豆腐図鑑: 2006年11月アーカイブ

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 川越は都心からも近く、しかも小江戸などとして観光客にも人気がある。ただし恵まれていると言っても、同じくらいの都市は多いわけで、「恵まれている」だけじゃなく「観光都市として努力している」街なのだろう? そして観光という面から鑑みると、当然古きよき街並みが最大の目玉で、とうぜんその努力は連休初日に歩いていても、そこここに感じられた。また商店街が元気に営業していなくてはいけない。つまりシャッター通りでは、ダメだということ。その点でも川越の街は楽しいのだ。そしてそこにプラスするのが「うまいもん」である。
 私が旅をするに必ず押さえる「うまいもん」の要は豆腐である。うまい豆腐屋があれば、その街は間違いなく文化的にも、また観光的にも上質である。と、川越で見つけたのだ「うまい豆腐」。これが半端なうまさではない。関東でも随一のうまさかもしれない。

 川越に喜多院という古刹がある。その古刹の脇道を通り、大通りに出る手前に古めかしい豆腐屋を見つけた。それが「市野豆腐店」である。最初入ったら男性がひとり店番をしていて、「豆腐もって帰れますかね」と聞くと、帰宅までの時間を聞き、買うのは帰りにするように言ってくれる。「氷は用意しますけどね」とのこと。
 そしてさんざん歩き回って、もういちど店に入ると、こんどは女性がひとり。値段表を見て「ごま入り飛龍頭」(700円)と「もめん豆腐」(たぶん140円)2丁を購入した。そしてそのとき「辛子いりますか?」と聞かれたのだ。

「川越では豆腐に辛子なんでしょうか?」
「そうですね。辛子をつけますね。よそはわかりませんが、冷たい豆腐には辛子なんです」
「驚きましたね。埼玉では辛子をつかうんですね」
「いえいえ、川越だけかも知れません」
 当然、辛子もいただいた。

 帰宅して、風呂上がり、半丁食べた冷や奴。これが絶品、うまい。大豆から出てきたのだろうか甘味があり、トロっと口の中でつぶれたときに旨味が浮き、広がる。これはすごい豆腐である。京都でもこれほどの豆腐は少ないだろう。しかも値段からして特別に造った高すぎるもの(近年やたらに高くて御託の多い不愉快な豆腐が多くてこまる)ではなく普段着の豆腐。これが100円代で手にはいるなんて川越人の幸せなことよ。うらやましいな。
 なにもつけないで一口、しょうゆをつけて一口、そして辛子をつけて一口。個人的には「市野豆腐店」のものならしょうゆだけでいい。でもショウガがあってもいいのだが、辛子をつけてうまいとは思わなかった。
 よく考えてみると、たとえば江戸時代に豆腐をしょうがで食べるなんて難しいのではないか? ショウガは秋に種ショウガをうめて、初夏に新ショウガを取り、秋には根ショウガを収穫する。それを乾かして貯蔵してもかなり高いものではなかったか? これからすると粉に出来る辛子は使いやすい。これは調べてみなくては。

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川越のれん會
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