日比谷線三ノ輪橋駅、明治通と昭和通から日光街道に名を変える大通りの交差点にある。これだけ大きな通りの交差するところなのにまことに薄暗く寂しいところである。この三ノ輪橋の隣が根岸。確か日暮れ里と呼ばれていて、江戸時代には日本橋など大店の療(別荘)のあったところ。とにかく夕暮れ灯ともし頃の似合う地域である。
そこに素っ気ない建物であるのが「峠のそば」。あまりにも実用本位の経費節約型の外観ながら、夕暮れに煌々と光る灯りは魅力大。自動ドアではない引き戸をあけて入り、食券を買う。いつもなら定番のかき揚げそばを選ぶのだが、同じ紫のボタンに「ソーセージ天」というのを見つけた。ソーセージというとウインナーだろうか、それとも豚肉の長いもの? 魚肉なら日本的で面白いなと思って350円を入れる。
四つ角の角にあり、店舗は三角形であるようだ、それで店内も三角形で厨房を仕切るのも三角形の底辺にある。そこにはさみしそうな30代らしき男性がいてさみしそうにそばを温めてる。
食券を出すと「茹でていますので待ってください」と言われてカウンターで待っている。驚いたことには立ち食いそば屋でいちゃついているカップルがいる。そばを食べ終えているようなのになかなか出ていかない。よく見ると彼女のほうがざるに一本のうどんを残している。彼が彼女のウエストに手を回すのだが、これがなかなかゴッツイのである。ふと琴桜と鷲羽山の取り組みと見ているような思いにさせられたのだがよく見ると二人の顔が似ているのだ。だいたいこのような状況は山の手には絶対にありえないこと。あまりに珍しいのでついつい目がいってしまう。まさか貧しいので本日は立ち食いそば屋で済まそうという合理的な夫婦にも見えない。だいたい夫婦にしてはあまりに仲がいいではないか? でも「どうして立ち食いそば屋でいちゃつくの。近所には薄暗い公園がいっぱいあるのに」というのは古くさいオヤジの考えることだろうか。でも二人ともえらくダサイね。
そしてかなり待たされて出てきたのが「ギョギョっとする」雰囲気のそば。なんだかソーセージの天ぷらが生々しく、そして不気味だ。食べてみると魚肉なんだか、豚肉のソーセージなのかわからない。何しろソーセージ天が熱をもって「アチッチ」なのである。汁はカツオ節だろうか香りがある。そして味もいい。その上、そばの風味も感じられるのだからいいんだろうね。でもソーセージの天ぷらがちっともうまくない。またワカメを入れているのは失格、その上、汁の塩分濃度とそばの味わいがバランスを得ていない。でも350円でよくこれほどの味わいを作り出すものである。偉いね!
近年の立ち食いそばの新顔はデキ過ぎかも知れない。でも立ち食いそばで不細工なカップルがいちゃつくのは禁止だね。
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