ボクの故郷は徳島県美馬郡貞光町、だった。
今では半田町、一宇村と合併して「つるぎ町」となる。
貞光というのは不思議な町で農業も林業もほとんどなく、商店街と住宅地が大方を占める。
明治期の隣村太田と昭和の端山村との合併によって町となるまでは小さな小さな集落であった。
“二層うだつ”の上がる街として実際に来てみると立派なのだけど「知名度はほぼゼロの町」である。
超がつくほど田舎なのだけど豪壮な建物が多く、その昔、エンタシスの柱を備える見事な洋館まであったそうだ。
江戸時代、明治時代の繁栄は、いったいどこから来たのだろう。
それは端山、一宇でのタバコ栽培の集散地としてなのだ。
貞光町は町内を流れる貞光川の扇状地にある。
貞光の市街地を抜けて川を遡ると、ほどなく端山になる。
端山はタバコの栽培、林業などでこれまた栄えたところだ。
その昔、勉学を志す若者を集める私塾などもあったという。
個人的には中学、高校と我が集落当たりには少ないアユを追いかけたり、上流にしかいない、あめご(アマゴ)を手づかみする川遊びの場所でもあった。
どちらにしても町に住んでいる限り、少し遠出する場所だった。
それが今ではクルマで15分ほどで端山の中心集落につき、その山際にある「剣山木綿麻温泉」に行き当たる。
宿泊施設のない、小さな温泉なのであるけど、清潔で露天風呂にはいると深山幽谷に包まれて爽快である。
ちなみに入浴料はたったの400円なり、子供老人は200円というのだからたまらない。
公衆浴場と変わらない値段ではないか?
さて、風呂上がりに、子供は売店で「柚ジュース」を飲む。
ボクは「うどん350円」というのに惹かれて扇風機の前でやっと汗が引いたというのに熱いのをいっぱい。
うどんの他に素麺や蕎麦もある。
夏にうどんでは暑苦しいと思う向きには素麺などお勧め。
つるぎ町は素麺で有名な半田町と合併していることを明記しておく。
刻んだ油揚げ、赤い蒲鉾、澄んだ汁というのが徳島うどんの特徴なのだけれど、少し待たされてやってきたのは、“まさに”それであった。
麺が細すぎるのが残念なのだけど、汁の味がいい。
薄口醤油に塩、よく煮出した煮干しの香り。
具の油揚げがなんともうどんに合うのだ。
またなくてはならないのが赤い蒲鉾。
この完璧に近い“徳島うどん”ぶりに感激一入。
「剣山木綿麻温泉」は温泉好きにも、うどん好きにも大いにお勧めできる。
剣山木綿麻温泉
http://www.town.tokushima-tsurugi.lg.jp/yuumaspa.html