきまじめに下町で手作り、しかも容器に入れるのも、紙のラベルを巻くのも家内でやってますという風情がいい。私、以降、下町で「四ツ目納豆」を見つけたら必ず買ってくることを誓うのだ。
 また、これは「四ツ目納豆」さんにお願い。無粋なバーコードはもっと端っこか裏側につけて欲しいな。

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四ツ目納豆製造所 東京都江東区毛利1の19の6

 まさか西新宿に納豆製造所があるなんて思いもよらなかった。しかもなかなか地納豆として「素朴」な作り。納豆名の「丸ひ」とはなんだろうと思わず考えさせられる。
 この納豆も地納豆らしく新宿区から近い中野区新井薬師前駅からの商店街にある新井薬師駅商店街でみつけた。とうぜん売っていたのは豆腐屋で、「地納豆は豆腐屋にあり」を証明している。
 小さな入れ物を開けるとやや大粒の納豆。表面ははっきり白く納豆菌のうまそうな色合い。何もつけないで食べると大豆そのものの味わいがある。また豆の持つコクもある。ついているのは辛子だけというのもいいな。

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高橋商店納豆製造所 新宿区西新宿4の24の6

 中野の製麺所で、うどん玉を買っていて見つけたもの。1袋・数十円ではなかったかと思うのだが慌ただしくてレシートをなくしてしまった。
 さて「うどんスープ」というとヒガシマルが思い浮かぶのが西日本出身者、まさか関東、しかも群馬にもあったなんて驚き。しかも袋のデザインが面白すぎる。このデザインなど昭和30年代によく見かけた、なんだか懐かしい雰囲気のものだ。五角形に正、「正田醤油の」が太ゴシック、点点々が丸くたぶん丸ゴシックのもの。「うどん」も特太丸ゴシックかな。「スープ」の書体もいい。また真下にあるどんぶりを重ねたような変な物体が気が抜けていてこれまたいいのである。これなど宮川泰の「ウナ・セラ・ディ東京」が今時のオリジナリティのないバカ作曲家にかけないのと同じように出来ないデザインだ。
 さて話が変な方向から始まってしまったが、この粉末スープがなかなか味がいい。正田醤油が粉末スープを作り始めたのが昭和38年とのことだから、味わいは群馬の地のものだろうか? 味わいとしては関西とは大きく違ってかつお節でも昆布でもない一般的な「出汁」の味わい。ここに醤油のコクがあり、色合いはやや濃い目。フリーズドライのネギが入っているので、何もない午後に、「うどん玉だけ買ってきて、即席に」というあんばいが便利極まりない。
 これだけの味わいを作るんだから「正田醤油」の醤油も買ってみたいと思うのだ。

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正田醤油
http://www.shoda.co.jp/info/index.htm

 新井薬師駅商店街を歩いていて見つけた店。何気なく覗いて、初めて見る納豆を買おうとして豆腐の船(豆腐を保存している水を満たした水槽)をのぞくとうまそうな豆腐が目に入った。
「納豆だけ買おうと思ったんですが、1時間くらい家までかかるんですが豆腐大丈夫でしょうか」
 聞くと、
「大丈夫。うちのはね昔のやりかたで作っているからね大丈夫」
 船から豆腐をとりだして端っこを三角に切って手のひらにのせてくれる。この豆腐の味わいがいいのだ。とても普通の豆腐屋の味なのだが少し置いて微かな苦みと甘味が浮かんでくる。
「ここ屋号なんて言うんですか」
「この下見てくれる船に屋号があるあから」
 そこに「新井屋」の文字がある。
 ボクは最近、スーパーなどで見かける特選豆腐というか高い豆腐に疑問を感じるのだ。どうも普段着の豆腐の味わいというか、毎日食べて飽きない味わいではなくなってしまっている。それからすると豆腐屋の豆腐は毎日朝夕食べても飽きが来ない。

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この佇まいは昭和30年代のもの

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よせ豆腐もうまそうである

新井屋 中野区上高田 3-37-7

 かれこれ30年以上前になるが、東京に出てきて初めて立ち食いそばを食べたのは渋谷の井の頭線下(このあたり昔はパチンコ屋、スタンドカレー、立ち食いそばなどがあって汚いけど活気があった)である。このとき食べた天ぷらうどんには驚いた。つゆが真っ黒なのだ。しかも味がまだるっこいというか、しっかりしない。このまだるっこいつゆの味はかつお節やさば節をたっぷり使ってとるからで、関西の昆布を主とする味とは大違いなのだ。その東京風つゆの立ち食いでも、うまいまずいがあるのは当然であるが、そのピンだと思うのが「満松庵」である。

 JRお茶の聖橋口を出てすぐ右手にある。聖橋から出て真っ正面にある高いビルはまことに甚だしくお茶の水の景観を台無しにした代物。このような建物を作るヤツは愚か者でしかない。その不愉快な高層ビルから丸善を左に見て右側は中央線線路を真下にした崖っぷちに建っている。ほとんどが二階家。今は一生懸命表面を取り繕いこぎれいな店舗に見せる努力をしているがちょっと引いてみると建物は古く、どこか高度成長期の面影が残る。中にあって、古いまま素顔で出ているのが満松庵である。
 間口150センチほど、駅からと道路側から入ることができる。入るとお握りを売る売店。このお握りはあんまりうまくもないのにすぐになくなる。そして左手に二階に上がるがある。その階段のある場所が狭くなりやっと通って、そのいちばん奥に調理場。そしてその前、狭っくるしい場所の両側の壁に棚のような作りつけの奥行きのないテーブルが渡している。
 入って左の階段に真下の狭苦しい場所がある。ボクは最近このような薄暗く狭苦しいところにいると落ち着く。当然、4人も入ると奥の厨房にそばを注文するのも受け取るのも困難を極める。またセルフの水、そのコップがワンカップの再利用というのも考えてみるとすごいよな。
 そう言えば若い頃、飾らない性格の女の子とつき合っていて、連れて行ったことがあるが、以後一度も会っていない。どうしてだろう。

 閑話休題。
 ここ「満松庵」の汁は見事に醤油色、しょうゆ味、そして醤油辛い。これなど今時の立ち食いのように中途半端などっちつかずのものが愚かしく思えてくる代物だ。また、この醤油のグルタミンの中に濃厚なイノシンの旨味、そして香からしっかり、さば節を使っているのは明白である。うどん、そばにしても、ほどよい味わいが感じられるもので合格。
 東京風立ち食いそばの神髄は「満松庵」ありだと思っているのだがいかがなものか? 

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東京で初めて食べた「立ち食い」は天ぷらうどん。立ち食い客のほとんどは天ぷらそば、うどんを注文する。満松庵の天ぷらうどんは310円

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