うどん、そうめん他: 2006年7月アーカイブ

 三河から尾張へ、国道一号線を走っていて大きな「きしめん」の文字に惹かれて入った店。すぐ西に熱田区二番2の歩道橋が見える。
 真っ黄色のデカイカンバンの割にいたって庶民的な店。注文したのは肉丼ときしめんのセット。これが残念ながらメニュー(セット)名を忘れてしまったが690円。考えてみると「きしめん」を食べたのは名古屋駅地下と新幹線のホーム。新幹線のホームのはなんとも美味でおかわりしたいくらいであった(古い記憶だが)。
 それで少々期待したら、その期待には届かないものの美味。つゆはかつお節の風味がきいていて、やや甘めで、穏やかな味わい。きしめんはつるり、これは平凡かな。肉の丼はなぜかゴマ油の風味があり、これは苦手な味。空腹に耐えかねて丼を頼んだのは間違いだった。
 カンバンがデカイのでクルマから見つけただけで入った「めん処 庄吉」、仕事場の近くにあると気軽でありがたい店だろう。店員さんの感じもよく店内は清潔。でも、わざわざ食べに来るほどでもないが意外にこんな店が街には必要なのだ。
 さて久しぶりにきしめんを食べた。それで名古屋のきしめんとは、というと全体にやや甘口、それでいてくどくない汁につるりと平べったい麺。やはり名古屋に来ないと食べられないぬるい味わいであった。

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めん処 庄吉 名古屋市熱田区二番

 五日市から檜原街道を進むと黒茶屋に至る。そこで道は左右に分かれるが秋川を渡ってまた合流する。そこから檜原村にクルマを走らせることほんのしばしで右に折れる道があり、そこを行くと『山味茶屋』が左に。地名からすると戸倉坂下とでもいうのだろうか?
 昔からここに「手打ちうどん」のカンバンを見つけてはいた。ただし、あきる野市五日市あたりは明らかに観光地。観光客相手の「いかにも」という店も多々あり、せっかくたどり着いてもまがまがしいものだったら嫌だな、とも思う。それが『山味茶屋』にたどり着いたらあまりにも素朴な「食堂」然とした佇まい。店の前に駐車しているクルマも地元のものだ。

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 こぢんまりした店の引き戸をあけると落ち着いた色調の店内、右に2つ、左に2つテーブルがあって、右手奥には小さな小あがり、奥に厨房が見える。厨房の奥は住まいだと見受けるが、都会などでみる狭苦しいものではなくどこからか外風が入り込んできて開放的だ。
 先客は小あがりの4人連れの女性と、手前の卓に男性。4人がけテーブルに男性がひとり。みな和気あいあいの雰囲気で常連さんのようだ。
 朝から2時間ほどの山歩きで、おなかがペコペコだ。メニューをみると「日替わり定食750円」、「うどん付定食1000円」、ざる600、カレーうどん700円、山菜、月見うどん600円にたぬきうどん550円、ざるうどん600円とあり、となりにご飯ものが並ぶ。カツカレー850円、カツライス800円、カツ丼800円、親子丼650円、カレーライス650円とある。ここで呻吟して考える。いちばん人気があるのはまわりを見渡す限り「うどん付定食」なのは一目瞭然。でも、こちらは「背中とお腹がくっついている」のだ。家人は、なぜかあれだけ激しい山歩きのあとなのに「山菜うどん」。うどん屋だと思ったのになぜか丼物が充実、どうしても目は「カツ丼」のあたりを漂うのだ。
「カツ丼食べたいな。うどんも食べたいな。困ったな困ったな」
 うんうん考えていると家人が勝手に
「カツ丼とざるうどん、それに山菜うどんをお願いします」
 勝手に決断を下すな。と思ったが出来ればざるうどんは大盛りにして欲しかった。

 奥で揚げ物をする音がする。これはカツを揚げているのだ。腹がぐぐぐぐーと鳴り。今更、家人と世間話をしてもつまらないので暇を持てあます。小あがりの4人連れはやたらに「うまいわね」なんて言うので余計に腹が減って、腹が立ってくる。
 やっと出てきたのは山菜うどん。考えてみると、まだ5分と経っていない。その山菜うどんを少し味見。これがうまい。何よりも汁が絶品だ。関東でこれほどうまい汁に出合うとは思わなかった。しかも当たり前だが手打ちうどんもうまい。しこしこという手打ちならではの食感が感じられるが腰が強すぎない。小麦の甘さが浮かんでくるのに連れて微かに香ばしさというか風味も出てきた。

 話はそれるがうどんのうまさの話をすると必ずイのいちばんに出てくるのが「腰」の強さ。「うどん=腰」なんていうバカまでいるのには呆れかえる。うどんのうまさはいかに麦のもつ甘味、そして風味を引き出すかにある。それは手打ちでも機械打ちでもいいのだけれど、この味わいを引き出すときに結局適度な腰が生まれるわけで、目的が腰ではいのだ。しかも腰が強すぎると麺自体の味わいがわからなくなる。

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 やっとカツ丼が出来上がり、熱々のどんぶりの中でのせたばかりの三つ葉が萎びている。驚くべきことに、これもうまい。豚肉はまあ普通だがご飯と煮汁の味わいがよく、ついつい一気にかき込んでしまうというまさだ。みそ汁はやや辛目。この塩分濃度に山に来たという実感が湧く。脇に添えられた、きゃらぶきも醤油辛いが味が良く、家人がさかんにかっぱらっていく。

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 そして、ざるうどん。やはりうどんが実にうまい。つけ汁も甘味が控えめで、うどんの風味を損なわない。小皿の七味唐辛子は自家製だと言うが、この香りがよく、つけ合わせの野菜もうまい。ざるに残った破片、汁に残った最後の一本まで食べきって、まだもの足りない。ひょっとしたらもう一枚ざるを食べないと一生後悔するかも知れない。

「やっぱり、ざるうどん、大盛りにしとけばよかったな。ざるもう一枚食べようかな」
 家人は聞こえない振りをして支払を済ませるのだった。

 ある日思い立って、入間に来た。これは埼玉を知るための旅であり、時間があくと突発的に敢行する。そして第一の目的、『繁田醤油』を見学。いろいろ醤油蔵などみて、「この辺にお昼を食べられそうな店ありませんか?」とたずねて、『繁田醤油』の方が息を切らせて、わざわざ連れていってくれたのが『つきじ』である。
 たどり着いたらそこはまったくの住宅地。新築の店に使い込んだ紺色の暖簾。白抜きで「手打 うどん つきじ」とある。この古い暖簾は新築前の店で使っていたものだろう。ここで使われている器類も古い使い込んだもので思った以上に老舗なのだろう。
 店内に入ると左手に4人がけのテーブル2つ、奥に座敷があり、右手に厨房。厨房との境にカウンターがあって、ここに天ぷらの入ったバット。そこに箸が添えられて「天ぷら一つ50円」とあり、春菊、かき揚げ、ごぼう天、ナスなどがある。
 メニューは「きつね」、「たぬき」もあり、もりもある。どれも魅力的だが埼玉ということでやはり「肉汁うどん」にする。この「肉汁うどん」は埼玉ならではの茹であげた温かい、また冷たいうどんの食べ方である。
 出てきたものは地粉を使った薄墨色のうどんがどんぶりにこんもりとあり、右手の椀に汁、これに薬味でワカメとネギ、すりゴマがつく。面白いのは前回飯能で食べた「古久や」でもそうだが、うどんがどんぶりに入っている。きっと、このどんぶりは温かいタヌキでもかけでも使われるものだろう。
 この汁に豚肉(牛肉の場合もあるのかな?)、ネギがたっぷり入っている。汁はたぶん、さば節、昆布の出汁にしょうゆ味、みりん、それに肉の旨味が加わって濃厚である。
 これが「中」であり650円、ごぼう天と竹輪天を加えて750円也。
 うどんはボク好みのもっちりしたもの。汁をつけないで食べても塩っ気を感じてうまい。これならどんなに大盛りでも最後まで「飽き」がこないで食べられそうだ。これにコクのある肉汁がよく合う。盛りのいい
「中」がほんの数分でなくなって、まだもの足りない。これはまさにうどんの美味のなせる思い。しかし「つきじ」のうどんはうまい。
 また、残念ながら天ぷらはおいしいとは言えないが1個50円は安いな。
 目立たない住宅地にこのような「うまいうどん屋」があるとは入間の味わい恐るべし、かも知れぬ?

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周りはまったくの住宅地である。よそ者にはこんなところにうまい「手打ちうどん」の店があるなんてわかりっこないだろう

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うどんは地粉を使い薄黒い

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汁は豚肉の旨味が濃厚に出て、醤油辛くうまい

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つきじ 埼玉県入間市宮前町7の12
●2006年6月14日記す

 埼玉への旅、最初に行ったのが飯能市である。なぜ飯能市かというと第一に我が家から1時間ほどで行ける。酒蔵がある。それとたまたま読んでいた林芙美子の短編に「遠足に飯能に行った」というのが出ていて、「飯能は東京にあってそんな土地柄なんだ」と思ったためである。まあ、動機はとりとめもないものである。

 さて飯能でどうしても見つけたかったのが典型的な「埼玉うどん」。
 その「埼玉うどん」なるものいかなるものか? というのを埼玉生まれ、埼玉在住の知人の弁を借りて説明する。
「まず汁を作るの。出汁をとるだろ、醤油で味つけして、そこに豚肉を入れる、玉ねぎやニンジン、夏はナスも入れたかな。とにかく野菜を入れる。この温かい汁に茹でたうどんをつけて食べるんだ」
 この人、説明をしながら盛んに目を宙に浮かしている。きっとお母さんなんかが作っていたのを思い出しているのだろう。

 そして飯能市に来て、たまたま立ち寄った和菓子屋で「おいしいうどん屋を探している」と尋ねて、たどり着いたのが「古久や」である。木造の古めかしい切り妻の二階家、正面入り口がガラス戸になっていて、真ん中のガラスに磨り文字で「古くや」とある。「いい感じだな」とガラス戸に手をかけて、そこにかかっていたのが「うどん売り切れ」の紙。実を言うと、この「古久や」の場所がわかりづらい。飯能駅から飯能銀座を通り抜けて八幡町という旧市街地に行くのだけど、こんなところにうどん屋があるんだろうかと心配になる。そんなときにたまたま道を聞いて親切に案内してくれたのが「とんき食品(豆腐屋)」の若だんなである。諦めていると親切にも「うどん一玉もないの」と聞いてくれたがだめだった。「とんき食品」の若だんなありがとうございました。
 そして今回、満を持しての飯能である。午前11時に店の駐車場にクルマを止めて、まだ空いている店内に入る。ガラスの引き戸を開けて入ると昔ながらのたたきの床。畳敷きの小上がりに細長い机が並ぶ。明かりがついているのに外から入り込む光に対して、店内は薄暗い。右手に厨房があるが、その古めかしくも情緒のある造りは必見のもの。考えてみると時代劇を見ていても机に椅子の居酒屋が出てくる。まさか江戸時代、あんな店の造りがあるわけがない。本来は畳敷きにあがり平膳で食べるか、または小上がりに腰掛けて食べていたはず。そしてその江戸時代さながらの光景がここにあるのだ。
 入り口に近い場所に座り、ふと前を見ると「房州節 羽山商店」の段ボールがある。房州節というのは、さば節である。また、そのさば節のなかでも黴つけまでする高級品なのだ。考えてみると千葉県外房はさば節の大産地である。このさば節の産地があって関東の、そば文化が発展したとも言える。すなわち東京などでの、そばの「かけ汁」は原則的にはさば節の出汁に醤油、砂糖、みりんを合わせた「かえし」を使う。当然、埼玉うどんの出汁にもお隣の千葉県から、さば節が来ているわけだ。ここに江戸のそばと埼玉のうどんがまったく無関係ではないのが読みとれる。

 品書きには、もりうどん480円、かけうどん480円でそれぞれ大があって530円。たぬきうどん、きつねうどんが530円、月見が580円、玉子とじ630円。肉つゆうどん並630円、大680円、特840円、と並び、いちばん下に天ぷら、ごぼう、いか、かき揚げが1個100円とある。
 席に着き品書きを見ながら周りを見回すと、ほとんど皆同じ物を食べている。これがまさに探していた埼玉うどん、「古久や」では「肉つゆうどん」である。当然大にしてゴボウの天ぷらをつける。すると店員さんが「うどんは温かいのと冷たいのがあります」という。「初めてなのですが、どちらをおすすめですか?」と聞くと「普通は温かいんです」と言うのでそれに決める。
 出てきたものは、どんぶり一杯のうどん、大振りの酢の物を入れるような器に豚肉、ネギなどの入った汁、ごぼう天に、ネギ、七味唐辛子、たぶんうどんのゆで汁。うどんはあまり腰のある方ではないが、滑らかでうまい。これなど腰が強いばかりでうまみにかける今時の讃岐うどんよりもいいのではないか。汁はやや甘めで豚肉の旨味が出て、濃いしょうゆ味。飲むには辛すぎるが全体にまったりしている。具だくさんの汁にうどんをつけて食べるのだが、これがなかなかうまくいかない。結局、うどんと豚肉、ネギなどの具をともにかき込むようにして食べると、これがいいのである。ただし「大」にすると後半うどんを持てあます。「飽き」てしまうのだ。また天ぷらは残念ながら味はよくない。ただしうどんからくる「飽き」を少しだけ還元してくれるだろう。
 さて帰りの16号、混み具合はいかがだろう? 初手からいい埼玉うどんの旅となった。

 ちょっと蛇足。今回の埼玉うどんとほとんど同じものを我が家では日常よく食べている。ただし、起源は埼玉にはない。始めたのは大阪に「肉すい」というのがある。これはうどんの汁に牛肉を入れて、驚くべきことに、うどんを抜いたもの。喜劇俳優の花紀京が馴染みのうどん屋に作らせたという曰くつきのものなのだ。これを豚肉に替えて、野菜をたっぷり加えて昼ご飯などで食べている。そして冷たいうどんにも、この汁を合わせているので、まるでうり二つの味わいである。どうも、うどんの食べ方で、これ以上に合理的で栄養面からいって優れた食べ方はないのではないか? そう思ってみるとたぶん埼玉以外にも同様な食べ方をしている地域がありそうで、これも楽しみだ。
●2006年3月17日記す

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うどんどころ埼玉

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 埼玉に興味を持ち始めたのは3年前にペヘレイという魚を見に大里村(現熊谷市)を訪ねて以来である。残念なことに長年東京都に住みながら、「まったくお隣の埼玉のことを知らないのだ」、とクルマで走っていても痛感した。大里村に行くにもまったく埼玉の地名、また町の位置などが頭に入っていない。
 映画や鋳物で有名な川口市、歴史的にも有名な「忍」行田市は、どのへんだっただろう。また高麗、高麗川、高梁、など朝鮮由来としか思いようのない地名がある。その上、埼玉は多摩地区と同じ武蔵野なのである。
 そして埼玉にとにもかくにも「行ってみる」というのを始めて目に付いたのが、「うどん専門店」である。どうしてうどん専門店がこんなに多いのか? 埼玉出身者に尋ねてみると「気がつかなかったが、そう言えば子供の頃からうどんは散々食べていたな。別に店に食いに行くことはなかったけど」。そしてこの食べ方がなかなか面白い。うどんは冷たくししてザルなどにとり、これを豚肉を入れたしょうゆ味の温かい汁につけて食べる。この汁には季節季節の野菜がたっぷり入っていて、これを昼や夕食に食べたという。婚礼の席を締めくくるのも、うどんであるというのは興味深い。「晴れ」の行事にも、「け(日常)」にも埼玉ではうどんなのだ。
 また、調べてみると埼玉は米の裏作に小麦を作る二毛作地帯。平野部の多い埼玉では豊富に小麦が収穫されていた。当然、うどんのみならず蒸し饅頭や、焼きまんじゅうという小麦粉食をとてもよく見かけるのだ。とくにみたらし団子のような甘い味噌あんをかけた小麦粉でつくった団子など、群馬県、埼玉県でしかお目にかかれぬものである。
 さて、淡水動物と歴史に、うどんも加えて今年も埼玉に通ってみるのだ。
●3月4日記す

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埼玉県飯能市で売られていた「飯能まんじゅう」。切り干し大根ニンジンにシイタケなどの炒め煮が入っている。このように様々な饅頭が埼玉の各地で売られている

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