さっきの老人は何処に消えたのか? その先にあるのが氷川神社、ちょうどその正面の路地に豆腐屋を見つけたので撮影していると、近所のオバサンが怪訝そうにこちらを見ている。
「いや、路地裏の豆腐屋っていいなと思いまして」
「そおー、あそこは製造もとだけど小売りもしてますよ」
「いいところですね。こんな路地に豆腐屋があって」
「いえね。少し前なんだけどここを引っ越そうと思っていたの」
路地の遙か向こうに見える高層マンションを指さして
「見えるでしょ。この辺の人も何人かあすこに引っ越していったのよ。あんなとこ住みやすいのかね」
うまそうなとんかつ屋がある。陶芸ギャラリーがあって入ってみると、もう店はやめてしまったという。そして今回の大発見。北千住にも天麩羅の「いもや」があったのである。でも神保町界隈の「いもや」と関係あるんだろうか? ここにはアルコールも置いてある。
そして駅前通に抜ける。
今度は駅前通りを渡り旧日光街道を南に歩く。なんだか飲み足りない気分になって怪しい路地に入って線路際の通りにはいる。ここは飲食店やキャバクラなんかが密集している。白熱灯の黄赤をおびた光が目映く感じるのは暗い路地を抜けてきたせいだろう。
この道を撮影していると、可愛らしい少女にぶつかられる。少女かと思ったら、短すぎるスカート、乳房が半分以上はみ出した白いブラウス、今風の目がパキッとしたメイクのキャバクラ嬢である。どうもわざとぶつかったのではないようだけど。
「なかに入りません」
とても平坦な口調でそんなことを言われる。ついふらふらっと行きそうになったが、どう見てもキャバクラで遊びそうなタイプには思えなかったようでするりと消えてしまった。
その細長い通りを抜けるとちょうど京成電車が北千住に向かっている。ここから駅にもどったところで『大升』を発見する。ここも彼の『下町酒場巡礼』にのっていたはず。安くていい店だ。
ほろよい気分で北千住までもどる。途中調剤所のある古い薬局、つげ義春の描きそうな寂しい路地を抜ける。やっぱり北千住はいいな。ドローンとした頭に永井荷風が、はたまたつげ義春の線画が浮かび上がってくる。時間よとまれ、我の憂さよ暮れてしまった下町の空に去れ。
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飲み屋めぐりのついでに北千住を無駄歩き その1 後の記事 »
東向島いろは食品「丸永 わら納豆」
私、鯛三は最近、北千住にハマってまして、仕事が休みの時には、よく駅近辺の路地などを散策しております。
ただこの独特の下町感覚は興味を誘うのですが、なかなかこの写真のような存在感のある飲み屋さんに入る勇気が持てず、比較的新しい感じの「cafeや居酒屋」に入ってしまいます。
それでは、北千住を半分しか楽しめていないと言えましょう?
確かに丸井とのギャップ感のある街ですが、そこがこの街の魅力かも知れませんね。
鯛三さん、本当に北千住は魅力的ですね。最近私、このような古きよき下町に凝っていまして、時間があるとついつい立ち寄ってしまいます。また丸井やデカイビルをやたら作りたがるヤカラは一時の金目当てで街をいじくり回す。当然、長い年月その街を愛するとか、暮らすという考えがまったくない。鯛三さんも「大はし」や「大桝」などは気軽な雰囲気なので一度入ってみてはいかがですか?