管理人: 2007年7月アーカイブ

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 香川県善通寺市内、老舗の酒屋瀬川酒店で買い求めたもの。そのとき我が老父が「仁尾の酢はなつかしいのー」と言う。「仁尾町の名物はなんといっても酢」なのだという。戦後直ぐにメガネの営業に回っていていても仁尾町の酢造りの蔵は印象的だったそうだ。仁尾町は徳島県からは一山超え、しかも平野部を瀬戸内海に抜けた響灘の東の玄関口といったところである。戦後の交通事情の悪い最中にこんなところまで商売で回っていたのだな、と思うと感慨深い。

 この仁尾酢、900ミリリットルの家庭用で買い求めると、かなり値段のはるものである。これは京都の千鳥酢と同じ。当然、本来は業務用一升瓶で買うべきである。ちなみに我が家で使っているミツカンの業務用山吹など20リットルで3700円ほどなのである。日常的には小瓶での値段はとても手のでるものではない。まあ旅先なので好奇心が先行しての買い物だ。

 帰宅するやすぐに味を見る。キャップを開けるや、ふわりと醸造香が浮き立つ。これは間違いなく酒を造り、その後、酢酸酵母のよって酢になり、最後に塩で発酵を止めて造ったほんまもんというのが見えてくる。
 これを知り合いの寿司屋に味見してもらうや「こんなに香りがあっちゃあすし飯には使えないね」と言う。当然である。ミツカンの白菊に代表される寿司酢の正反対を行くものだ。でも酢をそのまま飲むとこくがあり、うまいのである。
 だから我が家ではもっぱら酢の物、加減酢(出汁や味醂と合わせる)に使っている。これはなかなかいい味わいだ。なにしろ醸造香がゆたかで酸味が柔らかい。また魚を酢締めにしても、この醸造香が爽やかでいい。
 我が家には千鳥酢、山吹、ワインビネガー、バルサミコとあるが、そこに仁尾酢がきてもその個性から用途がいっぱいありそうである。

中橋造酢 香川県三豊市仁尾町仁尾丁944
http://ww8.tiki.ne.jp/~k-naka/

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 四国4県のうどんはそれぞれ微妙に違うと書いてきた。そこでまずは徳島うどんとはなにか? を明確にしたい。出汁は煮干し主体で塩、ほんの少しの醤油、みりんの味つけ。麺はシコっと歯切れがよく腰はほどほど。具は原則的には刻んだ油揚げ、赤板(赤かまぼこ)、青ネギ。これを大阪では「きざみ」というが徳島では単に「うどん」である。大阪との違いは大阪のつゆは徳島より甘いということか。

 ついでにここで少々徳島中央卸売市場の食堂事情を書いておきたい。市場は北に青果、南に水産の棟があり、中央に関連の店舗が並び、食堂もここに数軒ある。見たところ5,6軒はあるようである。ここで困るのは「どこに入るかである」。なかに絶対的人気店があるならそれを基本とするのもいいのだが、まずはそれがない。市場で働く人たち、また仲卸で聞いても「どっこもうもうはないね。まずいわけでもないし、どの店も同じじゃ、そうじゃけんどこに入っても変わらんでよ」というあんばいとなる。そうやら徳島中央卸売市場内の飲食店はどれもやや古びて汚く、まずいわけではないが、うまくもない、というものらしい。

 それで入店した『みゆき食堂』だが、うどん、ラーメンなどよりもケースに並んだおかずを選ぶ人の方が圧倒的に多い。そしてこれがまた安くてうまそうである。よくよく見ると基本的なラーメンやうどん、玉子丼などが総て400円以下なのである。だからここでカツやエビチリ、酢の物や煮物を食べてもきっと500円玉と少しという値段で済むだろう。この定食系の魅力にかなり押されながらあくまで「うどん」を押し通す。
 徳島だから「うどん」を注文したら必ず「すし」もつける。この「うどんすしコンビ」というのは徳島ならではに違いない。食堂などでうどんがあってすしがないなんて考えられない。

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 すしは作り置きだから、注文した途端に目の前に来る。東京ではこの手のすしは先ず見ないだろう。それが関西では同じような「すし」が食堂の定番メニューとして必ず存在する。そして徳島の「すし」なのだがときに「ばらずし」とも言われるもので、シイタケ、蒲鉾もしくはちっか(竹輪)の刻んだの、錦糸卵と大正金時の煮豆が基本具材である。ここに竹の子やニンジン、絹さやなどが季節季節に参加してくる。味はやや甘めで軽い。ここに遅れてうどんが来る。

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『みゆき食堂』のうどんには定番の具以外にカツオ節とワカメが加わっている。まずは汁をひとすすり。出汁の味わいはややもの足りないが徳島うどんの典型的なもの。これを味わうと「徳島に帰ったな」という感慨が湧く。そしてうどんだけども、残念ながら麺の味がまずいのである。小麦粉の風味がなくやや柔らかい。そしてそして味わうにやっぱりワカメがじゃまであるな。どうにもワカメというのは存在感が強すぎる。
 これが四国にたどり着いての第一番の徳島うどんなのだけど、まあボテボテながらヒットかな。うどんはともかく、すしはいい味だったのだから。

徳島中央卸売市場 徳島県徳島市北沖州4の1の38
http://www.city.tokushima.tokushima.jp/chuo_ichiba/index.html

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 共栄会ビルの地下にはあまり足を踏み入れたことがない。だいたい築地場内しか回らないので、この築地4丁目界隈とは疎遠だったのだ。それが場外に長崎漁連直売所が出来てから、この変にメタリックな情緒のないビルの前も通るようになった。それでトントンと地下に下りるとボクの拒否反応を起こさせるような文字と、惹かれてしまう暖簾が目に飛び込んできた。まず拒否反応を起こさせたのは「バカウマ亭」という文字。そしてラーメンの品書きの多さ、御託の多さ。それに「鳴門は紀文」なんて意味不明なことも書いてある。まあせっかく下りてきたんだからと席につき無難そうな東京ラーメン醤油味600円というのを注文する。
 なかにいるのは身体の具合でも悪いのだろうか、やたら動きのぎこちないオヤジさんである。席について見回すと厨房内、店周辺がやたら汚い、散らかっている。また暖簾の前に椅子が並んでいて、混んでいるときには座って待てという文字も見受ける。この店そんなにうまいのだろうか?

 注文してから、ほとんど待つこともなくラーメンが来た。厨房の中ではオヤジさんがぜんぜんお湯を切らないまま、麺を丼に入れているのが見えて十数秒後である。これが普通の醤油ラーメンなのであるが具材がかなりユニークである。
 まずダメだと思ったのが貝割れ大根の存在である。なぜラーメンにこのピリカラ野菜なのか、そして鳴門の形がいびつ、そこに三角形の玉子焼き、チャーシュー、メンマ。なぜ? なぜ? このような組み合わせが考えつくのだろうか? 理解できない。

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 まあとりあえずはスープだ。これは平凡至極だがまずくはない。平均点確保といったところだ。そして箸ですくい上げた麺だが細縮れ麺で味がない。いくらすすっても麺に旨味を感じないのだ。これはスープとの相性の問題かも知れない。ちなみに具材のほうだが玉子焼きはどうにもいただけない。貝割れ菜は道を挟んだ有名店の真似だろうか? これも不要だな。鳴門も敢えて「紀文」と書いてなんになる。
 この店、これで600円ならたぶん二度といかないだろうな? ボクは苦手だ、この手の自己顕示欲の強いだけの店は。
 追記、この「つきじラーメン バカウマ亭」の隣が『伝承ラーメン 北都』である。表の看板を見ているとこちらの方がもっとうるさくてどうでもいいことを書いてある。ラーメンは店主のこだわりは隠すべし、うまけりゃ客はくるだろう。どうもこのビルは鬼門だ。

東京都中央区築地4-7-5 築地共栄会ビル地下1階

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 さてさて四国四県あるけれど、どの県でも「食堂=うどん屋」というくらいに、うどんをよく食べる。その4県の「うどん」の味わいは微妙に違っていて、意外に独立性が高い。それが今では「うどん」といえば讃岐という図式が完成しつつある。ボクはこれには強く反対したい立場なのだけれど、それでも讃岐うどんの徳島への浸食は続いているらしい。
 ちなみに「讃岐うどん=麺がシコシコ腰が強い」という概念はおかしいと言うことを明記しておく。讃岐うどんの本来の形はあの宇高連絡船の立ち食いと思った方がいい。そこに腰の強いうどんという概念を持ち込んだのはいったい誰だろう。たぶんマスコミではないか?
 讃岐うどんは元来“ある程度の腰”、そして“歯切れのよさ”が信条であったはずだ。それと比べて徳島うどんは“より歯切れのよさが光り”、“腰はやや弱い”。出汁の味は基本は煮干し、昆布。そこになんらかの+アルファはあるだろうけど、味付けに塩と醤油、味醂というのは不変だろう。

 徳島にもどるにあたって“徳島市内うどん事情”を聞いて回った。すると
「そうじゃな、そんなに目立ってうまいところはないんじゃけんど、最近は『名麺堂』という市民病院近くの店が有名らしいの」
 またもう一人は、
「お昼は毎日『名麺堂』でよ」
 驚いたことに聞いた3人ともが『名麺堂』という店を挙げたのである。

 どうやらこの『名麺堂』、徳島の地流うどんに浸食してきた讃岐うどんの一味であるらしい。
 この店は探すこともなく見つかった。鳴門で高速を降りて、国道11号線、走るともなく走っていると、道路右手に勝手に目に飛び込んできたのだ。そして正午前に1台だけ空いていた駐車場にクルマを止める。表はいたって静かである。ところが店内は思ったよりも広い上にかなりの混みようだ。左手でうどんや揚げ物を手に入れるのだが2,3人と並んでいる。でも当方三人分の席はあちらこちらにある。これはまだ昼前のためだろう。
 入った途端につゆの前にいる顔つきの硬いオバチャンの目が光る。どうやら店の“流儀のわからぬヤツラじゃ、子連れじゃしな”と認知されたようだ。このキラリ鋭い目線にこちらは子連れなので気圧される。
 それでもずうずうしく並ぶ。並んだ後ろの男性から
「この子連れトロイんちゃうか?」
 という雰囲気がわっしわっしと感じられる。後ろが怖いとはこのことだ。そう言えば徳島人というのは本来おっとりしているんじゃなかったかね。こんなトゲトゲはどこから移入してきたのだろう。
 とりあえず。オバチャンの前まで来て、鋭角的な不親切きわまりない口振りで「あつあつですか」と聞かれる。まあどうでもいいか? とは思ったが怖々と「“あつあつ”ってなんですか?」と聞くと「温めたうどんに熱いつゆ」というのが判明。“ひやあつ”というのもあって「冷たいうどんに熱い汁」。こちらは子供連れ故、当然「あつあつ」は無理に違いない。とりあえず「ひやあつ」の大1、小2にする。

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これは大。本当に大なのである。小は普通盛りと思っていい

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ここは皿に天ぷらなどをとる方式。うどんにのせるところもあるが別盛りの方がいい

 次に来るのが天ぷらや油揚げのコーナー。ここで我が重役は油揚げ、太郎は竹輪天とサツマイモ天、ボクはアナゴとげそにする。

 まずは太郎がひとすすり、その出汁のうまさに感激したようでとたんに笑顔になる。
「父ちゃんうどんもうまいよ」
 ずるずるとうどんをすする。いやああああ本当にバランスのいい出汁の味わい。基本は煮干しだろうか? なかなかこれほどの出汁は作れないだろう。もちろんシコっとして、それなのに歯切れのいいうどんはもっと素晴らしい。
 繰り返すことになるが四国のうどん出汁の基本は煮干しである。昔香川の海水浴場で、もしくは徳島市西新町そばの「だるま屋」などのうどん屋の前を通るとプーンと煮干しの匂いに包まれた。この味わいはあっさりして塩味の、そして微かに醤油風味がある、これこそ四国共通のものだろう。そこにうまいうどんがくる。子供達もこの美味に一気食いである。

 そして支払が全部で1400円ほどだった。
 内訳は
基本部分/「ひやあつ」小280円×2、大380円×1
天ぷら/アナゴ150円、げそらしきもの80円、揚げ80円、さつまいも80円、ちくわ80円
 だと思われる。これだけ天ぷらなどを取って、だいたい1人前400円前後。これを単純に東京で食べたらまずい上に1人前800円から1000円はしそうである。やはり恐るべし讃岐うどんなのである。

うどん工房 名麺堂
http://www.meimendo.com/

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 倉敷に入って最初に目に飛び込んできたのが水である。高梁川からの水が用水路によって市内に大量に流れ込んでいる。その流れの中で遊んでいる子供達。倉敷は水の町なのだと思った。水豊かなら醸造業が盛んであるに違いない。
 高梁川からの用水の取り込み場所にあたるのが酒津であり、その一角に「とら醤油」がある。この「とら醤油」の建物がいい。昔ながらの日本家屋で仕舞た屋の多い街並みにとけ込んでいる。同じ区域の陶芸家武内立爾さんのお宅にいて麹の香りが漂ってくる。倉敷で暮らす人には麹の匂いと酒津が結びついているのかも知れない。
 この「とら醤油」でもいちばん普通の、「キントラ」というのを酒津のコンビニで買い求めてきた。武内さん曰く、「とら醤油」の特徴は甘さにある。と言うことだが、ボクの印象は柔らかさ、丸みである。例えば九州の醤油の甘ったるいのとも、所謂千葉県で作られている大手の醤油メーカーの鋭角的な味わいとはまったく別のものである。
 この甘さがとてもいい。かけ醤油にも、三杯酢にも柔らかさを加味できる。特にいいのが煮つけである。瀬戸内海での小魚を食べる文化では煮つけが主役なのである。また「こうなごのくぎ煮」というのもある。この「とら醤油」を買い求めてきてからイボダイ、ミギマキ、鰯の生姜煮、カツオ角煮などを作った。このどれもが味わいにまろみを帯びて味が柔らかく出来上がった。

 最後に気になったのが「キントラ」マークの虎の絵である。どうしてこんなにリアルなんだろう。まるで阪神タイガースの虎のようだし、倉敷で言えば美観地区というよりはチボリ公園を思わせる。まあよく見れば笑えるのだけど、倉敷でこの虎は情緒に欠けるな。webには過去のラベルが公開されているが、昔の方がいいと思うのはボクだけだろうか?

とら醤油
http://homepage3.nifty.com/tora-shoyu/

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 バーニャカウダはイタリア北部ピエモンテ州の料理だという。実を言うといちども食べていないのである。それをjasminさんのレシピだけを頼りに作ってみる。
材料
オリーブオイル  ひとり50mlていど
アンチョビ    ひとり1枚
バター      75g
ニンニク     人数+1片
くるみ      2個~3個
牛乳       少々
(予め断って置くがボクは一度も分量を量ったことがない)

1 ニンニクは皮を剥き芯を取り除く。
  (ニンニクは好きなのでたっぷり使う)
2 アンチョビーは塩漬けの場合流水に数分さらし塩抜きしておき、その後 よく水分をふく。
 オイル漬けはオイルをキッチンペーパーなどで拭き取るだけ。
 (自家製のアンチョビーが切れているのでオイルサーディンを使う)
3 好きな野菜を食べやすい大きさにカットして皿に奇麗に盛りつける。
調 理
1 小鍋にニンニク・クルミを入れて被る程度の水を入れ、弱火でニンニクが柔らかくなる程度まで煮る
  (クルミは大好きなのでたっぷり使った)
2 さらに、材料が被る程度の牛乳を注ぎ弱火る。
  沸騰させないように。
3 アンチョビーを加え中身を、ヘラかフォークの背で潰し、良く練り合わせる。
 しばらく、弱火で焦げ付かないように滑らかなペースト状にします。ミキサーにかけるか、すり鉢を使うほうが簡単に上手く滑らかになります。

 出来上がったのはかなりどろどろの胡麻味噌状のものである。これがクルミの風味にニンニクの微かな臭み、そして甘味が加わった不思議なもの。これを自宅にある限りの野菜につけつけ食べるに「かなりうまいのだが、これが本当にバーニャカウダというものかわからない」と言った代物。
 次回にはアンチョビーを用意してクルミと牛乳を少なくしてやってみるつもりだ。

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