豆腐図鑑: 2006年10月アーカイブ

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 墨田区押上から来たので十間川を渡り、そのまま川が横十間川と分かれて、その東側はもう区が変わって江東区。南に下がると江戸時代より「萩寺」として親しまれた龍眼寺がある。その角を東に歩くとあるのが『小川屋(小川豆腐店)』なのである。間口の狭い奥に女将さんらしい女性がいる。そこにボクが足を踏み入れて「豆腐と納豆を買って歩いています。それが趣味なんです」なんてわけのわからないことを言いうのであるから迷惑だっただろうな。
 その清潔至極な店内は微かに大豆を煮たときの香りがする。お勧めを聞こうとするよりも先に目に入ったのがパック詰めされた寄せ豆腐である。これが3つ並んでいる。まずこれを1つと、木綿豆腐1丁、あとは「大平納豆」を分けて頂く。その注文するときの女将さんのテキパキとした仕草がいいではないか。
 そしてまず「寄せ豆腐」を肴に晩酌となる。「秋深し 未だにアオマツムシの 声高き」と季語不明の俳句を作りながら生醤油で掬い食うこの「寄せ豆腐」が淡麗ななかに甘味があり、そして大豆の香りがフワリ。これは180円の価値有りではないか、見事である。
 そう言えば、亀戸天神に龍眼寺とその昔はさぞや美しい風景がここにあったのだろう。また寺があるならうまい豆腐があるというのも「これ道理」ではないだろうか。

天神を 見ずともよしの 寄せ豆腐

 とまた季語無しの俳句を作る、五十路男なりけり。

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小川豆腐店(小川屋) 東京都江東区亀戸3丁目30-18

 食のパラダイスである築地場内・場外はにぎわって有名であるが、晴海通りを挟んで6丁目にはそのバックヤードがあるのをご存じだろうか? 仲卸や野菜商、また幟の店などがひっそりと店を構えている。そしてここに築地の隠れた名店としてあるのが小林豆腐店である。
 一見なにげない豆腐店に見える。値段も「手造り江戸豆腐」「極上絹豆腐」ともに160円、「江戸おぼろ豆腐」210円である。他には絶品の湯葉もあり、当然揚げやがんももある。
 使用する大豆はフクユタカ、本にがりを使っている。豆腐には淡い甘みがあり、硬さも絶妙である。豆腐、湯葉と味わい、値段の安さからもっともすぐれた店である。
 角にある店で豆腐を買う間にも、次々に来るのはほとんどが料理屋さんやプロ達。さすがにプロの嗅覚に脱帽する。

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小林豆腐店 東京都中央区築地6丁目8-5

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 いや、なんとも驚いたのは店の位地と造り、そしてこの店主親子である。真横にあるスーパー「高田屋」で「おいしい豆腐屋ありませんか?」と聞き、教えてもらって店の前に来たら、ちょうど出てきたのがしかめっ面のオヤジさんである。
「あの、豆腐を買いにきたんですが」
 外観のいかにも仕舞た屋風なのに気後れしておずおずお願いしたのだ。
「うちの豆腐はうまくないよ。やめた方がいい」
 いきなりこんなことを言われたのは初めてである。では強面なのかというと別に真顔に見える。
「どこまで持って帰るの。東京、うまくないからやめといた方がいいな」
 そこに娘さんまで登場して
「そうそう」

 オヤジさんが脇の部屋にいなくなったかと思っていたら、
「うちじゃね、これがちょっとはいいかな」
 皿に厚揚げをのせて持ってきてくれる。
 この一枚を食べて驚いた。表面の香ばしさはもとより地の豆腐がいいのだ。

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「あの厚揚げと豆腐を下さい」
 お願いすると、娘さん。
「厚揚げはだめだよ」
 なにがダメなんだろう。
「厚揚げはね。持って帰っている間に水が出るの。だからうまくない」
 それではと豆腐だけ1丁買って帰る。この豆腐が渡された途端に持ち重りがする。
「ありがとうございました」
 と支払ったものの幾らだったのだか忘れてしまった。でも非常に安かったのだ。
 帰り着いて酒の肴はこのドデカイ木綿豆腐である。確かに今時の甘味のある豆腐よりも、豆腐屋さんが昔から造ってきている淡麗な味わいの豆腐だが、水がいいのだろうかこの大きな豆腐を平らげても飽きが来ない。残念なことに当日は富士も隠れていたことだし、また河口湖町へ、そしてまたまたあのオヤジさんに会いに行こうかな? 


中村豆腐店 山梨県南都留郡富士河口湖町船津3850-4

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