そば、そば屋: 2006年7月アーカイブ

 新宿西口を利用することになったのは1975年前後だろう。以来我が人生でなんども通り過ぎることとなって、その30年ほど前の出来事が思い出される。学校の仲間と西口で待ち合わせ、昼飯を食べて京王線に乗ろうとなってなぜか5人ともカレーが食べたいという。その食べたいカレー屋が二手に分かれてしまったのだ。貧乏学生なので「安い」が先決。
 私が真っ先に浮かんだのが「C&C」で、当時280円だったかな? これでジャガイモがひとつ入っていたのだ。そして後の4人が行こうと言ったのが西口地下街の角の店。店名は知らなかったのだが、「C&C」を選んだのはのはひとりだけ、カレーごときにむきになり、寂しく立ち食い。当時から一匹狼だったのだ。
 さて今回ほとんど初めて入って「ハウス11イマサ」という店名を知った。我ながらそのときの友との議論(どっちがうまいか? なんてくだらないこと)を西口を利用するたびに思い出して30年間も足を踏み入れていないのだから意地っ張りだ。
 この店、その昔、造りがなかなか凝っていて。ちょっと色合いからして1960年代、70年代のサイケなもの。椅子も70年代っぽく、テーブルからしてシュールな形をしていたはず。
 そんな面影は影をひそめているが、改めてその丸い樽型の椅子にすわり、メニューを見ると思ったよりも多彩である。これは「C&C」が立ち食いそばの延長線上にあるオヤジ型店舗としたら、こちらはファミレスのカレー判、言うなれば若者型店舗なんである。それでスタンダードなカレーにメンチカツ(これで450円)を注文。これがあれっと思うくらいにありきたりなカレー。それほどに特徴がないのだ。やっぱりここに通っていた同級生のTはバカだな、なんて薄笑い。ハハハ、「C&C」の方がやはりうまいじゃないかと一人心の中で鬱屈を溶かしているとテーブルに不思議な瓶がある。これが辛みを出すスパイスであるという。こういったものはすぐに試してみることにしている。これを早速かけるとカレーの味わいが一転した。好みなんだなこの辛さ。これは「C&C」と対等か、少し上のクラス。知らなかったと少し後悔する。こんどは「印度カレー」にするかな。

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ハウス11イマサ
http://www.nishishinjuku.info/shop/shop.php?sn=84

「松翁」は仕事場から10分ほどの距離、神田猿楽町にある。少し歩くが、ときどき無性に行きたくなる店である。とにかくそばのうまさは都内でも最上級の店。夕方からはそばと酒をじっくり味わえる店になるのだが、この点でも言うことないだろう。
 さて、ざる850円と、値段はかなり高め、これがちょっと肴をとり冷酒を飲むと5〜6千円は消えていくだろう。こんな値段でも納得のいく味わいなのは実力というもの。
 ここでお勧めなのは天ぷらそば。これは揚がった順番に運んできてくれて、これなど天ぷらや顔負け。仕入れる穴子に関してはときどき「?」なときがあるが、毎回満点に近い揚げ方、ネタ選びであう。
 また季節の素材をつかった温かいそばがあって、これがとても魅力的だ。冬にはカキ、生海苔を使った「花巻」。実を言うと温かいそばというのはめったにうまいものには出合わない。そんな希有な存在である松翁は。
 さてまだ寒の時期に、注文したのは珍しいアサリを使ったもの。たしか1300円くらいだったろう。アサリは特大。見た感じでは中国産だと思われる。しかしこの時期国産よりも輸入物のほうが身が太っている上に味がいいのだ。業者に仕入れを任せているのか不明だが、この点でも合格。
 さてアサリを使ったときにいちばん失敗するのは、やや塩分が高い方がうまいということがわからないで、中途半端な味わいにしてしまうこと。アサリの旨味は塩分に等しいのだから決して、つゆの濃度は低めにしてはいけない。
 出てきたアサリそば、これは正しく絶品である。なにしろ大振りのアサリの身がぷっくりとふくれて、旨味と甘味が豊かに感じられる。そこにまたアサリの旨味いっぱいの汁と香りの高いそば。たぐっていて豊かな気持ちになる。
 作り方がわからないが、やや少な目につゆをはり、そばを入れて、酒蒸しにした殻つきのアサリをのせ、そのつゆも回しかける。さっぱりしている味わいから考えると上にかぶせたのはアサリの潮汁かも知れない。こんなことを考えさせるだけで優れた一品だろう。
 味はいつも満点に近い「松翁」であるが、ひとつだけ弱点をあげるなら接客だろう。主人夫婦の接客は残念ながら最低ラインである。注文を間違える、忘れるは日常茶飯事。厨房の職人をいきなり怒鳴りつける女将さんというのも珍しい。まあ、こんな雰囲気も楽しいではないか? と思える今日この頃だ。

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千代田区猿楽町2-1-7
●2006年2月7日記す

 秦野駅前からクルマで10分ほどのところに「実朝の首塚」がある田原ふるさと公園というのがある。そこにある「ふるさと伝承館」という農産物なども直売する建物の一角にあるのが『そば処 東雲』。ここのそばがうまい。

 当日は、山を谷ありの道を超小型折り畳み自転車で駅近くから50分もかかってたどり着いた。顔が真っ赤になって座り込んだのだから、きっと店のおばさんも驚いたことだろう。ついつい生ビールをグイ。
 人心地ついてから、腹がペコペコになっていたので「天ざるセット」930円を注文した。これは天ざるに古代米のご飯と漬物がついたもの。いつもならきっと大盛り天ざるにしていたはずなのに空腹感のために米粒が食べたくなったのだ。考えてみれば白めしが好きなので、古代米だろうが炊き込みご飯だろうがうまいと感じるはずがない。これは失敗だった。まあそんなことは置いて。
 主役のそばは太い細いがあるものの、香りが高く味わいのよいもの。これは鄙の良さがあるというか、都会のそば屋のように無個性で変に洗練されていないところがとても好感が持てる。また薬味のネギの味わいも、精進揚げの野菜も新鮮なためだろうか、まことに味わい深いものだ。次回は天ざるの大盛りと心に決めて、また遙か駅前まで自転車をこぐのだ。
●この『そば処 東雲』のある「ふるさと伝承館」には農産物直売所がある。これもすごくいい。でかい柿を2袋、里芋、ステックセニョール、漬物などたっぷり買い込んできた。
2005年11月27日記す

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秦野東地区農産物直売研究会
http://3net.jp/denshokan/

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