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名古屋駅から歩いて数分というところに、まことに賑やかな、そして魅力的な市場がある。
その名を「柳橋中央市場(柳橋市場)」という。
市場にもいろいろあるが、これは民間経営の市場であるようで、いくつかのビルに分かれて魚屋、青果、食肉、練り製品、乾物、荒物、紙製品などの小店が並ぶ。
このビルのなかのゴチャゴチャした迷路の間だ、間だに小さな飲食店、食堂などが見つけられる。なかなかどれも魅力的なのだけど、一際引かれたのが「かつ屋食堂」という小さな店。
間口一間ほどで表に紺色の大きな暖簾がさがり、大きく食堂とある。
ちらちら見える店内ではオヤジさんがなにかを揚げているのが見える。
市場巡りの後で腹がペコペコなので思わず、重い暖簾をくぐる。
奥行きもなく小さな店だ。
厨房が丸見えの、そんな距離感がうれしい。
他に客はひとりだけ。
こんなときどこに座っていいものやら、うろうろ。
結局角に座ったのがよかった。
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手前がヨシエビ、奥が「あかしゃえび(アカエビもしくはモギエビ)」
目の前には甲だけを取り去った「あかしゃえび(アカエビ)」、ヨシエビ、マアナゴの開いたものがある。
「これ天ぷら用ですか?」
「どれでも言ってくれたら揚げますよ」
このオヤジなかなか気さくで優しげだ。
それでとにかくお茶をもらい。
「あかしゃえび(アカエビ)」、アナゴを揚げていただくことにする。
後はご飯とみそ汁。
先にやってきたみそ汁がよかった。
愛知ならではの豆麹豆味噌、そこに里芋、分葱などが入っている。
この里芋入りというのがうれしい。
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天つゆをどっぷり浸した、「あかしゃえび(アカエビ)」がうまい。
足の部分が香ばしい。そして甘味がある。
アナゴは小振りだけど、これも揚げたてなのでいい味だ。
天ぷらを堪能していたら、オヤジさんが串ものを揚げている。
2本揚げて、鍋にどぼっと漬けて皿にいれて隣のお客に。
「それなんですか?」
「ええ、これはただの串カツです」
奥の客が「コイツ、串カツも知らないのか」と驚いたようにこっちを見ている。
面白いので、これもお願いする。
「みそとソースどっちにします」
当然、名古屋だからみそに決まっている。
やってきたのが黒く染まったカツ。
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細長く貧乏くさい外見ながら、なかなかうまそうな。
やっぱり無造作にかぶりつくといい味わいだ。
豆味噌(三州みそ)で作ったタレに酸味があり、微かに渋いのがいい。
なかの肉は豚らしいが、あんまり細いので存在感にかける。
ついついカツの衣だけがひっぺがれる。
さて、オムレツからラーメンなどもある「かつ屋食堂」での支払は地物のエビ、マアナゴなどあれこれたのんだせいで1400円なり。
本当はラーメンや普通の定食にすると600円くらいで腹を満たすことができる。
そんな店だから市場関係者らしき人が後から後から慌ただしく食事をして、大急ぎで去っていく。
お客の注文に小柄なオヤジはきりきり舞してフライパンを振り、麺をゆでて、天ぷらを揚げている。
ああ、なんだか名古屋に来ているという実感が湧いてくる。
そんな食堂なのである「かつ屋食堂」は。
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