墨田区押上から来たので十間川を渡り、そのまま川が横十間川と分かれて、その東側はもう区が変わって江東区。南に下がると江戸時代より「萩寺」として親しまれた龍眼寺がある。その角を東に歩くとあるのが『小川屋(小川豆腐店)』なのである。間口の狭い奥に女将さんらしい女性がいる。そこにボクが足を踏み入れて「豆腐と納豆を買って歩いています。それが趣味なんです」なんてわけのわからないことを言いうのであるから迷惑だっただろうな。
その清潔至極な店内は微かに大豆を煮たときの香りがする。お勧めを聞こうとするよりも先に目に入ったのがパック詰めされた寄せ豆腐である。これが3つ並んでいる。まずこれを1つと、木綿豆腐1丁、あとは「大平納豆」を分けて頂く。その注文するときの女将さんのテキパキとした仕草がいいではないか。
そしてまず「寄せ豆腐」を肴に晩酌となる。「秋深し 未だにアオマツムシの 声高き」と季語不明の俳句を作りながら生醤油で掬い食うこの「寄せ豆腐」が淡麗ななかに甘味があり、そして大豆の香りがフワリ。これは180円の価値有りではないか、見事である。
そう言えば、亀戸天神に龍眼寺とその昔はさぞや美しい風景がここにあったのだろう。また寺があるならうまい豆腐があるというのも「これ道理」ではないだろうか。
天神を 見ずともよしの 寄せ豆腐
とまた季語無しの俳句を作る、五十路男なりけり。
小川豆腐店(小川屋) 東京都江東区亀戸3丁目30-18