炎天下の神田駅前、四国に帰郷の折りに見た「はなまるうどん」というのがここにもある。間違いなくチェーン店だとは思ったが、こんなに全国的な店だとは思わなかった。これをネットで調べてみると、なんと吉野屋の経営ではないか? ようするに讃岐うどんをチェーン店化したもの、と見える。
神田駅前店は間口が小さく、いきなり地階におりなくてはならない。駅前とはいえ決して条件がいいとはいえないだろう。それなのに午後3時、地階に下りると10人ほどの客がうどんをすすっていた。繁盛しているようだ。
店舗に下りると、細長いL字型のカウンターがある。そこでまずはうどんを受け取り、好みの天ぷらを選ぶというのは四国などにあるセルフの店と同じ。猛暑日なので「冷やしぶっかけ」を選んで天ぷら2つ。店員の態度はやっとこさマニュアル通りにやっているといったぎこちないもの。全然食べ物を扱うプロとはなっていない。オヤジとしてはこのあたりで既に【一げんなり】する。もっと食べ物を扱っているのだという姿勢を教えるべし。
さて、讃岐うどんの基本にふれる。「讃岐うどん」という絶対的な形は存在しない。「讃岐うどんのメッカ」香川県西部の製麺所、もしくは「うどん屋」は意外に千差万別である。そんななか定番的な形を見つけたのは所謂「よそ者」だろう。
その定番となるものはうどんというのは打ったら茹でる。茹でて玉にするのだけど、この状態が「ゆでうどん」という日本全国どこにでもある基本形。
普通はこれを温めて、汁をかける。一般に食料品などに売られている、うどんは打って、茹でてから時間が経っているため、「温める」作業が必要なのだ。でも製麺所、手打ちうどんの店では、そのまま食べてもいいくらいに新鮮であり、「温めなくてもいい」。だから冷たい茹でうどんに温かい汁というのもありだし、新鮮でも熱いうどんが食べたいなら「熱いのに熱い汁」をかけてもいい。これが「冷や熱」と「熱熱」だろう。打ち立て、茹でたてなら「茹でて水にさらした、冷たいのに冷たい汁」すなわち「冷や冷や」、「ぶっかけ」というのもある。『はなまるうどん』の場合基本的には「冷や冷や」はない。これは店舗が限られているようだ。
さて、うどんを語ると長くなるので『はなまるうどん』の「ぶっかけ」に戻すと、これが少々つまらないものだ。基本的に「よそ者」が作る「合格点」のうどん。
そう言えば「はなまる」とはなんぞや一般言語なんだろうか? この言葉のつくテレビ番組もあったように記憶する。「花丸」というのはひょっとして「よくできました」の「○」でそれに「お花をつけたもの」か? 本当にそうなら気持ちが悪いな。ヘンコツオヤジにはとてもついていけない言語感覚だ。ようするに「花○」のつけられる程度の幼児的うどんという意味にとれる。実際、『はなまるうどん』のうどんは「花○」という幼児的な合格点の味である。オヤジの【二げんなり】だなこれも。
例えばうどんは「もちもち感と腰だ」というと一般的な良識に裏打ちされたもの。その「もちもち感」にもいいのと悪いのとあるという微妙な部分や、小麦の香りは存在しない。汁も煮干しを使っているのかカツオ節を使っているのかわからないほどに洗練されている。これでは不満となるところがあるわけないだろ、というのが見えてくる。はっきりいってこの「優等生的で突出しない」ところが嫌いだ。例えば平均化された味わいというのか、「ここまででいい」という姿勢。これオヤジの【三げんなり】。
しかし、ボクが嫌いだからといって、この店、ダメな店というわけではない。都会人は「花○」的なものが大好きらしい。また「ヘルシー」とか「スローフード」とか意味もわからず、なんでも受け入れてしまう「深く考えない」姿勢がある。その上、本当の香川などの味ではないにしても、天ぷら用にテーブルにはソースがある、並んだ天ぷらもうまいし、うどんとしては65点の及第点、このチェーン店は受けるだろう。
最近神田駅周辺にはチェーン店ばかりが目立つ。個人の飯屋には受難の時代とも言えよう。今でも神田駅前には旨い安いの個人営業の飯屋はある。でも時間が無くて、致し方なく駅前で早飯となると、この店を選ぶ可能性、ボクにもありだ、残念ではあるが!
はなまるうどん
http://www.hanamaruudon.com/