静岡県三島市は江戸に向かうと箱根越えの手前、天下の険を超える前に旅人が三島女郎衆を相手に遊山したところ。また伊豆、駿河湾からの産物は海から沼津に来て、それが三島に来る。その三島の沼津からの入り口にあたるのが広小路ではないかと思う。広小路とはいくつかの街道が交わり、分かれるところ、箱根からの東海道がここで幾筋にか分かれる。たぶんその昔、市が開かれ多くの人を集めであろうところだと思える。
そして今でもこのあたりはずいぶん賑やかである。ファーストフード、チェーン店が軒を並べ、また三島広小路駅を利用する人、買い物客の流れがある。そんな広小路から路地をはいったすぐの所にあるのが広小路食堂である。この店、三島での魚屋巡りの途中、同じ広小路の『魚正』さんに教えて頂いた。
「ご飯食べるならいいところあるよ。ウチが納めてるんだけど、さばのみそ煮なんて最高だよ」
こういって広小路食堂のだいたいの場所を教えてくれる。そして正午からだというので三島を回りに回って疲れ果ててたどり着いたのである。時刻は正午。
でも残念ながら店は締まったまま。あまりに疲れたので「もうよろしいでしょうか」と引き戸を開けると、「あ、ごめんなさいね」といって招き入れてくれた。暖簾はまだ出ていない。
店内は間口からすると広く、とても清潔である。品書きを見るとカレーライス、チャーハン、ラーメンなどがある、トンカツも、うどんもあり、「大衆食堂」の基本を最低限満たしている。でも不思議なのはそばがない。これは広小路食堂が「大衆食堂」になる前はうどん屋だったのだろうか?
またこの店を特徴づけているのが刺身定食を始め魚のメニューが多いところ。よく品書きを見ると魚フライ、海老フライのとなりに「まぐろフライ」なる見慣れぬものがあるのだ。これを見るに沼津という駿河湾一の漁港の近さを感じる。
品書きには値段はやや高いものの、食べたいものがいっぱいある。あまりに空腹なのでカレーでもラーメンでも食べて、その上、一品というのもあるだろうし、トンカツもカツ丼も食べたい。でも「さばのみそ煮は最高よ」と魚正のオバサンが言ったんだたよな、と思い返してお願いする。
店内ではここの娘さんだろうか、小さな男の子が絵本を開いている。その娘さんが「ゆっくりしていってください」と頭を下げて姿を消すと、定食が到来した。
サバは残念ながら輸入ものであるようだが、煮方がとても上手なのだろう、ふっと口の中でとろけるようだ。切り身も大振り。こんなうまいさばのみそ煮も久しぶりである。添えられた冷や奴もうまいし、ししとうの天ぷらもいい。ご飯の盛りもたっぷりなのに少しもの足りない気がする。それだけ味がいいと言うことだろう。
広小路食堂 静岡県三島市広小路町4-5
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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