管理人: 2008年4月アーカイブ

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 たまごかけご飯が大好き。これはものごころついたときから好きであって、今でも思い出すのは、ボクが預けられていた(我が家は商家だったので、子守さんに預けられていた)お家で鶏小屋から卵を一個だけとってくる。そこに炊きたてのご飯があって、オバチャンがカッカカカと割り込んだ卵としょうゆをかき混ぜる。これをご飯にかけて食べるのがボクなのである。
 このたまごかけご飯のなんとうまかったことか、ボクが幼稚園に上がる前のことなのに窓ガラスを通して差し込む柔らかで黄色みを帯びた光とともに鮮明に覚えている。このウチのことも鶏を飼っていたことも、もうボク以外に知っているのは隠岐にいる友人だけだ。

 その頃のたまごかけご飯には生醤油をかけるのが関の山だったのに近年では「たまごかけ専用醤油」がたくさん出ていて、ボク自身は使わないのについつい買ってきてしまう。
 今回の「おたまはん」は1瓶150ミリリットル入りで300円弱、関西風と関東風があって、大きさからもパッケージの可愛らしさ、素朴さから両方とも買ってきてしまった。考えてみると、いかにパッケージ、瓶の容量などが重要であるか、もっと“村おこし町おこし”で製品開発している人たちも考えてみるべきだ。

 ここで改めて書くのもなんだが、ボク流の「たまごかけご飯」はボウルなどに卵を割り落とし、生醤油を入れて、軽くかき混ぜて食べる。それが最近、温かいご飯にそのまま卵を割ってのせる方が主流になってしまっているようだ。ボクにはどうにもこれがいただけない。なぜなら、ボクは白身がそんなに好きじゃない。適度に黄身と白身が混ぜるという「調理」の工程がなければ、この白身の無味なボリュームが直に不気味に感じられるのだ。またご飯と完全に卵が混ざるのも嫌いで、ご飯にたまごをかけたら、できるだけかき混ぜないようにして食べている。ちなみに我が家ではボクの方が少数派となってしまっている。

 さて、「おたまはん」関西風だが、だしの風味も控えめながら、とても卵の持ち味を生かしながら、ご飯と混ざり合ってもいい味である。関東風はやや濃厚に感じるが、こちらも上品ではないか?
 2瓶同時に開けて、関西風からなくなってしまった。姫に言わせると、絶対にこっちがいいという。とにかく「『ふるさと吉田村』おたまはん」はうまいらしい。

ふるさと吉田村 島根県雲南市吉田町吉田1047-2
http://www.y-furusatomura.co.jp/

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 柏魚市場で「場内の食堂でどこがうまいんですか」と聞くと、「どこもそんなにうまいとは言えないけどね」と幾人に聞いても味は期待薄に思える。
「最近じゃ、そこの寿司屋が人気でね。うまいらしいけど開店が遅いしね」
 なかなか「これがいい」とは出てこないなか、
「そうだ、ここから見て“二八そば”ってあるでしょ、あそこが比較的うまいかな」

 その“二八そば”というのが『幌市』だった。外見はまことに平凡だが、外にある看板がすごい。イクラ丼やら海鮮丼、天丼などの写真が派手派手しい。このような看板に辟易しているので、回りの店も見て回るが、どこも似たり寄ったりで決め手に欠ける。ここは初志貫徹で店の引き戸をあける。
 店内は思った以上に普通の食堂にみえる。中心になるのはそばと丼、そこに日替わり定食があって650円ということは市場で働く人たちも食べていそうに思った。

 この日替わり定食が、なかなかよかったのだ。中心にくるのが鶏肉の塩味のオイル焼き、つけ合わせのマカロニサラダ、キャベツのせん切り。隣に主役と見まごうカレイの煮つけがある。そしてたぶん市販の長芋の梅肉和え、青菜の漬物に、なめこのみそ汁。

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 これは言うことなしの朝ご飯である。
 カレイはどうやらカラスガレイかアブラガレイで冷凍ものを使ったのだろうけど、味付けがいい。また冷凍物としてもいい材料を使っているように思える。鶏肉は平凡でも、なかなかこれだけ満ち足りた定食は少ないように感じる。

 このような平凡であるけど、よくできた定食というのがいちばん市場飯としてはいい。これなら国産ものを使っているというアナゴの天ぷらなどもうまいに違いない。

柏市公設総合地方卸売市場
http://www.city.kashiwa.lg.jp/cityhall/sosiki/B_KEIZ/KEIZ_KOU/kashiwa_ichiba/Index.htm

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 隠岐で「こじょうゆ」というのは、要するに「もろみ」と言われるものの一種である。よくキュウリと合わせて「もろきゅう」というのがあるが、大豆や麦の粒がそのまま残った醤油と味噌の中間的なもの。日本各地に残っていて、「ひしお」「しょうゆのみ」などとも呼ばれる。
 隠岐では、これにホンダワラや野菜などを漬け込んで、金山寺みそのようにも作る。
 このような食品が今も残るのは米食との関わりからだ。白いご飯にのせて、非常に合う。昔の人なら「こじょうゆ」があれば他におかずはいらないというほどだったのだろう。
 さて、日本のどこにでも多少の違いはあるにしても、ありふれた存在の「もろみ」として海士の「こじょうゆ味噌」が他の地域のものよりも優れているとは思えない。ただし、麹と塩だけでは、塩辛く、今時の嗜好に合わないだろうと思ったものか、もち米、味醂、水飴などを加えている。これの甘味もほどほどでいい感じだ。我が家では、この味なら食卓にあってうれしい。

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 最近は、朝、ご飯を食べない家庭が増えているというのだが、このような「おかず的なもの」をもっと取り入れると、ついつい「朝、ご飯が食べたくなる」に違いない。

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こじょうゆ味噌で「湯漬け」が最高にうまい

 最後に海士(中ノ島)で売られてる、また商品開発されたものが非常に優れているのに驚く。確かにデザインなどは今時の広告代理店などのつくるタイプのもので、ある意味味わいに欠けるし、また低級に思える。でもここまで考えた商品を作り出す能力を小さな島が持っているのは驚きを感じる。
 例えば、この『こじょうゆ味噌』パッケージの素晴らしさはどうだろう。大きさが選べること、そして小分け商品であるから割高だが、非常に使いやすい入れ物で、使い終わっても、また食品を保存するのに、ま利用できる。またラベルデザインも、やや整いすぎて、島の素朴さを失ってしまっているが「品がいい」。
 他の隠岐の島々にもこのような商品開発能力があったら素晴らしいものだと、ボクなどしみじみ思う。

ふるさと海士
島風便
http://www.ama-cas.com/index.html
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/

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 島根県松江市は日本を代表する観光地だ。だからうまいもんはいっぱいありそうだけど、いざ気軽にうまいもんを食べたいと思うと、なかなか見つからない。それで松江市のお魚の供給地である松江魚市場でうまい店を聞いてみた。すると幾人ものひとが「かねやすさんところがええな」と口を揃える。「あそこは昼もやっちょるんだろうか、今電話してあげるわ」。昼もやっているというので、その日の11時半近くに店を探す。

 駅前から北、正面を見るとJFしまねのビルが見える。その道を北上すると一本目に左に入る道があり、探すこともなくすぐにみつかった。入り口は二間ほど、こぢんまりした店で入ると長いカウンターが左手に、右手に厨房がある。店の回り、店内になんの無駄な飾りも見られないのに「これは間違いなくいい店だ」と直感する。
 残念ながら普段は11時半にはやっているというのが、今回はまだ暖簾を掲げていない。それで中で待たせてもらう。厨房では忙しそうに人が動いているのがわかる。ご飯の湯気、みそ汁の香り、煮つけらしい醤油の香りが、空腹であるボクを襲撃してくる。

 何気なく正面の壁を見ていると、島根県の地ワインがいっぱい350円とあり、原料はメルロー種であるという。

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 これをいっぱい飲みながら待っていたら、サバの煮つけがバットに盛られてカウンターの裏側におかれた。これがたまらなくいい匂い。これを一皿いただき、ワイルドな甘さを感じさせるメルローワインを飲む。意外なことにサバの煮つけとメルローが合う。サバにまったく生臭さや、煮汁に濁りがないのはよほど新鮮なものを使っているせいかもしれない。

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 そして定食は刺身にする。塩焼きもサバで、もう一品、魚のアラの煮つけが加わるが、なんだか生ものが食べたくなったのだ。
 出てきたのが「はまち(ブリの若魚。当然天然である)」とイカ(種類はわからなかった)。この回りにある妻がいいのだ。過不足なく豊かな感じ。脇には切り干し大根、冷や奴に熱いみそ汁。これは理想的な昼飯である。刺身の味からしていいのだ。たぶん島根半島のどこかで揚がったに違いない「はまち」で味わいが軽い割に旨味をちゃんと感じられる。冷や奴にたっぷりのった薬味もうれしいな。

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この定食が650円というのはすごいな

 みそ汁は、さてなんだろうと言うと、さすがにすぐそこは宍道湖であって、シジミ。松江に来たらみそ汁はシジミだな。この味噌の加減も香りもいい。
 ひとつだけ残念なのはご飯が軟らかすぎること。これが昼に遅れまいとして、蒸らしが足らなかったためかも知れない。
 さて魚市場のプロたちおすすめの『かねやす』は店員さん達の接客もよかった。これは松江に行くたびに昼飯は『かねやす』に決まりかも?

かねやす食堂 島根県松江市御手船場町569-3
http://www.isurutown.com/matsue/gurume/0005/

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色を見てもらうために、酢醤油はかけていない。

 八王子市北野にある八王子総合卸売センター『土谷食品』のオイチャン、土谷袈裟治さんは、もうかなりいい年をしている割に、未だ非行少年のようないたずらっぽい笑い方をする。そして実際に非行に走るのだからジジイのくせに凄い。
『土谷食品』は夏はトコロテン、冬は主にちくわぶを作っているが、コンニャクなどもいろいろ工夫をこらして新製品作りに励む。

 そんなとき八王子総合卸売センターを歩いていたら、
「ぼうずコンニャクさん、これ見て、青海苔(あおのり ヒトエグサ)を入れてみたんだけど」

 固まったばかりのトコロテンを見せてくれる。
 これがうまそうで、ひょっとしたら売ってくれるのかな、と思ったら、
「まだダメだよ。試作品なんだから」
 なんて言うんだな。
 それでも無理矢理、パック詰めしてもらって、値段は内緒なんだけど非常に安く買ってきた。

 これが絶品と言うよりも、素晴らしい。
 我が家の子供達など「父ちゃん、これ、うますぎない」なんて聞くのだ。

 ひょっとしたこの夏の大ヒット商品が目の前で生まれたのかも知れない。
 しかしうまいね。この青海苔の香り、そして素醤油の爽やかさ。
 オイチャン、また明日買いに来るからね。

八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html

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 白いご飯にのせて食べて、これはなんだろうね? 首を傾げて、また白いご飯にのせてぱくり、またぱくり。
 まことにうまいんだけど、「普通の金山寺味噌との違いを感じさせるもの」がわからない。その正体はするめ(スルメイカを干した乾物)と昆布(こんぶ)なんだと判明したのは、二口目だ。

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 するめの渋みは、たぶん甘味を強くするアルギン酸なんかではないだろうか? 全体を包みながら、続くんだけど味わいを大人びたものにしている。
 食べながら宮崎県のそば焼酎「八重桜」を飲むと、これがまたまことにいい。

 松江と言うところは日本有数の観光地である。ところがお土産といったら和菓子かシジミの佃煮、あごちくわしかない。これからの松江の未来を考えるにもっと食のコンテンツを広げる必要性があるのだけど、これもなんか素晴らしいね。

 そんなことを思いながらパッケージを見直すと、これが最低だ。せっかく松江市の老舗醤油屋でありながら表に松江の文字がない。他県人が買って帰って、その人に対して思いやりがないと思う。
 例えば念願かなって松江に旅行に来た。それで『米田醤油店(建物が素晴らしい)』の「天然もろみみそ 海幸」を買ったのに。確かに「松江で買ったんだ」というお土産としての喜びを感じさせるものがなにものもない、これはダメだな。
 ボクだったら表に松江城のイラストをのせて、松江名物といれる。これなんか岩手県の「盛岡納豆」を見習ってほしい。たぶん地元にしか売れなくても、これくらいのオシャレ心は必要なのだ。
『米田醤油店』さん、地味な商品だって旅人が買うということを考えて頂きたいね。

米田醤油店 島根県松江市東本町3の58

 深夜に帰宅して、それなのに市場魚貝類図鑑の改訂まですると、翌朝は胃の腑がひっくり返ったようになる。
 それが解消されるのが9時から10時くらいの間で、丁度、八王子総合卸売センターにいるというわけで、市場飯となる。
 最近の悩みは、そんなとき『さくら』で食べるか? 『市場寿司 たか』で食べるのか? 迷って迷って混迷してしまうということ。

 近年は関東周辺の市場にもよく出かけていく。そして朝ご飯を食べて帰ってくるのだけど、いまのところうまい店に出くわしたことがない。
 それなのに八王子総合卸売センターだけがうまい店、二店舗が隣り合っているなんて、ボクには迷惑極まりない。

 最近では、野菜もご飯もたっぷり食べたいと思ったら『さくら』、軽く食べたいなら『市場寿司 たか』で、となってきている。
 ともに困るのはうますぎて、ついつい大盛りにしてしまうこと。また追加の二、三かんがメタボの素かもしれない。

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『さくら』の我がまま野菜たっぷりの「野菜炒め定食」。ボクは大好きな一味唐辛子を振る

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これは持ち帰り用弁当用の中華煮込み。レバが入っているのだけど、これがまことに美味

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どこにも真似の出来ない素晴らしい、『さくら』のつけ麺。麺の太さはお好みで選べる。

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『市場寿司 たか』のぼうずコンニャクスペシャル。大好きなこはだにマグロ八の身

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ボクが疲れ果てた時に食べる、『市場寿司 たか』のカッパ巻き。たかさんはカッパ巻自体が好きじゃないという。それで食べたくなると、八王子綜合卸売協同組合『河村青果』でキュウリを買ってくる。「誰が買いに行くのかって?」。もちろんボクなのだ。

 どうやら、ボクの体重が落ちないのは、このふたつの店のせいだ。

八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html

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 京都に来て、市場というと「錦市場」がまっさきにくる。この四条通りの北にある小路は、あくまでも仲卸、小売りが中心で、「市場」というよりも食を中心とした商店街である。最近では明らかに観光地化が進みすぎて、本来の良さが失われているように思われる。
 さて、ボクにとって京都で市場というと、七条通りの北にある中央市場のことで、食に関するものを売る魅力的な店も、このあたり七条商店街に集中していると考える。

 その中央市場の仲卸さん何人かにお聞きして、「朝ご飯ならあそこにしなはれ」というのでガラリといきなり引き戸を開けたのが『権八』である。
 中央市場の建物は鉄筋の大きな建物なのだけど、その西側にウナギを焼く店があったり、練り物を売る店、また野菜の市場めいたものがあって、ごみごみしている。この中央市場寄りに『権八』はある。

 3月初旬の早朝なので、冷え込んでいる。ダウンから厚手のコートに代えたのが失敗だった。ほんの1時間ほども市場を歩く内にすっかり身体が凍えてしまっている。
 その硬直した冷たい身体が、カウンターだけの湯気もうもうとして店内でゆっくり溶けていく。
 品書きをみるとそばうどんに丼物が並ぶ。そのどれもが魅力的だが、いかんせん前日の慌ただしさに胃の方がご飯を受け付けない。関西に来たらうどん、それも「きざみ」に限ると思っているのだけど、品書きにある「きざみきつね」はいかなるものか。
 カウンターの中では無心に働く人がいて、カウンターの手前は常連さんで和気あいあい。「きざみってどんなもんですか?」と聞くと、「刻んだお揚げが入っとるんです。“甘きつね”は甘く煮たお揚げがね」ということからすると大阪と同じだ。

「きざみきつね」をお願いすると、隣からお声がかかる。この方、Tさんは荷受けの方でボクのことをご存じだったらしい。ここではお名前は伏せるが、京都ではこれから色々お世話になりそう。また料亭などの仕入れをやっている方ともお話しが出来て、店内での時間が有意義だった。

 そして目の前に「きざみきつね」。これになにげに触れようとすると、「熱いから気をつけてくださいね」と声がかかる。確かに丼の回りはおそろしく熱くて、怖々とカウンターにおろす。

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 その熱い湯気の中から山椒(さんしょう)のいい香りが立ち上る。ボクは香辛料の中でも山椒がいちばん好きなのだ。前夜来の体調不良が癒されていく。
 関東ではうどんには唐辛子、七味唐辛子しか思い浮かばないが、種によっては山椒も使う、というのが食の都・京都らしい。

 刻んだ揚げと青ネギの下のうどん汁(つゆ)は澄んで、昆布の旨味がよく出ているし、かつお節の香りもする。味はやや甘めながら、塩辛さがきりっとして、醤油の香りは抑え気味だ。残念ながらうどんはボクの嫌いな餅っとしたものだが、それが気にならないくらいに汁がうまい。
「京都のはんなり(花なり)、大阪のまったり」と表される、まさに京都らしい汁の味である。
 なんとうまい汁だろうか。急ぐ旅であるのに、ゆっくりゆっくり汁の味を堪能する。最後まで飲み尽くしても、汁のうまさは変わらなかった。青ネギ、刻んだお揚げがまたいい味である。
 非常に庶民的な店であるのに、味は一級品。関東ではまず出合うことのない本物である。

 中央市場もさることながら、『権八』に飯を食らいにくるというのも京都に立ち寄る目的のひとつになりそうだ。
 御支払をお願いすると、「もういただきました」という。この「きざみきつね」、Tさんにご馳走して頂いたようだ。まことにありがとうございました。

明日は松江魚市場、それからよしなしごとをこなして、
昼過ぎには大田。
大田漁協月森さんに「煮食い」をご馳走になり、大田泊。
翌日は境港。夜は宴会。
明後日は松江市内、松江には夕方まで
それから大阪に回り、大阪泊。
翌土曜日はまささんと大阪の市場、商店街に遊び帰ってきます。
私を見かけた方は声をかけてください。
また大阪の市場巡りは参加者募集中。

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 岡山中央卸売市場には仕事であるような、ないような、中途半端な目的でやってきた。それでお昼ご飯はというと、とにかく関連棟で済ませることに。
 仲卸で聞くところでは関連棟の飯どころではなんといっても『備前食堂』がいい。それで腹減りと二月の寒さをたっぷりの昼ご飯で癒す。

 岡山中央卸売市場は、まったく新しい青果も水産も合わさった県の中心にある大型の近代的な市場である。だから全体的に無機質なものとなっている。とくに無機質なのが関連棟であって、『備前食堂』というなんだか「そそられる」店名もここにあっては身も蓋もない。
 とにかく暖簾をくぐる。なんと目の前にいくつかの惣菜が並んでいて、これがなかなか魅力的だ。それ以上に魅力を感じるのが左手のおでん。真っ黒な汁は「関東炊き」とよばれる西日本の田舎風のもので、当然、牛すじが入っている。
 これをお好みでとっていいのだと思ったら、ついつい菜箸が皿にたくさん盛り上げてしまった。
 大振りの大根、牛すじ、焼き豆腐に卵。おいおいこれでご飯とみそ汁を加えたらたいしたボリュームではないか。となぜかついでに冷や奴も。

 この大根にかぶりついたら冷え切った身体がとたんに暖かくなってきた。おでんはかなり醤油っぽいものでまったりしている。かといって、むさぼるにそんなに重苦しくないのはどうしてだろう。
 この、おでん、ごはん、に加わるみそ汁の味がいいねー。
 これぞ腹減りの、市場の朝飯そのものだ。

 食べ終わると、まことに満足至極で豊かな気持ちになる。岡山中央卸売市場内『備前食堂』は市場飯を満喫できる飯屋である。

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