しょうゆ・醤油・味噌図鑑: 2006年10月アーカイブ

 相馬市内でうまそうなものを探して、なんだかがっかりして帰宅したのだけれど、山形屋だけは別だ。あまり古めいた街並みのない市内にあって、山形屋はいい雰囲気の切り妻造りのいい建物である。中に入ると、みそ、しょうゆなどを作り出すふくよかで甘みのある麹の香り。これを嗅ぐ、ず〜っとここで暮らしたくなってしまうほどの癒しの香り。これは商品にも期待できるはずだ。そこで購入してきたのが本醸造しょうゆ、薄口しょうゆ、相馬みそ、万能タレ。
 みそが主な店だろうけど、しょうゆもついでに買ってきただけだったのだけれど、これがいいのだ。値段がいたって庶民的なので、かけしょうゆには無理かと思っていたら、なかなかうまい。ついでにつけ加えるのもなんだがタレもみそもうまい。

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山形屋 福島県相馬市中村字上町31

 大分県臼杵市にある「フンドーキン醤油」の麦味噌は今や東京のスーパーにも置いてある。麦味噌が大好きなので普段からたびたび買っているのだが、もっとも購入回数が増えるのが夏なんである。夏になるとマアジがうまくなって夕方など「アジのなめろうで冷や酒をいっぱい」というのが至福。また夏には煮干しかウルメ節で普段の出しをとるのだがこれにも麦味噌があう。
 この麦味噌を選ぶとしたら手に入りやすさから「フンドーキン」となってしまうだ。そう言えば昔は長崎の「チョーコー」というメーカーも売っていたのにこれは近年近くで見つからない。これもいい味噌である。
 さて「フンドーキン」など麦味噌の特徴は塩分濃度が低く、なめると真っ先に甘味とそして麦麹が造り出す香ばしいような香りがたつ。そしてみそ汁などにして熱を通しても、この香りは消えず、まろやかな味わいになのである。
 当然、毎日のみそ汁にも味噌合えなどにも「フンドーキン」は欠かせない味噌のひとつになっている。このまろやかさが、我が家の味の基本となるのは西日本出身のためだろうか? 信州味噌などときにうまいなと思っても定番になることはない。
 様々な味噌を試し、また冷蔵庫に並べていても味わいの基本は徳島の御前味噌と広島の府中味噌、そして今回の「フンドーキン」の麦味噌となっている。

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フンドーキン醤油
http://www.fundokin.co.jp/
●八王子綜合卸売センター「伸優」にて
http://www.shinyuu-ok.com/

 実をいうと忙しいときなくなることもあるが、我が家のかけしょうゆはみりん、酒、少々の砂糖、かつお節、しょうゆ、昆布、そして約4分の1の水というもの。これを総て合わせて、火にかけて沸騰してきたら火をとめる。そしてそのまま一晩置いてしぼるだけ。しぼらないですぐに漉した方が苦みは少ないが、旨味もほどほど。これは好みである。と、これが忙しくてなかなか作れないでいるので家族が勝手にいろんな加減しょうゆを買ってくる。そのなかのひとつがこれ。
 近年、我が家の近所のスーパーで多々見つける。味わいは一般にいうところの加減しょうゆ。あきらかに自宅で作った方がうまいが、「たまごかけご飯専用」というのが面白い。感心していたら、家人曰く「もともと島根のどっかのメーカーが作り始めて、これは類似品よ」という。しかも「たまごかけご飯専用しょうゆ」は今、静かなブームとなっているのだという。これは知らなかった。これを捉え家人が「ちゃんと加減しょうゆを作ってくれないと、困るんだよね。こんな小さな瓶だけど300円近くするんだから」と怒る。
 驚いてレシートを見ると150ミリリットル、すなわち1カップ以下なのに「299円税抜き」もする。これは高すぎる。確かによくできているが自宅で作ればこの5分の一で作れる。家計のためだ。がんばってまめに加減しょうゆを作ろう!

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寺岡有機醸造 広島県福山市神村町3685番地の1
http://www.teraokake.jp/

 九州の醤油(しょうゆ)は甘い、とは思っていた。それを改めて実感したのが、この鹿児島の濃い口醤油である。もともと東京出身の鹿児島県南さつま市笠沙、定置網船頭のわかしおさんにいただいたもの。
 日本全国、見つけたしょうゆは全部買ってしまうというクセを持っている。それが九州のものは過去に福岡で通りすがりに買ったしょうゆの甘さに驚き、以来一度も買っていない。甘いしょうゆというと三河周辺、知多半島なども甘いのだが、九州のはもっと甘い。
 もともと東京都出身のわかしおさんに、「日常のしょうゆはどうしているんですか?」と聞いてみた。どうも南さつま市に関する限りほとんどがこの甘いしょうゆ、「普通のものはキッコーマンくらいかな」とのことだ。「それじゃ醤油には苦労するでしょ?」と聞く。それが「今では慣れてしまって東京に帰省して普通のしょうゆを使うと辛くて」困るのだという。
 このしょうゆ、まず最初に受け入れたのは姫達である。「お浸しはこっちがいい」「豆腐もこっちかな」と小さな一本がどんどん減っていく。
 この鹿児島の甘い醤油には砂糖、カラメル、サッカリン、アミノ酸に保存料などをがこれでもか、これでもか、と添加されている。まあ、醤油にありとあらゆる調味料を加えて「鹿児島人好み」にしているという表現がピッタリである。こんなものを今時そこいらにいっぱい棲息する「自然食にこだわる」人が見たら腰を抜かしそうだ。
 まあ、ボクはそんな小さなことより健康に置いて何万倍も大切なのが「あらゆる食い物への飽くなき好奇心」だと思っているので、どんどん使ってみる。すると、甘味との相性がいい、お浸しなど決して悪くない。刺身もマグロに関しては上々である。
「使い方次第ではうまいんだな鹿児島のしょうゆは」ということに気づいたのだ。これなら他の九州のしょうゆも改めて使ってみようと思った次第。
 まあ、好き嫌いは別として、このような九州ならではの醤油の味わい、大切にして変えないで欲しいものである。

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上原産業 鹿児島県河辺郡河辺町永田971

 生まれた家にはみそ蔵というものがあり、年に一度だけみそ造りをしていた。この日、子供の楽しみといったら、茹で上がったみそ豆をもらうこと。そんな昔ながらの、みそ作りも大阪万博の頃からやらなくなって、近所の食料品店で買ってくるようになってしまった。この中学の頃からの市販のみその味わいが、どうも私の嗜好となっているようである。
 この徳島でもっとも目にするのが「かねこみそ」である。地元でいると何気なく使っているみそが、他の地方とまったく違っていると知ったのは、当たり前だが上京して来ての話だ。初めて近所のスーパーで買ったみそが塩辛くて困った。徳島のみその特徴は麹が多く甘いこと。面白いのは徳島の郷土料理「焼きみそ」である。これは焼きみそ用の小皿(これは今では絶滅状態。実を言うとこっそり買い占めて持っているのだ)にみそを塗って炭火で焼くだけの、料理とも言えないもの。甘口のみそだから焼くだけでおかずになったのだ。これが信州みそだと塩辛くてとても食べられない。
 この徳島のみそを「御膳みそ」という。これは蜂須賀家の御膳に使うみそとして麹を贅沢に使って仕上げたもの。醸造元は多く値段もマチマチだが、庶民的、スーパーなどで簡単に手に入るのは「かねこみそ」のものだ。これが意外に東京でも手に入る。
 1キロ600円前後の庶民的な価格でありながら、徳島独特のまったり穏やかなみその味わいが楽しめる。どの土地を旅しても地のみそを探すほどの、みそフリークなので冷蔵庫には常にどこかしらの地みそが入っている。それでも基本的なみそは絶対必要である。それが我が家では「かねこみそ」なのだ。

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かねこみそ 徳島県板野郡藍住町奥野字乾81-2
http://www.kanekomiso.co.jp/index.html

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 千葉県には素晴らしい醤油が数ある。大手と言われるヤマサ、キッコーマンの影にあって小さな醸造元が素晴らしい醤油を作っているのだ。ただ多くは利根川流域に多く、千葉と言えど地域は限定される。
 そんななか内房富津市にポツンとあるのが宮醤油店である。富津佐貫は室町時代からの古い城下町だ。ただし今や商店も少なく非常に寂れてしまっている。城下町を思わせるのは『宮醤油店』あたりだけである。
 さて『宮醤油店』が作り出すのは登録商標「タマサ」の「かずさむらさき」。「タマサ」のマークにはお決まりの「上」の文字。1リットル入りの丸大豆しょうゆで530円である。この廉価(平均的なしょうゆと比べてのものではない)なしょうゆの味わいが我が国でも屈指のうまいものなのだから驚きである。なによりもいいのはつけしょうゆとしても煮込みに使ってもいいというところ。思うに千葉の飲食店などで「タマサ」を置いていると、間違いなくうまい店である。
 また余談だが、木更津のきんのり丸さんと話をしていて『宮醤油店』のことが意外なところから出てきた。富津の竹岡に「竹岡ラーメン」というのがある。それはチャーシューを醤油だけで煮込むのだけれど、そこでは『宮醤油店』のものしか使わないんだそうだ。竹岡は何度も通っている。今度行くことがあれば必ず食べてみたい。きっと「タマサ醤油の」の新しい味わいを感じられそうだ。

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宮醤油店
http://www.miyashoyu.co.jp/index.html

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