管理人: 2008年3月アーカイブ

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 3月14日、隠岐から高速船で七類に。このとき七類港で見たのが米子行きのバス。まさかこれに乗るべきであるとも知らず、地元島根のトーボさんに境港へ送ってもらった。境港からは境線を使って米子に出る。これがとんでもない間違いであるのがわかるのは、電車が動き始めてすぐだった。この単線は恐ろしくのろまで、しかも駅の数が多い。急ぐ旅には向いていないのだ。
 米子から大阪まではバス利用に決めて、出発時刻が11時45分。ノロノロディーゼルカーは米子市内に入ってからもいくつかの駅にとまり、なんと米子着が11時43分となっている。駅を出てもバス乗り場が見つからない。仕方なくバス会社に電話して、やっと切符を受け取って、バスに乗り込んだときには出発時刻をとうに過ぎていたのだ。

 さて、飛び乗ったために米子では立ち食いそばはおろか、弁当を買う暇もなかった。
 朝ご飯を食べてから、昼飯抜きで大阪に着いたのが4時前。到着した難波OCTS(どういう意味なんだこれは? 日本語を使えよ、大阪人)。ここは難波ではあるが繁華街からすると西にあり、千日前、高島屋などまでが遠い。そこから地下街、千日前などを歩きに歩き、やっとホテルにたどり着き荷物を下ろしたら、どっと疲労感と強い睡魔に襲われる。
 いい旅の秘訣は絶対に変な時間に仮眠をとらないことだ。我慢に我慢をして、ショルダーバックをかけて外に出る。

 ホテルから歩くこと、5分ほどのところに黒門市場がある。テレビなどによく取り上げられる有名な場所であるが、ボクとしては過去に一度も魅力を感じたことがない。これは勉強不足かも知れないが、他の大阪市内の市場からすると多彩性に欠け、割高に感じる。黒門市場まで来たのは、魚を見るためではなく、何か食べるためだ。
 空腹感が頂点にあり、気分が悪いほどになっている。市場内を歩いて、最初に見つけたのが「うどん みなと」である。とにかくむかつく胃に優しそうな「うどん」の文字に惹かれて引き戸をあけてしまった。

 中にはいかにも大阪人というご夫婦がおり、ここでお願いしたのが「きざみ」である。
 大阪に来たらいつも「きざみうどん」を食べることにしているのだが、ここでは初めて食べるかの如く、「きざみうどんてどんなものでしょう?」なんて聞くと、カウンターの中からご主人が「油揚げの刻んだものが乗ってるんですー」なんて説明してくれる。すんまへんな、芝居してもうて。またうどんを食べているとき女将さんが、「歌舞伎座で藤山直美はんが芝居やってはるは」なんて話しているのが大阪ならではでいいのだ。
 この店は左手に真四角カウンターに囲まれた厨房があり、そこがどこかしら穴蔵を思わせる。どこか懐かしい雰囲気があって居心地がいい。

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 さて、きざみうどんはいかほどでだったか、忘れてしまった。500円前後であったはずだ。
 大阪らしい澄んだだしに、うどん、刻んだ油揚げ、ネギにとろろこんぶ。「きざみ」というのは油揚げを刻んだから。とろろこんぶは大阪のうどんでは定番の具である。
 まずはだしの味わいはさすがに「ええこんぶ使ってますね」という素晴らしいもの。上にのった油揚げもふっくらとしており、揚げた油が新鮮であるのか、香ばしく、味わい深い。そこにくるのが、いつもいつも大阪に来るたびにがっかりする、腰のない柔らかなうどん。だしの味わいがまったりしているので、うどんの柔らかさが加わると、「もうちょっとしゃきっとできんかいな」と言いたくなる。
 でも、これこそが大阪うどんの典型でもある。まさに大阪に来て、大阪うどんを食べているんだと思えるから不思議だ。なにも世の中、讃岐うどん一点張りになる必要はない。
 空腹過ぎて、疲れも頂点にあるときに、このまったり穏やかなうどん、これが大、大正解であった。

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 山口県萩と言ったら日本を代表する観光地。そのむかし若い娘が行くところと言えば「萩・津和野」と決まり文句の如く決まっていたものだ。そんな観光地だからさぞやうまいもんがありそうだが、なかなか浮かんでこない。浮かんでこないままに萩港前の「萩しーまーと」に行ったら、マフグ料理をはじめうまいもんがわんさかあって、うれしい悲鳴を上げたのだけど、どうやらこの素晴らしい美味は萩を特徴づけるものではないらしい。道の駅「萩しーまーと」の駅長さんや、今回萩を案内してくれた篠原さん、出店者などの努力のたわもの。
 その篠原さんが、早朝、コンビニお握りでもあるまいしと連れて行ってくれたのが、『どんどん』というセルフサービスのうどん店である。

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 外観をみたらまさしく古都萩にふさわしいもの。落ち着きがあって、まことに好ましい。
 篠原さん曰く、
「最近朝ご飯というとここです」
 とのこと。
 その篠原さんが出色の舌を持っているのを知るのは後々のことで、この時点では「萩でうどんとはいかに」と疑心暗鬼であった。
 篠原さんがご馳走してくれたのが、肉うどんとおむすびのセット。

 テーブルまで運んで、西日本ならではの青ネギを放り込み、空腹に一口すすると、まろやかではあるがしっかりとかつお節の香りがあって、旨味も醤油の辛さも適度なうまい汁なのである。
 うどんはもちもちした食感のもので、僕の好みではないが、それ以上に丼の中の総合的な味わいに感動する。
 つゆのまったりした甘味は山陰の特徴ではないだろうか? このあたりも萩という地域性を感じられていい。食べているときには気づかなかったのだけど、山口県ならではの、わかめむすびというのがあって、これを食べなかったことに後悔すること大である。

 さて、篠原さんならずとも萩の朝ご飯を『どんどん』で食べる人は多いようだ。まだ朝早いのに客足は絶えない。

スナダフーズ
http://www.s-dondon.co.jp/
萩しーまーと
http://www.s-dondon.co.jp/

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 境港にある市場は大きく、魚好きならほんまに面白く、そして興奮して、時の経つのを忘れてしまう。
 そこに置かれている魚貝類の多くが島根県の船があげたというのを確認して、またその多彩さにも満足して、歩き回った後に来るのが強い空腹感である。
 さて、「何処にうまいめし屋があるのか?」、こんなときには地元の方に聞くのが最善の策だ。JFしまね 境港支所の方達、場内で聞いて、すぐに挙がったのが、「競り場の前の道をあっちの方へ行ってください。右手にありますから」という名前のわからない食堂。
 競り場から歩くこと5分足らず。見たところ、どう見ても「うまそうな店」には思えない。まるで喫茶店かスナックを思わせる味気ない建物で、なんと屋号がどこにもみあたらない。
「本当にここなんでしょうか?」
 同行の、トーボさんに聞くと、
「方向はあってるでしょ……」(不思議な笑いつき)
 この方、このようなときの返事がいたって投げやりだ。たまには「きっとそうでしょう」なんてにこやかに答えて欲しいねー。
 さっさと入っていったのはヤマトシジミさんで、入り口近くの陳列ケースを指さしている。

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 そこあったのが、しめさば、さば刺、サワラ、スズキ、あじ(マアジ)、いわし(マイワシ)、コウイカ、ヤリイカ、たい(マダイ)、そして「あかべい」である。これがみな安いし、新鮮に見える。この一瞬の喜びは見知らぬ町を旅する人だけにわかるものだ。
 刺身とは別にカツ丼や揚げ物が並ぶカウンターがあり、ここにもおかずがたっぷり。
 刺身をふたつ選んで、この前で一瞬立ち止まっていると、ヤマトシジミさんから悪魔めいたささやきが聞こえてきた。
「ぼうずコンニャクさん、朝はカツ丼ですよね」
 まさか、ボクの場合、そんなに無分別な人間ではない。その隣のサバのみそ煮を手にとり、ふと宙に浮いた手が、ついついカツ煮に伸びる。これは私本体が悪いのではなく、手と胃袋が悪いのだ。ついでにつけ加えると、ボクの大人の抑制心をボロボロにうち砕く、「ヤマトシジミが悪ーーーい!」。

 このカフェテラス方式で選んだのが、あかべい(コナガニシ)の刺身、サワラのたたき、サバのみそ煮、飛ばして飛ばして、みそ汁とご飯。オマケについてきたカツ煮。
 なんとヤマトシジミさんはボクの倍ほどもトレイにとっている。まだ若いのにメタボリックなのは、この大食いがいけない。

 まずはカツ煮は甘すぎるけど、なんだか早朝に食べると「うまいなー」。当然だけど、サバのみそ煮はマサバを使って美味だし、サワラのたたきがうまいねー。

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これが問題の「あかべい」

 なかでも境港に来てよかったなーというのが「あかべい」。これはどう見てもナガニシ属に違いなく、競り場で見たコナガニシである可能性はほぼ100パーセント間違いない。競り場での高値から、卸値も安くはないはず。と、値段がヤリイカ、スズキが100円であるのに三倍の300円というのもうなずける。ヤリイカの三倍だから期待しつつ食べたら、甘味が感じられて、なんともうまいものであったのだ。
 さて、この豪華絢爛の朝ご飯、お値段は千円札を渡しておつりがきた。

 境港という日本有数の町で、これくらいのご飯が食べられたら最高だね、という「朝ご飯」であった。つきじろうさん、悔しかったら境港までおいで! 「春は境港で朝ごはん」というブログが書けるぞーーー。
注/『かいがん』という店名は後日、ヤマトシジミさんからお聞きした。

かいがん
http://www.kai-gan.com/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
境港市観光協会
http://www.sakaiminato.net/

さて、本日9日の深夜バスで京都へ。
京都中央卸売市場で島根からの荷の話を聞き、市場見学。
七条当たりで朝ご飯。できれば錦市場も見たいとは思うが、あんまり意味があるかどうか?
たぶん錦はパスして、夕方までに松江に移動。
翌日は境港に立ち寄り、隠岐に渡ります。
とにかく金曜日の朝までは隠岐に。
船か飛行機で境港、米子まで。
そのまま大阪に。
金曜日14日の夜は淀屋橋でヤガラさん、まささんと大酒を呑み。
翌日は堺魚市場、そして鶴橋に回って
迷路を迷いに迷い、夕方には帰宅するつもりです。
ボクが生還できるか否かは不明。

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 武内作品が我が家に来てから、なんだか落ち着かない日々を送っていた。とにかく何でもいいから使ってみたい。でも平凡なものじゃだめ。それでは、最初に何を盛ればいいのか? かなり苦しんだ末に、最初の一品は我が家の家庭料理でいいのではないか? と思い至る。

 それで徳島県人である、ボクが、徳島県阿南市産干しえびの出しで、東京都日野市高幡不動そばの三河屋豆腐店の大がんもどきを煮る。
 干しえびは前の晩から、昆布とともにうるかして、翌日、ゆっくり一煮立ち。
 このだし汁に味醂、酒、薄口醤油、塩で味つけする。ここに油ぬきしたがんもどきを入れて、これまたゆっくりたきあげる。
 こんな単純な料理がいちばん気が抜けないもので、最後に蓮根を加えて、一煮立ち半。
 料理は平凡極まりないものである。この出色の大皿に見合うものだろうか?
 辰砂の赤に、あえてニンジンを加えないで作った、がんもどき、見た目はいかがだろう?

 がんもどきの味わいは、あまりに日常的なもの。がんもという材料よりも出しの味わいを楽しむ。この干しえびのたきものは、冬定番のもので、今冬最後となる。

●まだ日時は決まっていないが、武内立爾さんの個展が東京でも開催される。こうご期待。

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