昨年の糸魚川の町歩きは楽しかった。ヒスイばかりが名物であるかのように思えたのだが、糸魚川の街も素晴らしい観光資源だ。ヒスイなんて、素人にはなかなか見つからないなら街を歩くことをおすすめする。楽しさからいって大人なら飛騨高山よりも上だぞ。
糸魚川駅から日本海に向かって大きな通りがある。駅から海に向かって歩いても、この通りは大きいだけであまり面白い店は見つからない。そんなときに左手に雁木の軒先が見えて、可愛らしい絵馬が飾っている。この通りがまことに楽しい。造り酒屋、古そうなそば屋、京屋という仏具を扱う店があったり、また昔は繁盛していただろう雑貨屋さんがあり、またそれと対照的な真新しいケーキ屋もある。
そんな雁木の通りで見つけたのが「こだま食堂」である。暖簾はなく、漆塗りであるような重々しい扉、その脇に不思議な石像がある。「営業中」と書かれた木札がかかっていて、いったいなんの店なのか? わからないので店内を覗くと明らかに食堂である。
思わず、入ったら中はいたって普通の田舎の食堂。この外観とのギャップが面白い。店内はガランと広く、その割にテーブルは少ない。右手奥に小上がり、左手に厨房がある。
品書きを見ると中華を中心として、カツ丼など丼物もあるという、古い形の「大衆食堂」そのものなのだ。ただここでなぜか気になるのが「焼きそば」。でも考えた末にボクはカツ丼、家族はラーメンにする。
ラーメンはすぐに出来上がってきた。これが面白い。チャーシューは今時の在り来たりのものだが、オレンジ色のなるとが入っている。この練り製品の入ったラーメンというのは古い形なのだ。ラーメンが誕生したのは明治43年浅草に出来た来々軒において。その「支那蕎麦」(支那の文字は歴史を語る上で使用しているもの)の具はチャーシュー、ネギになるとなのである。(「文化麺類学 ラーメン篇」奥山忠政 明石書房)この練り製品はときに蒲鉾になる。
姫が「あまり食べたくない」というので少しわけてもらう。これがまことにうまい。なによりもスープの味がさっぱりした塩しょうゆ味。それをよく縮れ麺がからめて食べていてまことに軽く感じる。あんまりうまそうに食べていたので(まずそうに食えばよかったのだ)姫の食欲が復帰。残念ながら3分の1で我慢。そしてやっと来たカツ丼は平凡なものであった。残念、「こだま食堂」ではラーメンに軍配。
さて、思いもかけぬ糸魚川で古いタイプのラーメンを発見して、その上、うまかったのだから大満足。「また来たいな」と思いながら、そろそろ一年が経ってしまうのである。
こだま 新潟県糸魚川市本町6-9
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