四国4県のうどんはそれぞれ微妙に違うと書いてきた。そこでまずは徳島うどんとはなにか? を明確にしたい。出汁は煮干し主体で塩、ほんの少しの醤油、みりんの味つけ。麺はシコっと歯切れがよく腰はほどほど。具は原則的には刻んだ油揚げ、赤板(赤かまぼこ)、青ネギ。これを大阪では「きざみ」というが徳島では単に「うどん」である。大阪との違いは大阪のつゆは徳島より甘いということか。
ついでにここで少々徳島中央卸売市場の食堂事情を書いておきたい。市場は北に青果、南に水産の棟があり、中央に関連の店舗が並び、食堂もここに数軒ある。見たところ5,6軒はあるようである。ここで困るのは「どこに入るかである」。なかに絶対的人気店があるならそれを基本とするのもいいのだが、まずはそれがない。市場で働く人たち、また仲卸で聞いても「どっこもうもうはないね。まずいわけでもないし、どの店も同じじゃ、そうじゃけんどこに入っても変わらんでよ」というあんばいとなる。そうやら徳島中央卸売市場内の飲食店はどれもやや古びて汚く、まずいわけではないが、うまくもない、というものらしい。
それで入店した『みゆき食堂』だが、うどん、ラーメンなどよりもケースに並んだおかずを選ぶ人の方が圧倒的に多い。そしてこれがまた安くてうまそうである。よくよく見ると基本的なラーメンやうどん、玉子丼などが総て400円以下なのである。だからここでカツやエビチリ、酢の物や煮物を食べてもきっと500円玉と少しという値段で済むだろう。この定食系の魅力にかなり押されながらあくまで「うどん」を押し通す。
徳島だから「うどん」を注文したら必ず「すし」もつける。この「うどんすしコンビ」というのは徳島ならではに違いない。食堂などでうどんがあってすしがないなんて考えられない。
すしは作り置きだから、注文した途端に目の前に来る。東京ではこの手のすしは先ず見ないだろう。それが関西では同じような「すし」が食堂の定番メニューとして必ず存在する。そして徳島の「すし」なのだがときに「ばらずし」とも言われるもので、シイタケ、蒲鉾もしくはちっか(竹輪)の刻んだの、錦糸卵と大正金時の煮豆が基本具材である。ここに竹の子やニンジン、絹さやなどが季節季節に参加してくる。味はやや甘めで軽い。ここに遅れてうどんが来る。
『みゆき食堂』のうどんには定番の具以外にカツオ節とワカメが加わっている。まずは汁をひとすすり。出汁の味わいはややもの足りないが徳島うどんの典型的なもの。これを味わうと「徳島に帰ったな」という感慨が湧く。そしてうどんだけども、残念ながら麺の味がまずいのである。小麦粉の風味がなくやや柔らかい。そしてそして味わうにやっぱりワカメがじゃまであるな。どうにもワカメというのは存在感が強すぎる。
これが四国にたどり着いての第一番の徳島うどんなのだけど、まあボテボテながらヒットかな。うどんはともかく、すしはいい味だったのだから。
徳島中央卸売市場 徳島県徳島市北沖州4の1の38
http://www.city.tokushima.tokushima.jp/chuo_ichiba/index.html