2006年7月22日アーカイブ

 葛飾区立石というのは東京の下町でももっとも賑やかで楽しいところだ。40歳を過ぎて立石を知らないと一人前ではないなんて言いたいところだが、五十路を前にして初めて行ったのだから面目ない。
 さてその立石のど真ん中にあるのか「立石仲見世」その入り口の駅から見て正面右手にあるのが『栄寿司』である。角地に建ち三方引き戸に囲まれていて、どこからでも入れる。そして立ち食いなのだ。
 入ると親子のような粋な職人さん。このお二人の客への接し方がまことに気持ちがいい。入ってアルコールを注文しなかったのですぐに熱々のお茶。そして目の前の品書きからこはだをお願いする。この梅雨の時期のこはだが難しい。大きさに拘っていてはいいネタは仕入れられないし、まだ新子は高すぎる。出てきたのが「なかずみ」である。これが脂ののりといい締め方といい素晴らしい。そして立ち食いでなによりなのがすし飯の大きいこと。
 そしてシャコ、げそ、煮いかとお願いしてまさに満足至極だ。うまいので食べ過ぎる危険がある、それだけがこの店の注意点。ここで食べ過ぎると立石に数ある大衆酒場の名店を巡れなくなる。
 小腹なら4かんもあればいいだろう。だいたい2個200円から300円であるから、たっぷり食べて1000円前後。しかも握りとしては決して手を抜かない見事なものだ。
『栄寿司』は庶民にとっての名店、この店も立石の魅力を支えているのだと確信する。

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栄寿司 東京都葛飾区立石1-18-5
http://www.katsushika.co.jp/sakae/

 葛飾区立石の豆腐屋さんでみつけたもの。「○に永」の字以外これと言った特徴はないがよくできたパッケージだと思う。東向島と言えば、昔の「玉ノ井」である。今では当然なにもない下町でしかない。
 この納豆、非常に在り来たりなもの。またタレはついていない。ただ立石の豆腐やで見つけたのが旧玉ノ井の納豆屋さんというだけで終わってしまう。ただし東京の地納豆としては捨てがたい存在だ。

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いろは食品 東京都墨田区東向島3の22の4

 さっきの老人は何処に消えたのか? その先にあるのが氷川神社、ちょうどその正面の路地に豆腐屋を見つけたので撮影していると、近所のオバサンが怪訝そうにこちらを見ている。
「いや、路地裏の豆腐屋っていいなと思いまして」
「そおー、あそこは製造もとだけど小売りもしてますよ」
「いいところですね。こんな路地に豆腐屋があって」
「いえね。少し前なんだけどここを引っ越そうと思っていたの」
 路地の遙か向こうに見える高層マンションを指さして
「見えるでしょ。この辺の人も何人かあすこに引っ越していったのよ。あんなとこ住みやすいのかね」

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 うまそうなとんかつ屋がある。陶芸ギャラリーがあって入ってみると、もう店はやめてしまったという。そして今回の大発見。北千住にも天麩羅の「いもや」があったのである。でも神保町界隈の「いもや」と関係あるんだろうか? ここにはアルコールも置いてある。

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 そして駅前通に抜ける。

 今度は駅前通りを渡り旧日光街道を南に歩く。なんだか飲み足りない気分になって怪しい路地に入って線路際の通りにはいる。ここは飲食店やキャバクラなんかが密集している。白熱灯の黄赤をおびた光が目映く感じるのは暗い路地を抜けてきたせいだろう。
 この道を撮影していると、可愛らしい少女にぶつかられる。少女かと思ったら、短すぎるスカート、乳房が半分以上はみ出した白いブラウス、今風の目がパキッとしたメイクのキャバクラ嬢である。どうもわざとぶつかったのではないようだけど。
「なかに入りません」
 とても平坦な口調でそんなことを言われる。ついふらふらっと行きそうになったが、どう見てもキャバクラで遊びそうなタイプには思えなかったようでするりと消えてしまった。

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 その細長い通りを抜けるとちょうど京成電車が北千住に向かっている。ここから駅にもどったところで『大升』を発見する。ここも彼の『下町酒場巡礼』にのっていたはず。安くていい店だ。

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 ほろよい気分で北千住までもどる。途中調剤所のある古い薬局、つげ義春の描きそうな寂しい路地を抜ける。やっぱり北千住はいいな。ドローンとした頭に永井荷風が、はたまたつげ義春の線画が浮かび上がってくる。時間よとまれ、我の憂さよ暮れてしまった下町の空に去れ。

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 なんだか丸井が迷路のように感じられる。とにかく出口出口。千代田線から出てきて、いつの間にか丸井に入ってしまっていた。そうして「せっかく北千住まできてどうしてこんなつまらないところにいるんだ」と出口を探すのだ。
 どうにかこうにか飛び出して、たどり着いたのが旧日光街道、そして大衆酒場の『大はし』である。何度か来て、そのたびに店が開いていない。これで3度目、やっと入店できた。ここで楽しい時間を過ごして、少し周辺を歩く。

 懐かしい日本建築の洋品店、また今回初めて鼈甲店があるのを発見。『星子』という店だが、これは星子さんという女性が経営しているのだろうか、もしくは苗字かな? そして第二の目的『槍かけだんご かどや』はやっぱり夕方のせいだろう閉店している。

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 そのまま路地に迷い込む。と、途端に苦手な犬に出くわす。「ジョン大人しくするんだ」と言って災難を回避する。このワンワン、面白いことに玄関につながれていて、引き戸の奥にエサ入れが見える。

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 逢魔が時、ふと見上げると梅雨の分厚い雲が切れて青空が見えている。ふと風を感じて目線を落とすと黄色い帽子の子供が素早く駆け抜ける。あまりの素早さに妖気さえ感じるのだが気のせいだろう。

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 米屋の角を曲がろうとして、店内をのぞくとぬいぐるみがいっぱい置かれている。その上、店の前の自動販売機にまで無数のぬいぐるみ。米の袋以外にも洗剤やラップもあって、考えてみると多摩地区ではこの手の店が絶滅状態にある。そして私好みのあきたこまちのお姉さん。
 路地を進んで白いクルマの上に白黒の猫がいる。ボクのことが気になっているのは耳の動きでわかる。「ちょっと顔こっちに向けろよ」とカメラを向けるが「知らんぷり」している振りをしている。それを見ていた近所のオバサンが、「この猫、カメラに写るの好きなのよ」だって、そんなバカな。

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 そして四つ角に来て、ここにあるのが『増英かまぼこ店』。店の脇でおでんを売っていて、近所のオバサンや子供がよく立ち食いしている。それで「おでんありませんか」と問うと
「夕方にはいつも売り切れるんだよ」
 残念なので薩摩揚げを買う。その先に生花店、そして廃屋とも言えそうな建物、「ユニークな店」のカンバン。その先をか細い老人が足を引きずりながら右に曲がり消える。そんな情景を撮影していてまた『増英かまぼこ店』を振り返ると確かに「おでんおわり」という木の札があり、「まいどありがとう」「またあした」と頭を下げているのが埴輪なのだ。

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